月別アーカイブ:2026年5月

コメントライナー寄稿第28回

2026年5月13日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第28回「少子化対策、産業界の責任」が5月12日に配信されました。

人口減少が進み、少子化対策は国家の大きな課題です。子どもの数が減った要因の一つは、結婚しない若者が増えたからです。意識調査では、若い人の結婚願望は昔と大きく変わらず、「結婚したいけどできない」という人も多いようです。長期不況で非正規労働者が増え、その人たちは将来の生活にも不安があり、結婚に踏み出せないのでしょう。「リストラ」「小さな政府」という主張の下、人件費を削ってきたツケが回ってきたともいえます。若い人の給与を引き上げ、身分を安定させること、そのためにも日本経済の再生が少子化対策の肝でもあるのです。

もう一つの要因は、今の日本が子育てに優しい社会ではないことです。
長時間勤務を減らすことはもちろん、子育て中の両親には柔軟な勤務時間を認める必要があるでしょう。また通勤地獄では、子どもを会社の近くの保育園に連れて行くことは困難です。住宅と勤務地が離れた長距離通勤は、共働きの子育て家庭を想定していません。子育ては専業主婦である妻に任され、父親には朝早く出勤し夜遅く帰宅することが許されていたからできたのです。

2025年10月に、経済界を中心に「未来を選択する会議」が設立されました。設立趣意には、「私たち一人ひとりが希望する『生き方』『くらし方』『働き方』を実現し、豊かに安心してくらすことができる日本社会をどうつくっていくかが大きな課題となっています。未来を選択する会議は、いま、そしてこれからを生きる世代がいきいきとくらせる日本社会の実現をめざしています」とあります。
ようやく物価、給与、株価が上昇し始め、長期不況が終わりそうです。かつて、日本の企業経営は世界一と評価されました。もう一度、世界に誇れるような職場と社会をつくってほしいものです。

世論調査の危機

2026年5月13日   岡本全勝

4月24日の日経新聞夕刊に「世論調査は本当にオワコン? 有権者の「縮図」、結果が各社違う理由」が載っていました。
・・・報道各社による世論調査が岐路を迎えている。主流の電話調査は詐欺電話への警戒などを背景に電話を受けない人も増えている。現在は調査としての有効性は確保されているが、専門家はあと数年で「限界」がくると語る。世論調査をめぐる疑問に答える・・・

詳しくは記事を読んでいただくとして。次のようなことが書かれています。
・回答率が2002年には60%あったものが、40%程度まで低下しています。
電話による詐欺事件が増加し、知らない電話番号には出ないのです。アメリカでは1割未満だそうです。
・回答者が高齢者に偏っています。固定電話の割合が高いと、若者の回答が減ります。

心の重い日、軽い日

2026年5月12日   岡本全勝

大型連休が終わり、仕事が再開されたでしょう。また、4月に採用された人や異動した人も、一月が経ちました。仕事の調子はどうですか。皆さんにも、経験があると思います。体調は良いのですが、心と体が重いと感じる日があります。5月病という言葉もあります。

現在の私は、重い仕事を抱えていないので、仕事で悩むことはなくなりました。ところが、連載原稿を抱えていてうまく進まないときや、引き受けた講演の構想がまとまらないときです。まだ締め切りまでに数日あっても、なんとなく気分が晴れません。
他方で、それらを形にできた日、右筆に原稿を送った日や、講演資料を主催者に送った日は、心も体も軽くなります。原稿も講演資料も眺めれば不十分な点があるのですが、「まあいいや」と踏ん切りをつけます。

講義や講演など人前で話すときも、話し始めるまでは、なんとなく体が重いです。どのように話せば聴衆に受けるかななどを考えるからです。しかし、一旦話し出すと夢中になり、また聴衆の反応を見るのに全力を使うので、その心配はどこかに行ってしまいます。そして講演が終わると、ヘトヘトになってしまいます。しかし、心は軽いのです。特に聴衆の反応がよかった日は、うれしくて心が軽くなります。

現役時代はどうだったんだろうと、思い返しました。出勤恐怖症になったとき(2度)が、最もしんどかったときでしょう。ところがそれ以外では、そんなにしんどいと思いませんでした。総理秘書官や大震災での被災者支援など、もっときつい仕事もしたのですが。一人で悩まない術を会得したことで、切り抜けることができるようになったのです。
そして毎日が忙しくて、しんどいとか言っておられなかったのでしょうね。悩む暇なく、次の仕事を処理しなければなりませんから。忙しいことは悩みをなくします。正確には、悩んでいる時間を与えてくれないのです。そして、どんな難しい仕事でも、期日が来ればそれなりに終わってしまいます。
一人で悩まずに、誰かに相談すると、多くの場合は切り抜けることができます。私たちの仕事とは、そんなものです。

リキッド消費

2026年5月12日   岡本全勝

4月20日の日経新聞経済教室、久保田進彦・青山学院大学教授の「若者世代の消費行動、「リキッド消費」で流動的に」から。ものや情報があふれると、このようになるのでしょうか。

・・・「リキッド消費」という言葉をご存じだろうか。現代の消費スタイルを的確に表現した新しい概念であり、2017年に英国在住の研究者らによって提示された。日本には19年に紹介され、25年には一般向け解説書「リキッド消費とは何か」も出版された。
リキッド消費は短命で、アクセスベースで、脱物質的な消費と定義される。

短命性とは物・サービス・情報・体験の価値がそのときの場面や状況に左右されやすく、長続きしない傾向を指す。その結果、消費は移り変わりやすくなり、次々と新しいものを求めやすくなる。

アクセスベースとは、物やサービスなどを所有せずとも、その価値にアクセスできればよいとする考え方である。レンタルやシェアリング、サブスクリプション型の音楽配信などをイメージすると分かりやすい。
アクセスベース型の消費には(1)所有に伴うお金・手間・心理的な負担を避けられる(2)手が届きにくい高額な製品でも気軽に利用できる(3)気分や状況に応じて様々なものを試したり使い分けたりしやすい――といったメリットがある。

脱物質とは同じ価値や機能を得るために、物質を少ししか(あるいは全く)使わないことである。例えば写真はプリントではなくスマートフォンに保存され、現金も紙幣や硬貨ではなく電子マネーとして持つことが一般的になった。物質に頼らない生活が広がることで価値観や心理も変化している。物を持つことよりも経験や体験のほうが満足や幸福につながると感じられやすく、ぜいたくな物よりも特別な体験のほうがラグジュアリーとして価値づけられる傾向がある。

3つの特徴で、現代の消費傾向の少なからぬ部分を説明できる。物事の価値がはかないものとなり、所有に意味を感じず、形あるものを必要としなくなることで、消費は流動化し、気まぐれで移り気な様相を強めていく。リキッド消費は一時的な流行ではなくデジタル化、グローバル資本主義、プラットフォーム経済といった複数要素に支えられた中長期的現象である。

筆者は前述の3つに加えて「省力化」も重要な特徴だと考えている。ここでいう省力化とは、消費に伴う時間や労力をできるだけ少なくしようとすることである。気まぐれで移り気な消費を実現するには、時間や労力のコストを下げる必要があり、そのためには手軽さが必要となる。
現代の消費は、できるだけ時間や手間をかけない方向へと進んでいる。「おすすめ」やランキング、ワンクリック購買といった仕組みは選択や判断の負担を軽減する。また取扱説明書を読まなくても直感的に使える製品は、使用時の認知負荷を軽くする。リキッド消費の実現は省力化によって下支えされている・・・

大和大学で講義

2026年5月11日   岡本全勝

5月11日は、大和大学に行って政治経済学部で講義をしてきました。大学は大阪府吹田市にありますが、奈良県の西大和学園が経営しています。総長・創設者である田野瀬良太郎・元衆議院議員のお招きです。

まだ新しい大学ですが、代表的企業の経営陣による実学講座や、政治家や元官僚による特別講義などに力を入れています。私の講義も、その一つです。
我が身を振り返って、学生時代は社会を知りませんでした。大学では、本を読んで知識を得ること、考える力をつけることだと思っていました。しかし社会人になると、それら知識だけでは不十分で、組織や社会を知らないことを痛感しました。偉人の歴史や伝記は学ぶのですが、普通の社会人の暮らしは、知りません。親が自営業なら仕事ぶりを見ることもできますが、勤め人では両親が会社で何をしているのか知らないのです。
なにより公務員も会社員も「集団作業」であり「接客業」だと知りました。勉強ができても、仕事は進まないのですよね。その経験と反省に立って書いたのが、『明るい公務員講座』です。この本を読んでおれば、私も出勤恐怖症にならずにすんだのに・・・。

それを踏まえて、私の公務員経験、特に彼ら彼女らは知らない東日本大震災対応をスライドを見せて話すとともに、社会人になるためにはどのようなことを知っていた方が良いかを話しました。
280人もの学生が、熱心に聞いてくれました。満席でした。質問時間を取ったら、次々と適確な質問が出ました。全てに答えられなかったことが、残念です。ごめん、手を挙げた学生。彼ら彼女らが、将来のことを考えるきっかけになると、うれしいです。