コロナウイルス感染予防

8月25日の朝日新聞教育欄、西村秀一・国立病院機構仙台医療センター・ウイルスセンター長の「学校の感染対策、ずれてないか」から。

・・・各地の学校で夏休みが明けました。休み前から様々な感染対策が続いていますが、ウイルス学の立場からすると方向がずれているとも感じます。
多くの学校では毎日のように先生たちが机を消毒してきました。メディアや専門家が「接触感染」のリスクを強調してきたためでしょう。しかしウイルスは細菌と異なり、感染者の体外に排出されると時間が少し経てば死にます。新型コロナも、ある研究でプラスチック面で長く生きるとされていますが、データをよく見ると1時間で生きているウイルス数が10分の1程度に減っていました。
仮に感染者が校内にいても、机に付着する数は極めて少なく、時間経過でウイルスが死ぬことも考えると、こうした負担を続けるほどの意味はありません。文部科学省も8月、過度な消毒は不要とマニュアルを改訂しました。私は手洗いも毎回せっけんで30秒も行う必要はなく、ウイルスは流水で十分落とせると考えています・・・

イギリスの中学校

ブレイディみかこ著『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(2019年、新潮社)を読みました。読まれた方も多いでしょう。
イギリスから帰ってきた知人が、ぜひ読むようにと勧めてくれました。彼も、ロンドンで子育てをしました。書評でも高い評価を受けていたので、読もうかと思っていたのですが、ほかの本を優先していました。彼の勧めと、先日取り上げた『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』(イギリス労働者階級の昨今)が予想以上に面白く勉強になったので。

一言でいうと『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』の子供版です。イギリスが移民からなる国になっていて、白人間の階級差に加え、移民たちが多い地域では、複雑な社会ができています。
著者の息子さんは、裕福な人たちが通う名門小学校から、元底辺中学校(かつては貧しい人たちが通う学校が、教師たちの努力で改善された学校)に通います。そのことによって見えてきた、イギリスの地域社会の現状です。
「白人は豊かで、移民が貧しい」のではありません。移民の中には上昇志向の高い人たちもいます。白人に貧しい人も多いのです。所得格差、イギリス人と移民、白人と黒人とアジア人、そして混血。さまざまな境遇の人たちがいます。

とても勉強になりました。日本では多くの学校が、すぐにはこのような状況にはならないでしょうが。今後、定住外国人が増えれば、このような状況は生まれてくるのでしょう。

半月以上前に読んだのですが、他の記事を書くのにかまけて、先送りしていました。もっといろいろなことを考えたのですが、時間が経つと、記憶が薄れてしまいました。ダメですねえ。このほかにも、読んだのにまだこのページに書いていない本が、数冊あります。

NHK朝の連続テレビ小説、福島応援

NHK連続テレビ小説「エール」の主人公の題材は、福島出身の古関 裕而さんです。
ところで、NHKでときどき、主題歌『星影のエール』に乗せて、福島県59市町村を紹介する短い映像が流れています。「紹介ビデオ」で見ることができます。5分、うち各地紹介は4分。「目次

・・・東日本大震災を経験した、福島県が持つ“たくましさ”や、困難にも負けず前に進む“姿”を『星影のエール』の曲に乗せ、このプロモーションビデオを通じて、今、困難に立ち向かう全国の方々に“エール”を送ります・・・

各地の美しい花や自然、子供たち、収穫、お祭りなどが出てきます。最後の部分では、津波災害からの復旧過程が定点観測的にも。先日紹介したいわき市豊間地区です。NHKも、よいことをしてくれますね。

危機の時の優先順位

8月23日の読売新聞、折木良一・元統幕議長の「危機管理から見た新型コロナ 優先順位一番は国民の命」から。
・・・危機に直面した時、真っ先に把握すべきは、その危機が「どんな特性を持つのか。どれぐらいの範囲に影響を及ぼしているのか」ということです。
次に、「国家レベルの非常事態になるのか、あるいは一部の地方や業界にとどまるのか」をしっかりと見極めます。それによって、我々の取り組み方が大きく異なってくるからです。
国家レベルの危機だと判断したら、今度は「何をやるか」の優先順位を決めます。その場合の一番の「物差し」は国民の命です。

私が携わった東日本大震災では、最初に大地震と津波災害、その後に福島第一原発の事故が襲ってきました。地震発生後、直ちに状況を把握し、自衛隊として取るべき対応や手段、「戦力配分」(部隊や装備の配置)を判断しました。もちろん、事態は刻々と変わります。想定外のことも次々と起きたため、絶えず自衛隊の対応や配置を修正しました。
福島第一原発事故の場合、敵は放射能で、姿が見えません。最初はいったい何が起きているのかもよくわかりませんでした。警察・消防当局とも連携し、状況を見定めながら、まずはベターな手段を取るよう心掛けました。そして、ベターから限りなくベストに近づけていきました。新型コロナの場合も「見えない敵」が相手ですから、ベターからベストに近づけていく手法が参考になると思います・・・

・・・自衛隊は、新型コロナ感染者が多く発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に派遣され、検査、消毒などを実施しました。出動した約2700人(延べ人数)の隊員に一人も感染者が出ませんでした。感染防護基準の順守の徹底など、日々の訓練、培ったノウハウに基づき行動した結果にほかなりません。
医療面でも、自衛隊は国内外の災害派遣の教訓を生かし、普段から様々なシミュレーション(模擬訓練)を行っています。
クルーズ船では厚生労働省のスタッフに感染者が出ました。厚労省は基本的に政策官庁ですが、クルーズ船の対応はオペレーション(運用)。政策に軸足のある厚労省にオペレーションを求めても無理があります。厚労省と自衛隊の上部組織に、まとめ役の司令塔が必要だったと思います・・・