月別アーカイブ:2026年5月

愛着と評価

2026年5月26日   岡本全勝

変な表題ですね。「言葉は人をつなぐか、離すか」の続きにもなります。

好きな人や尊敬する人には、愛着を感じます。問題は、その人の欠点を知ったときです。
世の中に完全無欠の人はいませんから、何らかの欠点を持っています。好きになる前や尊敬する前にその欠点を知っていたなら、それを織り込んで好きになっています。しかし、それを知らずに好きになってから、欠点を知ってしまうと難しくなります。
無視して良いような欠点なら問題ないのですが、好きになったり尊敬するようになった理由に関わるものだと、葛藤が生じます。

愛着は主観的なもの、好き嫌いです。他方で、評価は客観的なものです。比較の天秤には乗らないのです。
好きでない人や尊敬しない人なら、問題は生じません。客観的に評価ができます。ところが、好きな人の場合は、「好きだったのに」「尊敬していたのに・・・がっかり」という気持ちが生じます。すると、「好き」から「そうでもない」と心が離れ、さらに「嫌い」にまで下がってしまいます。あわせて、自分がそのような人を好きだったのかと、自分に対する嫌悪感も生じます。
あなたには、そのような経験はありませんか。

コロナ特例貸付、45%が返済免除

2026年5月26日   岡本全勝

5月12日の朝日新聞に「コロナ特例貸付、45%が返済免除 計6千億円超 生活再建進まず」が載っていました。

・・・コロナ禍で収入が減少した世帯が利用した「コロナ特例貸付」で、貸し出された総額1兆4431億円の45%にあたる6540億円余が「返済免除」となったことが厚生労働省への取材でわかった。コロナ禍後の物価上昇によって、利用世帯の多くが依然として生活再建に苦しんでいるためとみられる。

コロナ特例貸付は、都道府県の社会福祉協議会が低所得世帯を主な対象として実施している「生活福祉資金貸付」の特例制度。原資は国の補助金で、コロナ禍で収入が減ったと申告した世帯が最大200万円まで借りられた。2020年3月~22年9月に計382万件の利用があった。
返済の時点で住民税が非課税だったり生活保護を受給したりしていると返済が免除される仕組みで、厚労省によると、25年末時点で返済免除は6540億円、生活が苦しい場合に返済を原則1年遅らせられる「猶予」は301億円、猶予の手続きをしていない「遅滞」は1715億円だった。
返済があったのは1323億円で、残る4552億円は返済時期が到来していないという。

全国社会福祉協議会(全社協)がまとめた報告書によると、利用世帯の月収は中央値が15万~16万円程度。コロナ禍前は6割以上の世帯が月収20万円以上だったが、借入時には9割近い世帯が20万円未満に落ち込んでいたという・・・

過疎問題にみる産業政策

2026年5月25日   岡本全勝

東日本大震災の復興に携わってわかったことの一つに、人は産業となりわいがないと暮らしていけないということです。それは、商業などのサービスの必要と、働く場の必要です。その観点から見ると、かつての過疎対策は、少し視点がずれていました。
都会並みの道路や上下水道などの整備に力を入れました。それらも必要だったのですが、働く場のない、買い物の場のない所には、人は住み続けることができません。兼業農家か、近くの働く場所に通うか、それがないと農山村では集落は維持できません。行政サービスの充実も、働く場所があり、住民が住み続けることがあってのことです。

産業構造の変化は、農山村での生活を終わらせました。では、対策はあったのでしょうか。私は、日本の国土政策(過疎過密対策)には、大まかに言って、次のような選択肢があったと思います。
1 東京一極集中(+政令指定都市が生き残る)。これは地方分散政策を行わない場合の道筋ですが、現在の状況はこれに近くなっています。
2 全国各地の集落が存在し続ける。これまでの地方振興政策はこれを目指したようですが、無理なようです。
3 1と2の中間。全国で、県庁所在都市や中核的都市を生き残らせ、そこから遠い集落はここに集約する。

過疎対策の次に取られたのが、地域活性化政策です。その走りは、一村一品運動でしょう。全国各地で、地域を活性化する取り組みです。自治省・総務省も地方制度を所管するだけではすまなくなり(住民がいなくなると自治制度自体が不要になります)、取り組むようになりました。安倍政権でも、地方創生に取り組むことになりました。
地域おこしでは、いくつかの成功事例があるのですが、全国展開にはなっていません。移住も成功している例があるのですが、残念ながら地方の人口を増やす、あるいは減少を止めるほどではありません。
1を止める、2では難しいとなると、3が選択肢だと思います。そして、その肝は産業政策です。

ひきこもり、平均37歳

2026年5月25日   岡本全勝

5月12日の日経新聞に「ひきこもり、平均36.9歳 昨年度、民間調べ 高齢家族から不安の声」が載っていました。

・・・ひきこもり状態にある本人の2025年度の平均年齢は36.9歳となり、10年間で4.2歳上昇した。家族を対象にした調査結果をNPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が公表した。家族が高齢化し、親亡き後の不安を訴える声が多いとして行政の支援強化を求めている。

25年12月~26年1月に家族278件を調べた。15年度の調査では本人の平均年齢は32.7歳だった。親ら家族の平均年齢は66.3歳で、15年度調査の62.8歳を上回った・・・

意識の鎖国

2026年5月24日   岡本全勝

日本の投資の停滞」(4月20日)で、滝澤美帆・学習院大学教授の「日本は「イースト型」の経済成長を促せ」(4月2日の日経新聞経済教室)を紹介しました。そこには、次のようなことが書かれていました。
「日本の労働生産性(時間当たり)はこの30年間、主要先進国で最低水準にとどまり続けている。深尾京司・経済産業研究所理事長の研究によれば、1人当たり国内総生産(GDP)を基準に見ると、日本が技術フロンティアから著しく乖離した局面は鎖国下で産業革命に乗り遅れた江戸時代末期、太平洋戦争前後に続いて、1990年代以降が3度目だという」

日本が海外との交流をやめて「内向き」になった時代は、平安時代(中期以降、遣唐使船の停止)、江戸時代(鎖国)、戦時中があります。内に閉じこもると、それなりに安定した社会ができますが、外からの刺激と競争がないと残されてしまいます。
「失われた30年」は、これらと並べることができるかもしれません。
鎖国をしているわけではないのですが、特に国際化が進んだ現在では、海外で戦わないと地位が低下するのです。内に閉じこもった企業だけでなく、海外への留学生や旅行客の減少など。国民が「世界一になった」と満足したことで、海外との競争を怠ったように見えます。意識の鎖国です。第2の鎖国とも言えるかもしれません。

古代の朝鮮半島や中国との交流から始まり、南蛮貿易、明治時代と、文物や思想などを輸入することで、日本は発展してきました。それを考えると、平安時代、江戸時代、戦時中に続く、第4の鎖国なのかもしれません。
もう一つは、「先進諸国に追いつく」という「この国のかたち」が機能しなくなったことも挙げられます。目標・手本とすべき国や文明が明確でないのです。佐伯啓思先生「日本の方向を決めるのは」2