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負担と受益の将来推計

17日に諮問会議に出された「給付と負担の選択肢」について、いくつか問い合わせや意見がありました。その意義や「増税誘導ではないか」といったものです(もっとも、私はこの件について、直接の担当ではありません)。
常々言っていますが、経済財政諮問会議で、歳入と歳出が一体的に議論できるようになりました。これまでは、国税(政府税調、党税調)と歳出予算(各部会)は、別々に議論されたのです。足らない分は、国債に頼りました。さらに、歳入であっても、国税(財務省)と社会保障負担(厚労省)は、別に議論されました。それらが、一体的に議論できるようになったのです。
また、これまでは、当年度の財政収支と翌年の収支見通しは、明示されましたが、将来推計は十分にはなされませんでした。例えば、制度が変更ないとしてといった条件での、粗い推計でした。今回の試算は、経済成長率を場合分けし、歳出削減額や社会保障の伸びを場合分けして、試算してあります。そして、借金残高が発散しないようにするためには、どの程度の増税が必要かを示したのです。
ある記者曰く、「このような試算を出すのが、遅すぎるくらいですね」。
そうですね、高度経済成長期、安定成長期に、増税をしなくて済んだ成功体験の「負の遺産」でしょう。高齢化率が世界一、社会保障も成熟し、公共事業は西欧先進諸国より大きく、それでいて消費税はかの国が20%近いときに、日本だけが5%なんて、魔法使いでない限りできませんよ。それを、子々孫々に借金として残しているのです。「新地方自治入門」p113以下とp299をご覧ください。
私は、この世代間の不公平は、とんでもない罪だと考えています。将来、子や孫たちは、私たち世代をどう評価するでしょうか。私たちの1世代前は、経済大国を残してくれました。2世代前は、戦争で世界各国特にアジアの国々に、日本の悪評という負の遺産を残しました。

負担と受益の将来推計

今日17日の経済財政諮問会議は、「社会保障制度と財源のあり方(社会保障と税)について」でした。民間議員から、給付と負担の選択肢」についての試算が示されています。
試算Ⅰ(p2)は、2011年度に向けた試算です。①14.3兆円の歳出削減を行ったケース、 ②11.4兆円の歳出削減を行ったケース、③は①に比べ、2008年度から2011年度にかけて毎年度1兆円の歳出を積み増すとしたケースの、3つです。
新成長経済移行シナリオ(名目成長率3.0%、実質成長率2.4%)の場合、③では増税必要額は3.2兆円です。成長制約シナリオ(名目成長率2.2%、実質成長率1.6%)の場合は、増税必要額 6.6兆円です。
試算Ⅱ(p6)は、中長期の社会保障の選択肢です。2011年から2025年までを、試算してあります。
給付維持・負担上昇ケース(一人当たり給付を維持する場合、国民の負担はどの程度増えるのか)と、給付削減・負担維持ケース(一人当たり負担を維持する場合、給付をどの程度削減する必要があるのか)です。
成長ケース(名目3.2%、実質1.7%成長)と、制約ケース(名目2.1%、実質0.9%成長)の2通りで試算してあります。
給付維持の場合は、税と保険料をあわせた国民の負担は11~12兆円程度増加。債務残高の名目GDPに対する比率を上昇させないために、合計で14~29兆円程度の増税が必要です。
給付削減の場合は、給付を3割程度削減することが必要。債務残高の名目GDPに対する比率を上昇させないために、合計で8~24兆円程度の増税が必要です。
18日以降の新聞で詳しく解説されるでしょうから、お読みください。

秋の一日

今日は、たまっている副業準備を放棄して、美術館巡りに。東京国立博物館では大徳川展、東京都美術館ではフィラデルフィア美術館展、さらに三井記念美術館で安宅コレクションを。
前2者は、混雑で人の頭を見に行ったようなものでした。武具と嫁入り道具で徳川将軍を理解するには、無理がありますね。アメリカの美術館にヨーロッパ絵画を見に行くことも、優品がそろってはいるのですが、何か変な気がします。私は、印象派までしか、わからないし。
安宅コレクションは、大阪市立東洋陶磁美術館で見て以来、久しぶりです。何度見ても、素晴らしいですね。今回は、それぞれの解説のほかに、それを安宅さんが手に入れたときのいきさつや様子が添えられています。透明のフィルムで、ガラスケースの上部にさりげなく貼られているので、最初は気がつきませんでした。それがなかなか、読み応えがあります。数百年の歴史を越えた壊れやすい陶磁器と、人間くささの対比を楽しんできました。

マスコミの力

12日の朝日新聞は、新聞週間特集で、新聞記者が取材で暴いた事件を取り上げています。一つは、朝日新聞北海道支社による、偽牛ミンチ(ミートホープ)事件です。疑惑のコロッケを買って、検査機関に持ち込んで肉の種類の鑑定までしています。「報道で批判して逆に訴えられると、数十億円単位の請求額になる」という心配を抱えてです。
もう一つは、北日本新聞(富山県)による、高校での世界史必修科目履修漏れです。もう一つは、各紙が追いかけた政治家とカネの問題です。
それぞれ、地道な取材と独自の調査で、素晴らしい結果を挙げています。各省の発表や誘導による「大本営記事」でなく、このような記事を書いて欲しいですね。
先日、ある紙が、年度末に租税特別措置の延長法律が通らないと、軽減税率がなくなって、ものの値段が上がる場合があることを、例を挙げて書いていました。それは正しいのですが、一方で、超過税率がなくなって、値段が下がるものもあるのです。なぜか、そちらの方は書いてありませんでした。

2007.10.13

今日は、第3回目の授業。順調に進み、そして例によって少し遅れています。最初は地方自治の仕組みの解説なので、学生にとっては、あまりおもしろくないところもあります。なるべく実例を入れて、身近に感じてもらえるように、そして理解してもらえるように、工夫しています。
各回の出席者数は、50人足らずで安定してきたようです。毎回入れ替わり何人かの欠席者もいるので、資料は60人分が必要です。