実用社会学への期待

連載「公共を創る」で、社会を見る際に公私二元論ではなく、官共業三元論で見ることを提唱しています。官は政治行政で二元論での公で、業は市場経済で二元論での私です。共は、狭い意味の社会であり非営利の世界です。この三つが、私たちの暮らしを支えています。

官については、政治や行政がどうあるべきか、政治学や行政学があります。業についても、経済学や公共経済学で、市場がどうあるべきか、政府はどのように介入すべきかについて大きな蓄積があります。
ところが、共(狭義の社会)については、私たちの暮らしをよくするためにどうあるべきか、政府はどのように関与すべきかを総合的に議論をしたものはないのです。少子高齢化、格差、孤独、子どもの貧困などについて、社会学は社会の問題を発見し、提起してくれます。そのような個別問題は扱うのですが、それらをまとめて議論した教科書や概説書はないのです。

社会学が、哲学のような深遠な議論をするものから、格差や孤独など身近にある具体問題を扱うものまで、様々なものを含んでいます。その全体像を系統的・分類的に示すことは難しいでしょう。私が期待するのは、社会学のうち「実用の学」と思われるものを集めて、分類し、それらを全体的に議論することです。
政治学、経済学(の一部)が「実用の学」であると同様に、社会学にもそれを期待したいのです。「公共社会学」という学問分野の考え方もあるようです。それが発展することを期待します。