投稿者アーカイブ:岡本全勝

「絵画で読む『失われた時を求めて』 」

2022年12月14日   岡本全勝

吉川一義著「絵画で読む『失われた時を求めて』」(2022年、中公新書)を読みました。
以前、吉川一義著「『失われた時を求めて』への招待」を読みました。もっとも、『失われた時を求めて』は、まだ最初の部分しか読んでいないのですが。
「絵画で読む」を読んで、プルーストを読むには、これだけの背景を知らないといけないのかと、あらためてその難しさを感じました。19世紀末から20世紀初めのフランス上流階級では、このような西洋絵画の知識は当然だったのでしょうね。

掲載されている絵画を見て、「これやこのような絵は、展覧会で見たよな」と思い出しました。それらがやってくる展覧会も多く、日本にいながらで、西洋絵画が古典から最近のものまで見ることができます。ありがたいことです。

ツイッター買収の意味

2022年12月14日   岡本全勝

12月3日の朝日新聞オピニオン欄「ツイッター買収、その意味」、東浩紀さんの「無料モデル、公共性に限界」から。

今回のイーロン・マスク氏によるツイッター改革騒動は、私企業が運営するSNSに公共的な役割を持たせることの限界を示したものでしょう。ある意味で、SNSへの過剰な期待に冷や水を浴びせるものだと思っています。
ツイッターは本来、今どこにいて、誰と会っているかを共有するメディアとして生まれたものです。公共的な議論や合意形成に向くプラットフォームではありません。

マスク氏は思想やイデオロギーより、経営者として動いているのでしょう。前提にあるのはツイッター社の赤字です。ツイッターは私企業であって、赤字が続いている以上、マスク氏がドラスティックに変えようとするのは、ある意味でしかたがない。
今回の騒動は、本質的には、無料の広告モデルで公共性を作ろうとすることの限界が表れたのだと思います。広告収入を考えると、ヘイトだろうがカルトだろうが、閲覧数が多ければ力を持ってしまう。リベラルな理念で質の高いものを提供しますと言っても、お金は生み出されない。

ネットの言論が公共性を持つには、「有料」を導入するしかないというのが僕の持論です。本を売り、雑誌を売るように、記事や動画を売る。顧客の側にも「買う」という習慣を身につけさせる。僕は「シラス」という有料配信サービスをやっていますが、公共的な議論は有料の場でしかできないと考えたからです。
もともと公共的なメディアは雑誌も新聞も有料です。課金することと公共的であるということは両立できます。そこで重要になるのがサービスの規模です。100万人、1千万人になると、そもそも議論が成り立たない。一方で、あまりに少なすぎては公共性は持てない。1万人から10万人ぐらいが、公共的な議論に適した規模でしょう。適度にメンバーが多様で、反応も活発だけれど、炎上は起きにくい。1万から10万の規模で公共的な議論ができるコミュニティーが、いくつもある状態が健全な社会だと思います。

社会学的想像力と政治的想像力2

2022年12月13日   岡本全勝

社会学的想像力と政治的想像力」の続きです。
社会学が、人が暮らしていく際の困難を社会の側から摘発します。その困難を個人の責めに帰すのではなく、社会の側に問題があることを突き詰めます。すると、その解決はその個人や家族ではなく、社会の側を変える必要があります。ここに政治の出番があります。

すると、社会学では「社会学的想像力」が必要であるように、政治においては「政治的想像力」が必要でしょう。
それは、社会学が発見した暮らしの困難を、解決することです。
それらの問題を政治や行政の課題として取り上げること、そして誰がどのように解決するか道筋をつけることです。必要な場合は、人と金を投入しなければなりません。法律や補助金をつくっただけでは解決しない問題が多いです。すべてを取り上げることはできず、優先順位をつける必要もあります。
それらをどのように動かすか。それを政治的想像力と呼びましょう。政治的構想力と政治力とも言えます。

若者による殺人が減った

2022年12月13日   岡本全勝

12月3日の日経新聞「犯罪減っても体感治安は? 戦後最も安全 実感できぬ理由」には、若者による殺人が減ったことも書かれていました。

・・・殺人を犯す性別と年齢をみると、20代前半の男性に鋭いピークがある。「20代前半に自分の評価を高めるための個体間の強い競争が、特に男対男で生まれるから」(長谷川真理子さん)だ。世界で共通するこの傾向は「ユニバーサルカーブ」と呼ばれる。
ところが日本だけは20代前半の男性の殺人率が低下し始めた。長谷川さんはその理由を「失業率低下や終身雇用など労働環境の改善」に求め、経済情勢が悪化すれば再び増えると予想した。だが実際の殺人率は直近でも減り続けている。長谷川さんは「競争を避けるようになったことが一因」と分析する。若者の怒りは陰湿ないじめや自殺に向かってはいまいか・・・

図がついていますが、一目瞭然です。

社会学的想像力と政治的想像力

2022年12月12日   岡本全勝

「社会学的想像力」は、アメリカの社会学者C・ライト・ミルズが、同名の書で唱えた概念です。
社会学を学ぶ意味とは何か、それは日々遭遇する困難を根本的に解決するにはどうすればよいかを考えることで、そのためには日常を社会と関連づけて捉える知性が必要である。その知性が社会学的想像力であり、社会学の最大の効用であると主張します。個人の身近な生活の問題を広い文脈(社会)と結びつけて考える能力です。

「社会学、社会科学とはなんぞや」を考えていて、「実用社会学への期待」「実用の学と説明の学」に行き着きました。長谷川公一先生ありがとうございました。
それに触発されて、社会学的想像力を思い出しました。
ミルズは、この大前提を元に、さまざまな社会学、特に抽象的な体系論を批判します。私の問題関心「実用の学と説明の学」に、ぴったりの説明です。

社会の問題、暮らしていく際の困難を考える、その際に個人の暮らしから考えるという「社会学的想像力」は、わかりやすいです。人が暮らしていく際の困難を社会から考えることが社会学の役割、その際の手法が社会学的想像力とすると、その問題を解決するのが政治の役割です。続く