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地方議員の報酬

20日の朝日新聞は、福島県矢祭町の町議会が、議員報酬を月額制から日当制に変える方針であることを伝えています。記事に「欧米では日当制やボランティア制を採り入れている議会もあるが・・」とありますが、私の知る限り、月額制の方が少ないです(拙著「新地方自治入門」p338)。
議員活動に支障があるとの意見もありますが、ヨーロッパの市町村のように、昼間に議会を開かず、夕方から開けばいいのです。もちろん、議員にどれだけの報酬を払うべきか、その報酬を負担する住民に、民意を問えばいいことです。(12月20日)
イギリスの市の場合は2002年欧州探検記に、ドイツの町は欧州探検記その2に、フランスの村は欧州探検記その3に、イタリアの市は欧州探検記その4に載せてあります。

国の出先機関移管・知事会試案

全国知事会が、19日に「国の地方支分部局の見直し案」を議論しました。そこに試算が出されています。それによると、検討対象の地方支分部局の国家公務員95,901人のうち、地方に移譲すべき業務に係る職員数は、最大で約75,000人です。また、廃止すべき業務に係る職員数は、約1,000人としています。国に残るのは、約20,000人です。地方に移譲すべき業務に係る職員数は、二重行政の解消や組織等の見直しなど大幅な合理化を行うと、必要な職員数は約55,000人と見込まれます。すなわち、約20,000人もの削減ができるのです。
新聞記事によると、各省が抵抗するので進まないだろうとの、予測もあります。削減対象になった者に意見を聞けば、反対するに決まっています。まな板の上の鯉に包丁を持たせても、自分では切ることはできません。それを決定するのは、料理人である政治の仕事です。

政策の検証

17日の日経新聞「核心」西岡幸一コラムニストの「トップは20年後もつくる」は、今年亡くなられたNEC元社長と日立製作所元社長の功績と責任についてでした。本論も興味深かったのですが、次のようなくだりにも目がいきました。
・・1980年代から90年代の日本の電子産業絶頂期を築いた経営者・・
そのピークは半導体で米国を抜いて世界一に立った1987年、ちょうど20年前だ。当時の業界の自信を示す格好の材料がある。産業構造審議会が87年に発表した「2000年の情報産業ビジョン」だ。電子、通信、情報サービスを合わせた情報産業の生産額は2000年に140兆円、国内総生産(GDP)の20%を占め、電子産業だけで110兆円になるとした。電子産業は現在でも20数兆円にすぎない・・
私が関心を持ったのは、外れたかどうかよりも、外れたことの検証を行政が行ったかどうかです。官僚は新しいプランを打ち出すことは好きです。でも、それが5年後、10年後にどうなったかを検証しないのです。当事者は2年で異動。政策は引き継がれるより、新しいことを打ち出すと評価されるという風土があります。もちろん、この記事にあるのは民間活動の予測ですから、政策そのものではありません。しかし、この審議会は省庁の一組織です。

教育格差と情報開示

17日の日経新聞教育面は、志水宏吉阪大教授の「学力テスト結果公表、地域内の差こそ問題」でした。
43年ぶりに行われた、全国一斉学力テストの結果です。それによると、家庭学習時間の増加や、朝ご飯を食べる子供の比率が増加していること。都道府県格差が報道されているけれども、40年前に比べ、地域間格差は驚くほど縮小しているのだそうです。
問題は、給食費など就学援助を受けている生徒が多い学校は、学力が低いことだと、教授は指摘しています。校区の経済状況が、子供の学力に大きな影響を及ぼしているということです。一般的に家庭の経済状況が子供の学習態度や学力に影響するでしょうから、これはいわば当たり前のことかも知れません。もちろん、貧しくても勉強ができる子もいます。OECD各国の中では、日本は親の地位と子供の成績が比例する度合いが少ない国だそうです(朝日新聞12月19日経済気象台「勉強しない経済大国」)。
また、教授は、今後の方向を二つ並べておられます。一つは、テストの結果を広く公表することで競争状態を作り出し、学校の自助・経営努力のもとで、子供たちの学力を高めていこうとするもの。もう一つは、「現場の力」を信頼し、テストの結果は内部資料として使うものです。そして後者を薦めておられます。私は、前者を取ります。
教師だけでなく、保護者・地域住民・行政関係者が情報を共有し、課題に取り組む必要があること。情報を一部の関係者だけで秘匿するのは、情報公開の流れに沿っていません。みんなが課題を認識することで、予算や人員を投入し、対策を打つことができるのです。情報を隠して「予算を欲しい」と言っても、周りの人は納得しません。
次に、競争のないところに、向上と改善は望めません。学校関係者に努力を促す意味で、競争は必要なのです。ここでの競争は、生徒の競争でなく、教員の競争なのです。また、「学力テスト結果は一人歩きを始める」と指摘しておられます。私もそれを否定しませんが、それを恐れていては、次の行動を取ることができません。大学入試・高校入試において、学力の序列化は公然と行われています。

人生前半投資

18日の日経新聞経済教室は、守島基博教授の「格差是正に向けた経済政策、人的資本形成重視を」でした。
経済成長と公平を実現するために、人的資本形成を重要視しておられます。それは、個人の持っている知識や技術だけでなく、意欲、コミュニケーション能力、忍耐力をも含めたものです。そのために、人生の早い時期から形成すべきであることを主張しておられます。就学前から能力開発をしようというのです。問題発生後に「給付」するより、人生前半期に投資しようということです。
遅くなりましたが、18日の2008年度地方財政対策の概要、24日の2008年度国の予算案の、ホームページを紹介しておきます。便利になったものです。(12月25日)