令和元年の回顧1、復興

年末になったので、今年も回顧を始めましょう。まず、第1回は、復興についてです。
引き続き、内閣官房参与、福島復興再生総局事務局長として、大震災からの復興に関与しています。

発災から、8年9か月が経ちました。津波被災地では、復興が着実に進んでいます。ほとんどの町で、工事は完了しました。「復興の状況」。避難者の数は、発災直後の47万人(推計)から、4万9千人にまで減りました。そのうち、応急仮設住宅にいる人は、7千人です。「避難者数の推移

原発被災地では、大熊町の一部で避難指示が解除されました。また、双葉町でも3月に一部が解除されます。これで、全町が避難指示区域の町はなくなりました。もっとも、大熊町も双葉町も一部で、多くの区域は立ち入り禁止のままです。双葉町は、まだ住民が住むことは予定されていません。
JR常磐線が、3月に全通します。東京オリンピックの聖火が、Jビレッジから出発します。復興が始まっていることを、全国の人に見ていただきたいです。それがまた、関係者の元気につながります。

先日、「復興・創生期間後における東日本大震災からの復興の基本方針」を決定しました。2021年3月で10年を迎えるので、その次の10年の方針です。
津波被災地は、次の5年間で、残った復興事業が完成します。しかし、原子力被災地は、復興はこれからです。当面、次の10年間、復興を進めます。5年後に状況を見て、事業の見直しを行います。

これまでに、避難指示解除ができるところは、ほぼ解除できました。帰還困難区域の一部に、復興拠点をつくっています。しかし、帰らないと決めている人も多く、これからは、帰還する人の支援とともに、新しい人の呼び込みが必要です。
その2へ続く。

連載「公共を創る」第29回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第29回「社会的共通資本 地域で安心して暮らす条件とは」が、発行されました。
第2章では、「暮らしを支える社会の要素」を議論しています。その1は「公私二元論から官共業三元論へ」でした。今回から、その2「社会的共通資本」に入ります。

私たちが社会で暮らしていく際に、どのような「装置や環境」が必要かを、いろんな面から考察します。
その1では、社会を律する決まり、仕組みの違いから、見てみました。そこでは、従来の公私二元論ではなく、官共業三元論の方が、私たちの社会をより良く理解できました。

その2では、町の暮らしに必要な要素を詳しく見てみます。第1章で、津波に流された町を再建するには、インフラだけでなく、サービスや人間関係も必要だと指摘しました。
そのような視点から、まず「社会の財産」を列挙し、分類してみます。「個人の財産」(といっても、建物や預貯金だけでなく、資格や友人を含めたもの)や「地域の財産」という考えを、社会に広げてみます。
今回載せた図表「社会の財産の分類」は、かつて『新地方自治入門』や大学の授業で「地域の財産の分類」として使っていた物を、拡充したものです。右筆1号、2号から、重要な指摘をもらい、わかりやすくなったと思います。右筆に感謝です。

これで、年内の掲載は終わりです。4月から連載を開始して、29回になりました。よく頑張りました。1月分は原稿を提出して、ゲラになっています。ところが、その続きに難渋しています。冬休みは、原稿と格闘しますわ。

9連休、冬休みの計画

役所では、昨日27日が御用納め。今日土曜日から、年末年始の休みに入った人も、多いでしょう。暦通りに休むと、9連休ですね。
他方で、商店や飲食店、交通、病院、介護施設などにお勤めの方は、休みなしです。感謝します。

これは、結構長いお休みです。それぞれに計画を立てておられることでしょう。連休は、始まる前は長く思えるのですが、終わるとあっという間ですよね。
「これとこれをする」と計画を立てて実行すると、充実感があります。既に、旅行などに出かけておられる方も、おられるでしょう。
他方で、「長い休みだから・・」と、のんべんだらりと過ごしていると、何も残りません。そのようなゆったりとした時間を過ごすことも、良いことではあるのですが。

私は、そんな悠長なことは言っておられず、原稿を書きためる必要があります。行きたい展覧会や、読みたい本もたくさんあるのですが。毎回、計画倒れになります。
実は、この休みの一番の目標は、この秋にため込んだ体重を減らすことです。そのためには、食事とお酒を抑えることが必要です。
これが、難しいのです。ここに書いて、自分を追い込むことにします(苦笑)。

原発処理水、安全と安心と

12月23日に、経産省の委員会が、第一原発で発生し続けている、トリチウム水の処理について、処分方法を2つに絞って提案しました。

事故を起こした第一原発では、地下水が原子炉建屋内に入って、放射能に汚染されます。これが汚染水です。それを機械で処理して、放射性物質を取り除きます。これには成功しているのですが、トリチウムだけが取り除くことができません。
ただし、トリチウム事態は放射能が弱く、環境に大きな影響は与えません。
発生し続けているトリチウムを含んだ処理水は、敷地内のタンクにためています。そのために、タンクを建て増していますが、これも限界が近づきつつあります。
健全な原発でも発生するので、それは海洋に流しています。「わかりやすい解説

この処理水も、科学的な知見では、健全な原発が流している基準、あるいはそれを下回る基準で海に流せば、問題はありません。
しかし、現在議論になっているのは、科学的安全ではなく、社会的安心です。海に流すことで、漁業に風評被害が起きるのではないかというのが、一番の論点です。
繰り返しますが、科学的に安全なのと、社会的に安心なのとは違います。福島産の農産物にも、ごく一部ですが、まだ風評が残っています。丁寧に説明することが必要です。

12月27日の朝日新聞社説「福島の処理水 地元との対話を重ねよ

倉本一宏著『公家源氏』

倉本一宏著『公家源氏』(2019年、中公新書)が、勉強になりました。
平家と争い、鎌倉幕府を開いた源氏については、皆さんご存じですよね。源氏と言えば、この義家、頼朝の家系で武家の印象が強いですが、この本が取り上げているのは、宮中で活躍した源氏です。

天皇の子供や孫が、源という姓をもらって、皇族から離れます。他の姓をもらった皇族もいます。在原とか。平安時代の天皇が、それぞれたくさんの子供を、このようにして処遇します。他の方法は、出家して寺院に入ることです。
どの天皇から別れたかによって、嵯峨源氏、清和源氏、村上源氏など、たくさんの家が興ります。よって、源氏と言っても、一つの家ではありません。

公家となった源氏は、天皇に近く、殿上人として王権を支えます。血筋、育ち、教育において、優れているのです。
しかし、子孫の代になると、天皇とは遠くなり、地位を低下させます。もっとも、その頃には、別の天皇から出た源氏が活躍します。
たくさんの有名な源氏の公家が、載っています。もちろん、全員が出世したわけではありません。
公家と言えば、藤原氏を思い浮かべますが、一時は、源氏の方が多いときもあります。もっとも、力を持っているのは藤原氏で、源氏とはお互いに共存を図ります。婚姻を通じてです。そこに、天皇家、藤原氏、源氏の3家による、共同体が生まれます。

宮中で活躍するためには、血筋と教養と後ろ盾とが必要です。もう一つは、財産です。藤原氏は代々、荘園を引き継ぎ、また拡大します。
各源氏は、どのようにして、財産を確保したのでしょうか。その点は、この本には詳しくは書かれていないようです。