元に復旧することが無駄を生む

今朝2月27日の朝日新聞社会面(1面「71億円の橋、誰のために」からの続き)「(災後の風景@石巻:上)人住まぬ地、止まらなかった事業」に、私の発言が取り上げられました。写真付きです。

石巻市大川地区は、北上川河口にあり、大震災で水没しました。巨額の国費を投入して農地や堤防、橋などを復旧しました。住民は、ほかの地区に移住しました。

・・・ 「止めたくとも、止められなかった」
この地区の復興についてそう話すのは誰あろう、岡本全勝(まさかつ)・元復興庁事務次官(68)だ。政府で復興事業の指揮をとってきた。
2012年の復興庁の発足後、岡本さんは何度も現地を訪れ、疑問を持った。「米余りの時代に大がかりに農地を戻すのは、ムダではないか。ほかの方法はないのか」。農林水産省の職員に尋ねたという。だが、農地も防潮堤も道路も、すでに復旧は走りだしていた。

災害復旧事業は壊れた公共土木施設や農業施設を確実にもとに戻すため、国が自治体に手厚い財政支援をする。災害後ただちに所管省庁の出先機関が現地で査定に入り、迅速な復旧をめざす。新規事業とは違い、「費用対効果」は問われない。復興庁が所管する復興交付金とは別制度のため、調整も難しかった。
「それぞれの役所が、いったん走り出すと止まらない。だが住む人がいなくなってしまう場所で、その仕組みでよかったのか。『部分最適』が結局『全体不最適』になってしまった」・・・

・・・ これからに向けた教訓はあるだろうか。
壊れた公共インフラを、国の負担でいち早く元通りに戻す。災害復旧制度は、長く国土のメンテナンスを担い、地域社会の安全を支えてきたと言える。
だが、人口減が始まった日本で、この仕組みに矛盾が生じてはいないか。近年は毎年のように豪雨災害が発生し、災害復旧の総額も膨らんでいる。
地方自治体の政策を担う総務省の元官僚でもある岡本さんは「まちが縮小するとき、各種施設を元の大きさで復旧してよいのか。費用対効果を検討してはどうか。各施設をバラバラに復旧するのではなく、将来どんな地域にするか面的な検討も必要だ」と提案する。(編集委員・石橋英昭)・・・

参考「復興事業の教訓、過大な防潮堤批判」、そのほか「復興10年の反省