投稿者アーカイブ:岡本全勝

日経新聞夕刊コラム第15回

2018年4月12日   岡本全勝

日経新聞夕刊コラム第15回「新聞の読み方」が載りました。今回は、私の「副業」(本業以外の仕事という意味です)である、大学での講義です。あわせて新聞の読み方と、2つのことを盛り込みました。

大学での講義は、結構な負担です。知っていることと、それを話すこと、さらにそれを理解してもらうことは、違います。しかし、自分の考えを整理する良い機会です。
学生たちに通じているか。毎回それを探りながら、話をしています。うまく伝わっている時は、うれしいし、話が進みます。通じていない場合は、学生が悪いのではなく、話している私の技術が悪いのだと、反省しています。大学院生や専門家が相手なら、どんどん難しい話ができるのですが。

ここに書いた新聞の読み方は、私流です。人それぞれの流儀があるでしょう。
でも、毎朝にその日のニュースの一覧を見ること、解説などはじっくりと読むこと。これらを両立させるためには、ここに書いた「全勝流」が効率的だと考えています。
文中に使った日経新聞の読者データは、「わかる!日経」p14左下です(私の文章では四捨五入してあります)。

NPO、公共を担う思想の広がり

2018年4月12日   岡本全勝

4月5日の朝日新聞オピニオン欄、「NPO埋もれていない?」、橋本努・北海道大学教授の発言「「公共を担う」、育った20年」から。
・・・NPOの活用や「新しい公共」など、政府機能を中間集団に担ってもらう発想は、1970年代の「新保守主義」から生まれたといえます。
米国の新保守主義、つまり「ネオコン」は、自国第一主義の外交政策というイメージです。しかし国内政策では、自発的に公の役割を担う精神や道徳性を強調し、ナショナリズムと結びつけて、NPOの活動を後押ししました。
英国では、79年に誕生したサッチャー政権がNPOを推進します。新自由主義と言われますが、「ビクトリア朝の美徳の再興」を訴え、人々の道徳や公共心を動員できると考えた点では、新保守主義的でした。
NPOの活用は、政府の財政危機を救うために人々の公共心を導入するという保守派も、政府に任せず市民が自発的に公共を担うべきだという急進的な左派も、賛成できた。だから広まりました。
活用の仕方は、アウトソーシング型と社会的起業型に大きく分けられます。アウトソーシング型は、政府機能を低コストで委託します。体育館運営などが典型で、新自由主義や「小さな国家」と親和性が高いです・・・

村上信一郎著『ベルルスコーニの時代』

2018年4月11日   岡本全勝

村上信一郎著『ベルルスコーニの時代 崩れゆくイタリア政治』(2018年、岩波新書)を読みました。政治、特に西欧民主主義の現在に関心のある方には、お勧めです。
面白いと言ってはお叱りを受けますが、イタリア政治の実態がよくわかります。そしてそれを通して、政治が制度や理論では動いていないことが、よくわかります。複雑怪奇なイタリアの戦後政治を、著者は切れ味良く整理して見せてくれます。
ベルルスコーニの時代と銘打っていますが、それとともにイタリア政治の実情と大変化が主題です。

イタリアは、キリスト教民主党が戦後長く政権にあり、しかし内閣は短命で交代を繰り返していました。また、共産党が大きな勢力を持っていました。それが、1990年代初めに両党がなくなるという、大変化が起きたのです。
私も新聞報道を読んでいましたが、この本を読んで、その背景と過程がよくわかりました。一つは、東西冷戦の終結です。
しかしもっと大きいのは、イタリアの政治と経済を仕切っていたマフィアと秘密結社への戦いが進んだことです。この二つの裏の力には、改めて驚きます。検察と裁判(イタリアでは検察は内閣の下ではなく、この二つが同じ組織に属します)が、暗殺による多数の被害者を出しつつも、切り込みに成功するのです。
戦後長く続いた第一次共和制は、制度と主たる担い手とともに終わるのですが、第二次共和制への移行は混乱を極めます。
この項続く。