年別アーカイブ:2022年

加害者家族への批判

2022年1月30日   岡本全勝

少し古くなりましたが、1月8日の朝日新聞夕刊、加害者家族を支援するNPO法人代表の阿部恭子さんへのインタビュー「「家族神話」の正体とは」から。

・・・家族こそが人を幸せにする。犯罪加害者の家族の支援に取り組んできた阿部恭子さん(44)は、それを幻想だと断じる。日本の伝統的な「家族神話」が、多くの人たちを苦しめるのを見てきた。阿部さんは問いかける。「家族って、そんなに大事ですか」・・・

・・・あなたの家族が罪を犯して逮捕されたら、どうなるだろう。
社会から向けられる憎悪は加害者本人にとどまらない。「なぜ止められなかったのか」「家族も同罪」。ネット上では家族への批判が渦巻き、名前や自宅をさらす投稿もあふれる。転居や転職を余儀なくされ、自殺してしまう人さえいる。
連帯責任論が今も根強く残っている」。多くの加害者家族を支援してきた阿部さんは、家族が誹謗中傷にさらされる原因をこう分析する。
日本では、子が何歳になっていても親が監督責任を問われる風潮が強い。大阪府吹田市で2019年、交番が襲撃され、男性巡査が重傷を負った事件では当時33歳の男が逮捕された。大手メディア役員だった父親は謝罪コメントを出し、辞職した・・・

・・・連帯で犯罪を抑止できるという考え方が前提だが、阿部さんは「逆効果だ」と言い切る。
連帯責任を求める社会では、家族は問題を隠そうとして孤立しがちだ。責任を家族が肩代わりし、本人への援助を続ける。それは本人の自立を妨げ、むしろ犯罪を助長しかねない。
「家族に責任がある場合もあるし、加害者への厳しい姿勢は必要だ。でも、家族への中傷は反論しづらい相手を利用してうっぷんを晴らしているだけ。社会の未熟さを表している」・・・

物持ちが良い

2022年1月29日   岡本全勝

しょうもない話です。この冬、悲しい出来事がありました。長年使っていたものがダメになり、捨てざるを得なくなったのです。

一つは、遊びの際のズボンです。鹿児島時代にキョーコさんに選んでもらったもので、深緑色の格子柄を気に入っていました。先日孫と公園で遊んでいたら、おしりのところが破れ、孫に笑われました。縫い目がほつれたのではなく、薄くなった生地が破れたのです。
でも、35年以上も履いたということですね。そちらの方が驚きです。良く長持ちしたものです。シャツはもちろん早く傷みますし、スーツやネクタイもそんなに長く持ちません。

もう一つは、革の手袋です。これは富山時代から使っているので、25年以上です。くたびれてきていたので、遊びの際につけていました。これも、すり切れてしまいました。
二つとも、当時の私には良い品で高価なものでした。お気に入りだったのです。

ワクチン接種、自治体の悩み

2022年1月29日   岡本全勝

1月25日の朝日新聞オピニオン欄「新型コロナ 3回目接種うまくいく?」、岩瀬均・東京都墨田区新型コロナワクチン調整担当次長の発言から。

――今回の追加接種で何か問題は起きていますか。
「政府は昨年11月まで『2回目接種8カ月後を絶対守れ』と言っていたのが、12月の首相の所信表明演説で『8カ月を待たずに、できる限り前倒しする』となり、その後も『さらに前倒しを』と五月雨式に変更を打ち出してきました」
「ワクチン入手の見通しを立てるのが難しいのでしょうが、あまりに激しい変更は困ります。国は変更したら新聞に載せて終わりでも、自治体は住民に周知しなければなりません。高齢者は区報で情報を得る人が多い。ころころ変わると掲載が間に合いません。命にかかわる情報は公平に届けなければなりませんし、追加接種の意義を説いたり交差接種への疑問に答えたりする必要もあります」
「4月以降、ワクチンが実際に来るかも心配です。もう少し計画的に進めていただきたいですね」

――さかのぼりますが、1、2回目の接種はどうでしたか。
「墨田区は全庁応援を早期に始め、私も一昨年12月に選挙管理委員会事務局長から福祉保健部に戻りました。以前担当していた医師会との連携を進め、集団接種の接種券送付や会場設営に選管ノウハウを応用してくれということで、選管職員も連れて行きました」

――墨田区で接種が順調だった要因は?
「医師会が一つで連携がうまくいきました。集団接種のシミュレーションを繰り返し、全庁から会場に派遣する人数や1日に接種できる人数を綿密に試算して、それに基づくワクチン数を都に求め、確保できました。全庁応援は大変でしたが、ワクチンはワクチンの部署に任せておけではなく、介護保険課や障害者福祉課といった部署が、それぞれの担当する住民の問題と捉えて積極的に動くようになる効果もありました」

連載「公共を創る」106回

2022年1月28日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第106回「産業政策の転機」が、発行されました。前回に引き続き、産業政策について振り返っています。

日本産業が世界最高水準になると、追い付き型の産業政策は終焉を迎えました。政府主導ではなく、企業が自由に行動できるように、各種の規制を撤廃することが求められました。各省が業界を指導する事前調整型行政から、事後監視型行政へと、政府と民間の在り方の変更が進められました。これ自体は必然的であり、必要なものでした。
しかし、先進国も後発国も日本の成功を見て、産業振興策に力を入れたのです。国家主導経済の中国だけでなく、アメリカもヨーロッパもです。そして、日本の経済力は相対的に低下しました。
もっとも、産業政策だけに経済の停滞の責任を負わせるのは良くないでしょう。新しいことに挑戦しない企業と社員、生産性の低い職場なども問題です。

生産性では、農業や中小企業の低さも指摘されています。農家と中小企業を保護する政策は、生産性の低さを温存したと指摘されています。
産業政策を広げて見ると、科学技術振興、通商政策などもあります。
さらに、政府による経済への介入、国民を豊にする政策には、雇用確保や労働者保護もあります。

私がここで主張したかったのは、大学で教えられている公共経済学が扱っている範囲が狭いことです。主に市場経済の欠陥是正としての財政の3機能と外部不経済を説明し、市場経済が機能する基盤整備、産業政策、国民生活の向上まで視野を広げた説明がないのです。
経済学の目的は、市場経済の分析ではなく、国民生活の向上でしょう。

広告主からの報道への圧力

2022年1月28日   岡本全勝

1月22日の日経新聞夕刊、中野香織さんの「ハウス・オブ・グッチ公開 ブランドの闇 扱いに今昔」が興味深かったです。公開中の映画についての評論です。

・・・実は、ブランドの暗部でもあるこの話が映画化されたことじたい、モード記事を長年書いてきた私にとって驚きだった。10年ほど前までは、雑誌によってはこのエピソードに触れると、その部分は削除された。ブランドからの広告で成り立つ雑誌は、広告主がチェックし、不都合とみなすことは掲載されない。そういうビジネスモデルなのである。
広告主が関わらないメディアで「不都合な」話を書くと、ブランドからショーや展示会の招待状は来なくなる。見られなければ記事も書けない。日本に本来の意味でのファッションジャーナリズムが存在しえなかったことの背景の一つだ・・・

・・・自分のささやかな経験からの臆測にすぎないが、ブランド側も映画に協力しており、この話をどこに書いても削除されなくなったことに隔世の感を覚える。
関係者や遺族から「事実はああではない」とのクレームも来る状況で、自分の作品としてどっしり構えるスコット監督の勇気ある態度そのものが、映画の内容以上に感慨深い・・・