連載「公共を創る」執筆状況報告

恒例の、連載「公共を創る 新たな行政の役割」の執筆状況報告です。
「2社会と政府(2)政府の社会への介入」のその2を書き上げ、右筆に手を入れてもらって、編集長に提出しました。その1は経済への介入で、12月半ばに提出しました。
その2は、社会(コミュニティ)への介入です。一気に書き上げることができず、まず3回分を提出し、これが2月掲載分になりました。ようやく残りを書き上げて提出すると3回分になり、これが3月掲載分になります。

現在書いている部分も内容が広く、参考となる書物がないので、苦労しています。締めきりに追われて、考えていることを文章にするので精一杯です。文章としては未熟です。それを、右筆が完成させてくれます。ありがたいことです。

心がつながらないオンライン会話

2月3日の朝日新聞文化欄、脳研究の川島隆太・東北大研究所長の「オンラインの会話、心は通じるか 視線・音声のズレ、実は孤独に?」から。

・・・ 私がCTO(最高技術責任者)を務める、東北大と日立ハイテクによる脳科学ベンチャー「NeU(ニュー)」で開発した脳活動センサーを使って見てみると、よいコミュニケーションが取れている時はお互いの脳活動がシンクロし、揺らぎが同期するという現象が起きる。対面で顔を見ながら会話しているときは、5人の脳反応の周波数は同期していたが、オンラインではそれが一切見られなかった。
脳活動が同期しないということは、オンラインは、脳にとってはコミュニケーションになっていないということ。つまり、情報は伝達できるが感情は共感していない、相手と心がつながっていないことを意味する。これが多用され続ければ、「人と関わっているけど孤独」という矛盾したことが起こってくるのではないかと推測する。
同期しない理由の一つが視線。心理学でも、コミュニケーションの場面では、視線が合うことで共感が得やすい、といわれる。オンラインではカメラを見て話せば視線は合うが、画面を見るとずれてしまう。これが大きな違和感になる。

もう一つは、どうしても音声と画像がズレてしまうこと。脳にとっては、紙芝居が声がずれた状態で演じられているようにしか感じられないのだろう。
SNSの利用も増えたが、仕事や勉強などと並行することが多く、メインの作業への「割り込み」になる。スイッチがあっちに入ったりこっちに入ったりする「スイッチング」が増えるほど、注意能力が下がり、原因は解明されていないが、医学的にはうつ状態になりやすいと言われる・・・

行財政東海懇談会で講演

今日2月8日は、行財政東海懇談会で講演するため、名古屋市まで行ってきました。このコロナ感染拡大なので実施できるか心配したのですが、対策を取って対面で行うことができました。
参加者は、東海地方の自治体首長や幹部の方です。

主催者の要望は、「令和時代に期待される公務員」でした。
連載している「公共を創る」で述べているような、日本社会の大きな変化と行政への期待。そして「明るい公務員講座」で述べているような、公務員への期待を話してきました。
考えていることをすべて話そうとすると、盛りだくさんになるので、どこを強調するか、どこを捨てるかが難しいです。また、この内容では画像や映像がないので、何を見てもらって、記憶に残してもらうかも、一工夫必要です。

久しぶりの対面講演で、具体例や笑い話などもたくさん盛り込むことができました。皆さん熱心に、そしてメモを取りながら聞いてくださいました。

記者会見で指名されない記者

2月2日の朝日新聞オピニオン欄「多事奏論」、原真人・編集委員の「日銀の質問封じ たかが記者会見、されど」から。

・・・記者稼業を長年続けていると出席した記者会見の数は千回や2千回を軽く超える。その経験から言えるのは会見には2種類あるということだ。一つは「伝えたい何か」を出来るだけ多くの人に伝えるための会見。もう一つは「隠したい何か」をできるだけ話さず、ただやり過ごす会見である。
昨今は後者が増えている。モリカケ、桜を見る会などの疑惑に揺れた安倍政権、ワクチン接種など新型コロナ対策の遅れを批判された菅政権がそうだ。想定問答をひたすら読み上げ、批判的な質問をする記者を排し、時間が来たらさっさと打ち切る。

私がふだん出席する日本銀行の会見もそうだ。先月開かれた定例会見で黒田東彦総裁は14人の記者の質問に答えた後、最後にひとり挙手する私だけ指名せず会場をあとにした。会見の司会は記者会側が務めるが質問者を指名する裁量は総裁にある。
私が質問の機会を奪われたのはこれが初めてではない。以前から私を含め、異次元金融緩和について厳しい質問をぶつけたり批判的な記事を書いたりする何人かの記者が指名されないことがたびたびあった・・・

・・・たかが日銀会見の話と思わないでいただきたい。黒田体制の9年間で日銀は政府の借金のうち400兆円を事実上肩代わりし株式市場に30兆円超のマネーを投じた。国家の未来を脅かしかねない異様な政策はわずか9人の政策決定会合メンバーで決められた。その権力の中心が日銀総裁なのだ。
たかが一問でもなかろう。権力を批判する一つの質問の制限が全体を萎縮させる。

朝日新聞社史は戦前戦中の朝日報道を「大きな汚点」と記している。戦争を批判せず軍部に協力して国民の戦意をあおり、実態と異なる戦況報告を垂れ流した。戦後はそれを猛省し、二度と同じ過ちを繰り返すまいと社をあげて誓った。その精神は私たち現役記者にも引き継がれている。
とはいえ将来、国家権力が再び戦争に突入しようとしたとき、メディアはそれを止められるだろうか。私には自信がない。権力が手を下すかもしれない検閲や報道統制、記者の逮捕や暴力的圧迫のもとで批判的報道がどこまで続けられるものか・・・

記者会見で、手を挙げても指名されない記者は、一つの勲章なのでしょうね。もっとも、その状況を多くの国民は知らず、また原さんの心配するような社会になっては困ります。

育児休暇、日本とアメリカ

2月6日の日経新聞「風見鶏」は、山内菜穗子記者(ニューヨーク)の「育休が映す日米の未来」でした。
・・・育児休業法の施行から30年がたつ日本からみれば、驚きかもしれない。
経済協力開発機構(OECD)加盟国で唯一、政府として有給の産休・育休制度がない国がある。米国だ。バイデン大統領は大型歳出・歳入法案の一部として有給の家族休業創設をめざすが、成立のめどは立たない・・・
なぜ、アメリカでは、産休と育休がないのか。その背景は、記事をお読みください。

もう一つ、重要な指摘があります。
国連児童基金(ユニセフ)の調べでは、日本の育休制度は先進国で1位の評価をもらっています。これは意外でした。
ただし、この話には続きがあります。制度は立派なのですが、男性の取得が進まないとも指摘されています。課題は、制度とともに、運用です。

「人手不足で育休取得が進まない」との意見もあります。しかし、育休だけでなく、(家族を含めた)コロナ感染や介護などで、従業員が休まざるを得ない場合が増えています。安心して働き続けるために休暇を取りやすくすることが、人材確保にもなります。