「国民の皆さん・・・」

「国民の皆さん・・」という呼びかけがあります。
例えば、総理が記者会見で使われます。5月25日「全ての国民の皆様の御協力、ここまで根気よく辛抱してくださった皆様に、心より感謝申し上げます。」
また、NHKの人気番組「チコちゃんに叱られる」で、森田美由紀アナウンサーが、「今こそすべての日本国民に問います・・・」という決めぜりふを使います。

ある人が、「在日外国人は、対象ではないのか」と、疑問を呈していました。
う~ん、難しい問題ですね。
森田アナウンサーのセリフは、お笑いでしょう。ところが、コロナ対策は、日本にいるすべての人が対象になります。逆に、海外にいる日本人は対象外でしょう。そんなに目くじらを立てる話ではないのでしょうが。

これまで意識せずに、「日本にいる人=日本人」と使っています。これだけ外国人(定住者、旅行者)が増えると、どのような表現を使うとよいのでしょうか。「みなさん」では、対象が確定できませんが、それを使うのですかね。あるいは「日本の皆さん」とか。

日本よりはるかに(その国にとっての)外国人が多い諸外国の指導者は、どのように呼びかけているのでしょうか。
アメリカでは、政治指導者が国民に呼びかける際に、次のような言葉を使っているようです。
「米国の皆様」Americans、American people 、American public
「米国の納税者」American taxpayers
「米国市民」citizens

「岡本行夫という生き方」

NHKウエッブサイトに「岡本行夫という生き方」という特集が載っています。詳しくは原文を読んでいただくとして。

・・・「とにかく朝から晩までいないんですよ。私たちのボスなんだけど、省内にいないわけ。いろんなところで、いろんな人に会っていた。その中に、東京にいるアメリカの記者など外国の記者がいっぱいいた。もちろん日本の記者もね」
岡本は日本が何をしようとしているのか、国際的にも国内的にも少しでも理解を深めようと、記者たちへの非公式な背景説明を熱心に行っていたと言うのだ・・・
・・・岡本について語るとき、宮家氏が最も力説したのは、岡本が「政策を実行する人=政策マン」だったという点だ。
「実際に官僚を動かし、メディアに理解を深めさせ、政治家に働きかけて政策にしていく。そのためには、発想力と行動力と説得力が必要なんだけど、彼はそうした力を持っていた」
そして、こう締めくくった。
「彼の肩書きは『外交評論家』となっている。でも、彼は評論家ではない。評論なんかする気はないんです。彼は死ぬまで『政策マン』だった。政策を作り、それを自分で実行する。もしくは、実行するための環境を作っていく。『彼は政治的に動く』と言う人もいるが、政策とは、そもそも政治的なもの。岡本さんだからできたんです」・・・

・・・しかしそんな岡本の評価は、“霞が関”の中でも分かれていた。
「話しづらいですが、もう時効だろうからいいでしょう。総理大臣補佐官として、突然、イラク問題の政策決定過程に入ってきた岡本さんでしたから、官僚組織からは異分子のように思われていた部分もある。強烈な人が入ってきて、煙たく思った人もいたと思う」・・・
参考「追悼、岡本行夫さん

連載の推敲、三つの時間

連載の推敲、三つの領域をまたぐ」の続きです。

「連載の推敲、三層構造」では、日々のできごと、それら問題群の位置づけ、そして近代憲法構造の再検討という3つの層で考えています。すると、時間を3つの層に分けて考えることになります。
・日々のできことは、毎日のことです。
・問題群の位置づけは、平成の30年間で変わったこと、戦後70年で変わったことです。毎日のできごとを追いかけても、それは見えてきません。
・そして近代憲法構造は、1世紀とか2世紀かけての変化です。

これは、ブローデルの、長い波、中くらいの波、短かい波という、歴史を三層構造として把握する手法です。

このように書くと、「三つに分けるのが好きですね」と突っ込みが飛んできそうです。
そうですね。この「連載の推敲」も、層構造、領域、時間と3回です。
「明るい公務員講座」でも、しばしば三分論がでてきます。物事を理解する際に、二分論が当てはまる場合と、三分論の方がぴったりくる場合がありますよね。

「大衆の反逆」新訳

6月3日の朝日新聞夕刊に、浜田陽太郎・編集委員の「「大衆の反逆」新訳、死後に書籍化 南相馬在住の思想家」が載っていました。

・・・20世紀の大衆社会を鋭く洞察した、スペインの哲学者オルテガ・イ・ガセットの名著『大衆の反逆』(1930年)の新訳が4月、岩波文庫から刊行された。すでに3刷が決まり、1万部を超えた。「古典的な文庫としては異例の売れ行き」という。
訳したのは、東京電力福島第一原発事故の被災地で暮らしていたスペイン思想研究家の佐々木孝さん。十数年かけて、2018年末に急逝する直前に完成した。「大衆を批判するエリート」という従来のイメージとは違ったオルテガ像の提示を目指していた。

佐々木さんは上智大でスペイン語と哲学を学び、オルテガやウナムーノの研究をしながら、清泉女子大教授などとして30年余り教壇に立った。その後、故郷の福島県南相馬市に戻った・・・

へえ、そうだったんですね。私は、「今、なぜ岩波で新訳が出るのだろう」とくらいに思っていました。浜田さんの人脈、取材力に驚きます。
これは、新訳を読まなければなりません。

連載の推敲、三つの領域をまたぐ

連載の推敲、三層構造」の続きです。連載を書く際に、念頭に置いている構造についてです。三層構造の次に、三つの領域を考えています。

三層構造は、いわば縦に重なった層です。それに対して三つの領域は、平面での棲み分けです。政治と行政、経済、社会です。
この連載の主旨は、これまでの行政学、公共政策学の範囲が狭いということです。社会の課題、公共の問題に取り組むためには、その範囲を広げなければなりません。
そのうち、経済と行政の関係は、新自由主義的改革などで、市場と政治との在り方が議論されています。

しかし、社会に生じている問題を、政治と行政はまだ十分に拾い上げていません。社会学と行政学との間で、協働が十分に成り立っていないのです。その背景には、公私二分論があります。
この三つの領域を、どのようにつなぐか。それが、この連載の主題です。そこで、執筆に苦労しています。そして、この議論は「三層構造」の三層目と連関します。
この項さらに続く