6月21日の朝日新聞夕刊「取材考記」、松山紫乃記者の「法案審議 熟議せず成立、国会の役割とは」から。
・・・通常国会の最終盤を迎えるなか、マイノリティーの人権、尊厳の擁護を目的とする法整備の動きも進んでいた。性的少数者に対する理解を広めるための「LGBT理解増進法」だ。各党の主張が異なり、与党案のほか立憲民主・共産・社民党案、日本維新の会・国民民主党案の3案があった。
国会を取材するなかで、自民党中堅議員の言葉が印象的だった。「野党の意見にも向き合い、修正協議にも応じる。国会は政局ではなく、充実した審議をもっと行うべきだ」。実際、難民認定の申請中でも外国人の送還を可能にする入管難民法の改正をめぐり、与野党の実務者が修正合意を模索した。最終的にまとまらなかったが、そのプロセスからは真摯に法案審議に臨んでいるように見えた。
LGBT法は違った。各党とも自分たちの支持者を意識した言動ばかりが目立ち、法案審議は先延ばしし続けた。修正協議の指示が首相から出たのは、衆院内閣委員会の審議入り前日の8日。維新などの案を与党が丸のみする形で協議を終えた。内閣委の審議は、わずか約2時間。その日のうちに採決され、1週間後の16日には成立した・・・