投稿者アーカイブ:岡本全勝

第一原発視察

2019年2月5日   岡本全勝

きょう2月5日は、初めて第一原発を見るという職員を引率して、第一原発に行ってきました。昨日は沿岸部は風が強く、常磐線が運休したようです。きょうは、天気に恵まれました。

まずは、廃炉資料館で説明を受けました。私は開館直後の12月に、行ったことがあります。その際に、「ここに来なくてもわかるように、ホームページを充実してください」とお願いしました。
早速、島津館長が「2月1日に充実しましたよ」と、報告してくださいました。「施設紹介」です。ご覧ください。欲を言えば、館で見ることのできる映像、画像の一部をインターネットで見ることができると、うれしいのですが。特に、導入部である2階の[4]シアターホールの映像は、見る価値があります。

第一原発は、どんどん「普通の作業現場」になっています。マスクをしたり、手袋や靴カバーをしなくてすむのです。かつての「装備」とあの緊張感を思うと、いささか拍子抜けです。その方が良いのですが。作業員の方も、仕事がしやすくなったと思います。

帰りに、楢葉町の「笑みふるタウン」に寄ったところ、スーパーは大繁盛していました。お刺身がたくさん並んでいました。
向かいにある交流館では、「合同就職面接会」が開かれていました。担当者に聞くと、今回はシニアの方を中心に募集しているとのこと。結構、来場者がいるようでした。
地域では、帰還が進んでいるのですが、まだまだで、人手不足です。パートタイムでも、時給1300円です。
このような企画も、経済産業省がお金を出し、地元自治体やハローワークと協力して、民間団体に実施をお願いしています。ありがとうございます。

公務員の専門性向上策

2019年2月4日   岡本全勝

2月1日の日経新聞経済教室、藤田由紀子・学習院大学教授の「公務員制度改革の視点 専門性向上へ評価明確に」は、公務員の能力や専門性について、イギリスの経験を引きながら論じておられます。

・・・日本の国家公務員制度にはこうした専門性を基軸とする府省横断的ネットワークはほぼ皆無だ。人事管理は府省ごとに行われ、帰属する府省への忠誠心の強さがセクショナリズムの一因と指摘される。

人材育成の基本は、新卒で一括採用した者を業務を通じた職場内訓練(OJT)で育成し、数年ごとの異動であらゆる分野・業務に対応できるゼネラリストにすることだ。また「大部屋主義」と呼ばれる集団的執務体制の伝統により、職務記述書が作成される慣行もないため、各職員の職務や責任が曖昧で、その専門性も「暗黙知」とされてきた。
現行の人事評価制度での能力評価も、倫理、構想、判断、説明・調整など、公務員としての一般的能力を示す項目を中心に構成される。今日の行政課題に対応しうる具体的な専門性を問うものではない。

さらに日本の公務員制度は一括採用や内部者の定期異動などでポストが補充され、個人のキャリア形成が人事部門の決定に委ねられる面が大きい。この点も専門性への関心の薄さに影響を与えている・・・

制度不信や中間団体の衰退、その2

2019年2月4日   岡本全勝

ポピュリズムの背景、制度不信や中間団体の衰退」の続きです。
1月31日の水島治郎・千葉大学教授の論考には、政治に限らず、現代社会の技術と経済の変化が、社会や私たちの思考と行動に大きな変化をもたらしていることが指摘されています。

・・・ただここで考えるべきは、中抜き現象が政治面に限らず、経済社会のほとんどの分野で進行していることだ。経済の分野では、流通業者を介さずに生産者が消費者に直接販売する取引が増えている。米エアビーアンドビーやメルカリのように運営会社が「場」を提供しつつも、売り手と買い手が直接取引するシェア経済の比重が高まっている。
メディアの世界では、新聞や雑誌、テレビといった「中」の存在感の低下は明らかで、既存メディアはむしろネット上で批判の対象となる。芸能の世界でも、事務所を通さずユーチューブやネットテレビで視聴者の熱い応援を受け、ブレイクする例も出てきた。

総じて言えるのは、人々の行動に強い影響を与えてきた「既成の権威」が衰退する一方で、個々人が「中」に頼らずに必要なものを売買・発信・視聴し、情報を入手し判断する時代に入ったということだ。いわば中抜き時代の幕開けだ。中抜き政治の台頭は、その一つの表れにすぎない。
そこには危うさもある。中抜き政治のもと、所属する団体の指示を受けず、自分が主体的に選択したはずの投票行動が、フェイクニュースに踊らされた結果ということもあろう。またアンチ・エスタブリッシュメント政党に魅力があるとすれば、往々にして既成政治を批判する歯切れの良さだけであり、政権を担当した後にこれらの政党が様々な困難に直面することも多い。

しかし旧来の中間団体に回帰すべきだという議論にも説得力がない。そもそも人々を包摂していたかつての中間団体は、多くが男性優位的・権威主義的で、年長者への服従を要求し、男女平等や個々人の自由な選択を阻んできた。平成期にこれらの団体が、自分らしさを求める若い世代に見放されたことには、十分な理由があったとみるべきだ。
時代は着実に変化している。中抜き時代の先にどんな社会が来るのか、確たることは言えない。強いて言えば、特定の団体に属して忠誠を尽くすよりも、窮屈な人間関係を離れ、一人ひとりがそれぞれ複数のアドホック(暫定的)なネットワークを作り上げ、網の目の中を動きながら人とつながり人生を豊かにしていく時代になるのではないか。そしてそれは日本人の属する最大の団体、「カイシャ」と個人の関係についても近い将来広く生じると考えている・・・
原文をお読みください。

『現代日本の公務員人事』

2019年2月3日   岡本全勝

現代日本の公務員人事-政治・行政改革は人事システムをどう変えたか』(2019年、第一法規)を紹介します。この本は、稲継裕昭・早稲田大学教授の還暦記念論文集です。先生にゆかりのある方による、共同研究の成果です。

はしがきに、次のように書かれています。
・・・戦後半世紀もの間、日本の発展を支えてきた社会経済システムは、21世紀の到来を前に深刻な制度疲労に陥り、内外の大きな情勢変化に的確に対応することが困難となった。そこで、1990年代から「明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革」というスローガンの下、様々な制度改革が連続的に行われてきた。
本書の狙いは、そのような一連の改革を経験した日本の公務員人事システムがどのように「変化」したかを多角的に捉えることである・・
そして、様々な観点からの分析が集められています。

公務員人事行政も、近年いくつも改革が行われるとともに、期待される役割、社会での位置づけなどが変化し、過去の教科書が使えなくなりました。さらに、政治主導の強化とともに、特に国家公務員がかかわる不祥事・不正が続き、制度でなく実態や運用の変化も大きくなっています。そして、その変化はさらに続くでしょう。
この本は、時宜を得たものです。ありがとうございます。

稲継先生は、公務員経験もあり、日本の公務員人事を研究してこられました。そして、行政関係の著作もたくさんあります。そのエネルギーに感心しつつ、このホームページでも紹介してきました。
これだけの研究者が集まり、還暦記念論文集を出版してもらえるのは、稲継先生の人徳ですね。

ポピュリズムの背景、制度不信や中間団体の衰退

2019年2月3日   岡本全勝

日経新聞経済教室連載「ポピュリズムに揺れる世界」が、良い分析をしています。その中から、ポピュリズムが生まれる背景、さらにはこれまでの安定した民主主義が揺らいでいる基盤の指摘が的確です。

1月30日の中山俊宏・慶応義塾大学教授の論考には「米国社会を構成してきた7つの制度に対する信頼度」が載っています。教会・宗教団体、公立学校、最高裁判所、連邦議会、新聞、労働組合、大企業の7つです。公的制度や団体です。
1980年代まで(一時を除き)45%近くあった信頼度は、その後急速に低下し、30%を切っています。

1月31日の水島治郎・千葉大学教授の論考には、日本の有権者の団体加入の変化が載っています。1989年(平成元年)と2018年(平成30年)の比較です。自治会・町内会は68%から25%に、農業団体は11%から3%に。他方で加入していないは、17%から44%に増えています。

・・・人々を束ねる中間団体が弱体化する中で、団体に属さない「無組織層」は激増した。今や有権者の半数に迫る。無組織層の増加は、無党派層の増加と裏表の関係にある。
無組織層の人々にとって、地縁や仕事絡みで団体に加入し系列の政治家・政党を支持する従来のルートはもはや縁がない。既成政党や既存の団体への不信も強い。選挙では団体の指示でなく、メディアやネットの情報を基に自分で判断する。既成政党に挑戦しようとする政治家も無組織層に直接アピールすることを狙い、既成政党や既存の団体を「既得権益」と批判する。既成の政党や団体を批判することが、無組織層にアピールするうえで効果的な戦略だ。
政党組織や中間団体などの媒体を経由しないという「中」を抜いた政治、すなわち「中抜き」政治が有力な政治のあり方となっている。中抜き政治の時代には、既成の政党や団体は20世紀型の古い政治を代表する旧来型システムの名残として批判の対象となる・・・
この項続く。