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子会社の整理

日経新聞私の履歴書、磯崎功典・キリンホールディングス会長「事業の中止を提言する」の続き、第17回「子会社売却」です。

・・・当時のキリンは多くの子会社を保有していたが、いくつかはベテラン社員のポストの受け皿のような会社があった。本業とのシナジーが乏しく、先の展望が見えない事業については、当時社長だった加藤壹康さんに提案し、売却や清算を進めることになった。対象は15案件程度、限りある資源を分散させないためにも実行する必要がある。
しかし、グループ各社からの反発は激しい。ある会社では開口一番「うちは赤字じゃない」と抵抗された。ほかでも「うちの社員のことを少しでも考えているのか」「とにかく今日は帰ってくれ」といった声が上がる。目に涙をためて訴える社長もいた。
子会社社長の胸の内を考えれば無理もない。それぞれが経営努力をしていたのは確かだが、持続的成長を目指すキリングループにとって、痛みの伴う構造改革は避けられない・・・

・・・これらの会社を1社ずつ訪問し、社長らに直接ひざ詰めで事業継続は難しいと説明して回った。当然、反発は大きかった。「お前さすがに、やり過ぎだぞ」。あちこちで摩擦が起きたことから、子会社を担当する役員達も私を責め始めた。多くの会社がベテラン社員らのポストという事情も理解しろという。

熟考の末、納得してもらうには、最初にホテル事業を売却するしかない。
1999年から2001年にかけて総支配人を務めた兵庫県尼崎市のホテル事業は、自分の分身のような存在だ。力を合わせて黒字化を達成させた従業員みんなの思いがつまっている。だが事業としてみれば1カ所だけホテルがあっても今後の発展はのぞめない。それならば、一番ふさわしいオーナーの下で運営されたほうが、社員の今後の生活にもプラスになるはずだ・・・
・・・自ら育てた事業を自らの手で売却したことが各社の社長に伝わり、ようやく彼らも納得してくれたのだろう、最終的に全て売却・清算できた・・・

英語が日本共通語に?

日本語の表記3」「大学での英語の授業」の続きになります。
私の妄想ですが。あと100年も経たずに、英語が日本語に取って代わり国語となり、現在話している日本語は古語になるのではないでしょうか。「日本語の表記2」「日本語の表記3」で、日本語に英語がたくさん輸入されている。それは、1500年前に漢字を導入したように、今度は英語に切り替えつつあると書きました。

インターネットの普及で、英語の文章や会話に、簡単に触れることができるようになりました。大学などで英語の授業に苦労するより、早い段階で英語を身につけようとする人が増えるでしょう。小学校から英語を教えるようになりましたし。
理科系の大学院生は英語で論文を書いて、インターネットで発信しているでしょう。海外との取引、国際的に活躍する企業人も英語が必須です。そして、英語は世界共通語になりました。リンガ・フランカです。英語を母語としない国の人も、英語を学ぶでしょう。すると、お互いに英語で会話することになります。日中、日仏などの通訳が不要になります。

日本語を母語として英語も話せることが理想ですが、人間の脳はそんなに器用にはできていません。2世代から3世代あれば、言葉は切り替わると予想します。
私は、言葉は簡単に変わらないと考えていたのですが、考えを変えました。その理由は、次回に。

若手社員、電話が怖い

5月12日の朝日新聞夕刊に「若手社員、電話が怖い SNS世代、退職するケースも」が載っていました。

・・・電話が嫌で嫌でしょうがない――。電話がプレッシャーで、若手社員の退職につながるケースもあるという。企業は電話の代行や研修を進めるほど。苦手な理由を本人たちや専門家に聞くと、SNS世代ならではの「責任感」が浮かび上がった。

「電話応対が嫌で辞める若手社員が増えて、困っている」。企業向けの電話応対研修を行っている「ドゥファイン」(東京都)には、そんな相談が相次ぐ。
同社は年間100社以上に固定電話の使い方や話し方の研修をする。「固定電話を初めて触った」と話す若手社員も珍しくない。
この春から都内で働き始めた公務員の女性(27)は「仕事でも、できることなら電話に出たくない」。自分が話せなくて沈黙が生まれることを恐れる。コンサルティング会社に勤めて4年目の女性(26)も「その場での判断が求められるため、取り返しのつかないことを言わないように、というプレッシャーがある」と話す。

「電話恐怖症」の著書があるカウンセラーの大野萌子さんは10年前、新入社員から「電話が嫌で会社を辞めたい」との相談を初めて受けて驚いた。その後、同様の声が年々増えているという。
若い世代は「言葉の責任感が強まっていると感じる」と大野さん。「思いもよらない一言がネット上で『炎上』する社会。普段の会話でも『これを言ってもいいのかな』と異常に気を使う傾向があります」。誰からの着信なのか、用件は何か、相手はどんな表情か――。電話は「分からない」要素が多く、「事前の情報がないことに対して怖がる人が多い」と大野さんは説明する・・・

10年ほど前に、大手企業の人事部長に聞いたことがあります。大卒新入社員を、研修所で1か月近く研修するのだそうです。「専門の法律などを教えるのですか」と聞いたところ、「何を言っているのですか。挨拶の仕方と電話の取り方、パソコンのキーボードの打ち方です」と笑われました。
学生時代には、きちんとした挨拶をしたことがない。家でも、そのような機会はない。
固定電話を、ほかの人の前で取ったことがない。漫画サザエさんで、カツオ君が廊下の黒電話を取るのは、昭和の風景です。
スマートフォンを使っているので、キーボードは使っていないのです。

日本語の表記3

日本語の表記2」の続きです。
「1500年前に漢語を取り入れ、現在は英語を取り入れている」と説明しました。
今は英語を取り入れる際に、カタカナに変えて取り入れるのが主ですが、アルファベットのままで取り入れることも進んでいます。そして、新しい言葉だけでなく、日本語にある(漢字やひらがなにある)言葉も、英語に置き換えることが進んでいます。例えば、フォローする、クリアする、サポートするなどです。

これが進むと、「フォロー」「クリア」「サポート」は、アルファベットで、follow、clear、support と書かれるようになるでしょう。
キーボードで入力する作業を考えてください。ローマ字変換では、foro-、kuria、sapo-toと入れます。私は時々英文を入力する際に、困ってしまいます。ローマ字変換になじんでいるので、英語の綴りがすぐに出てこないのです。二カ国語に通じれば、英語もすぐに出てくるのでしょうが、多くの人はその域まで達しません。
それなら、最初から英語(アルファベット)で、日本文に入れた方が簡単です。若い人は、順次それになじむのでしょう。「日本語を大切に
1350年ほど前には、それまで「おおきみ」と呼んでいたものを、「天皇」と文字も発音も変えた経験があるのですから。

その次には、英語の発音も取り入れると思います。古代の日本語には、らりるれろで始まる単語がなかったとのことです。辞典に出てくる語は、漢語か欧米から取り入れたものです、ラジオ、ルリカケスとか。しりとり遊びの際に困るのですよね。中国から伝わった「馬(マ)」「梅(メイ)」も発音できず、ウマ、ウメと発音しました。
いずれRとLの違いやthの発音も、日本語に取り入れられるのでしょうか。
すると残る英語との違いは、文法になります。

なお、国語の表記を入れ替えた例には、韓国(漢字を廃止してハングルに)、トルコ(オスマン帝国を滅ぼし、アラビア文字を使ったオスマン語からアルファベットを主体としたトルコ語に)があります。

「減酒」の勧め

5月11日の読売新聞「あすへの考」は、吉本尚・筑波大准教授の「飲んでもいい…「減酒」の勧め」でした。心当たりのある方は、本文をお読みください。

・・・お酒との付き合い方を見直す動きが世界的に広がっている。長らく「百薬の長」とされてきたが、少量でも健康を損なう恐れがあるとの研究結果も出始めている。
日本でも若者を中心にアルコール離れが進む。ただ、生活習慣病のリスクを高めるほどの量のお酒を飲む人の割合は、あまり減っておらず、特に女性では増えている。長年親しんできたお酒との関係を断つのは簡単ではないようだ。
そんな人にお勧めなのが、「断酒」ではなく「減酒」。精神科以外で日本初の「アルコール低減外来」を開設し、昨年、厚生労働省の飲酒に関する初のガイドライン(指針)策定にも携わった筑波大准教授の吉本尚さんは、「楽しく飲み続けるために今日からできることはたくさんある」と訴える・・・

・・・専門は、幅広い病気やけがを診て必要に応じて専門科へとつなぐ「総合診療」です。アルコールの問題に関心を持ったきっかけは、東日本大震災でした。
学会の活動の一環で被災地で役立つ海外の文献の翻訳プロジェクトを始め、世界保健機関(WHO)のアルコール対策マニュアルなどを読み込みました。目に留まったのが、「(診療科を問わず)医療機関の外来を訪れる人の1~2割がアルコールを飲み過ぎで、支援が必要だ」との記述でした。そういう患者がいることは実感していました。でも、100人に1人くらいだろうと考えていたので、事態の深刻さに驚きました。

文献はまた、あらゆる患者の健康問題と向き合う我々のような総合診療医こそが、アルコール対策の最前線にいると指摘していました。アルコール依存症のケアは精神科の領域だと思っていましたが、我々が日常的に診ている高血圧やけがなどの背後に、お酒の問題が潜んでいるかもしれないと気づかされました。
WHOのマニュアルを追認するように、2018年、精神科医らでつくるアルコール依存症関連の診断・治療指針が改訂されました。依存症の初期や軽度症状には、総合診療医などによる対応が有用だと明記されたのです。これに背中を押され、19年、アルコール低減外来を開設しました。

依存症治療は、全くお酒を飲まない「断酒」が主流です。一方、我々は、お酒の量を減らす「減酒」を勧めています。飲み過ぎによる諸問題を解決するための外来であり、飲酒自体を否定しているわけではないのです。「依存症と言われたくない」「断酒させられたくない」と考える患者の受診への心理的なハードルを下げる狙いもあります。
診察は、基本的にカウンセリング形式で行います。
「日頃、どんなふうに飲んでいますか?」「どんな時に飲み過ぎてしまうの?」。飲酒習慣について雑談する中で、患者が自身の飲み方について考え、改めるきっかけを作っていきます。中でも、患者にお酒を飲む理由を自覚してもらうことが、お酒を減らす一歩になると考えています。

多量飲酒には、四つの引き金があるといわれています。「Hungry(空腹)」「Angry(怒り)」「Lonely(孤独)」「Tired(疲労)」で、それぞれの頭文字をとって「HALT」と呼ばれます。いずれも「ストレス」を感じている状態で、こうしたストレスを軽減するためにお酒を飲むわけです。
でも、ストレスが根本的に解決するわけではありません。お酒を飲んだ晩はすっきりしても、朝目覚めたら、ストレスの原因が解決していない現実に気がつき、がくぜんとした経験はないでしょうか。前夜との落差があるぶん、精神的にもきついはずです。患者にそのことを指摘すると、はっとした表情を浮かべる人もいます・・・