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政府の方針決定

20日に、政府の地方分権改革推進本部が開かれ、「地方分権改革推進要綱(第1次)」が決定されました。各紙が夕刊で伝えています。例えば、日経新聞は次のように書いています。・・同勧告は農地転用の許可権限や国道管理などの地方への移譲を求めたが、要綱は具体論には踏み込まなかった。最終的な分権計画策定へ向け、政府内の調整が難航するのは必至だ・・。
また、丹羽宇一郎地方分権改革推進委員会委員長がコメントを出しておられます。・・特に、第一次地方分権改革の時には進まなかった直轄公共事業の地方への移管や、市町村への権限移譲について要綱に明記されたことは、評価したい。・・また、今後「検討を行う」事項については、要綱にあるとおり、是非とも勧告の内容を踏まえた結論となるよう、各閣僚の御尽力をお願いしたい。委員会では、今後も審議を進め、8月初めにも国の出先機関の見直しについて中間報告を行い、年内には、法制的な仕組みの見直しなども含めて第2次勧告を行う予定である。

2008.06.19

19日の朝日新聞社説は、「地方分権要綱、首相の踏ん張りどころだ」でした。
・・地方分権改革への各省庁の抵抗が、自民党の族議員を巻き込んで激しくなっている。 丹羽氏の分権委と省庁側の意見が対立していた項目を見ると、原案は軒並み勧告から後退している。これに大きな役割を果たしたのが、本来は分権推進のために設けられたはずの自民党地方分権改革推進特命委員会である。
・・こうした議員の主張は、分権委での官僚の言い分と全く同じである。官僚と族議員が結託して権限を守ろうとしている構図が明らかだった。住民から遠い霞が関の役所が、縦割りのまま全国一律の政策を行っているのが現状だ。それよりも自治体に権限と財源を持たせた方が、地域の実情にあった行政を効率的に進められる。 弊害が現実のものになれば、知事や市長らは選挙で責任を問われるし、住民監査請求の制度もある。霞が関や出先機関の官僚と違い、住民が直接「ノー」を突きつけることができる。 首相にやる気があるのなら、霞が関が出してきた原案を突き返し、勧告通りの表現に直すべきだ。それが政権の改革への意志を示すことになる・・

2008.06.19

産経新聞は、18日から連載「分権の壁、第2部中央の抵抗」を始めました。第1回目は、「農水相、手放さぬ権限」でした。・・地方への影響力を温存するため、既得権限を手放したがらない農水省は組織を挙げて”抵抗”を強めていた・・(6月18日)
産経新聞連載「分権の壁、第2部中央の抵抗」、19日は、「消えぬ国管理神話」でした。・・丹羽(分権改革委員長)は、「役人たちは他の世界から完全に隔離された異星人」と舌鋒鋭く官僚批判を繰り広げている。・・丹羽は16日の講演で、「1次勧告は岩盤の厚い入り口に手を突っ込んでドアを開けた。これで終わりなんてとんでもない」と語った。

メンバーの能力と組織の能力

19日の日経新聞経済教室は平野雅章教授の「企業の人的投資、組織の能力が成果を左右」でした。教授の主張は原文を読んでいただくとして、私が納得したのは、次のような部分です。
「組織の優秀性は、組織メンバーの能力とは別物である。何となれば、メンバーが入れ替わっても、組織の能力は変わらないから。組織の能力は、メンバーの資質と組織の優秀さによる。」
この主張には、目から鱗が落ちるですね。いくら優秀な職員をそろえても、あるいは育てても、組織の能力が変わらないことは、多くの管理者が経験済みです。
私の研究フィールドでは、官僚機構の問題が、一部これに該当します。優秀な職員をそろえながら、官僚機構のアウトプットは上がらない。それは、組織に問題があるのです。
民間でも、過去に効果的だった仕組みと人が、新しい環境では機能不全になることがあります。しかし、過去の伝統で育った管理職は、それを変えようとしません。メンバーも、時代遅れの組織原理に染まっています。ここに、メンバーと組織の伝統・エトスは同調します。
このページで書いた「組織のガバナンス」「民間ベストプラクティス」などが、改革への道しるべだと、私は考えています。これについては、別途、議論をまとめようと考えています。