ミネルヴァ書房「日本評伝選」シリーズ

先日、ミネルヴァ書房の「日本評伝選」の新聞の全面広告が出ていました。200巻になったそうです。
取り上げられている200人(+数人。1巻で親子など数人が取り上げられているものもあるので)を見て、いろいろ考えました。「この人は取り上げられて、あの人は取り上げられていないなあ」とか。やや意外な人も載っています。しかし、日本の政治・経済・文化を語るという観点からは、もっと取り上げてほしい人もいます。それは、これからの続刊に期待しましょう。
それにしても、「この人の伝記を1冊にするだけ、記録が残っていたんだ」と驚くこともあります。

9月16日の読売新聞文化欄には、「「日本評伝選」200巻 ミネルヴァ書房・杉田啓三社長…「半永久的に続ける覚悟」」が載っていました。
・・・それまで単発での刊行が主だった歴史評伝をシリーズ化した狙いは、「より幅広い視点から日本史を捉え直す好機が到来していたから」だった。
冷戦が終結した1990年代以降、研究者の間では特定のイデオロギーに基づく歴史観を見直す動きが出ていた。そこでそれぞれ歴史学と比較文学の泰斗である上横手雅敬、芳賀徹両氏を監修委員に迎え、「私たちの直接の先人について、この人間知を学びなおそうという試み」(「刊行の趣意」から)がスタート。杉田社長も自ら企画に関わった。
シリーズの一番の魅力は、取り上げる人物と著者の組み合わせにある。一般読者の興味・関心に応えるため、「著者には外国の研究者も起用し、固定観念にとらわれない切り口をお願いした」。
政治家、学者から芸術家、外国人まで幅広いラインアップにこだわりを詰め込んだ・・・

吉川弘文館に「人物叢書」があります。こちらは約300冊ほど出ているようです。

連載「公共を創る」第18回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第18回「哲学が変わったー成長から成熟へ 公共を支える民間」が、発行されました。

前回まで、復興での企業やNPOとの連携について解説しました。今回は、復興に限らず、「公共を創る」という観点から、民間の役割、民間との連携を議論します。
企業の社会での役割は、社会貢献活動(慈善事業、メセナなど)、CSR(会社が持つ技能を使っての社会貢献)、そして本業の継続があります。最近では、社会起業家も生まれています。
しかし、まだまだ企業やNPOの能力は知られておらず、活用されていません。近年、自治体と企業が連携協定を結ぶようになりました。この動きが進むこと、そしてもっと企業の持っている能力を活用することを期待します。「補足

見えにくい仕事能力の育成と評価

成果の見えやすい仕事と見えにくい仕事」の続きです。

・・・このことを一般向けに解説したものとして、組織の経済学の分野で著名なジョン・ロバーツ米スタンフォード大教授による「現代企業の組織デザイン」を挙げておこう。米国企業の実例を基に、見える仕事にだけ焦点を当てた成果主義の弊害、内発的動機付けと長期雇用の重要性を指摘した。
経済環境の変動に対応して、労働資源が最も必要とされる産業や企業に効率的に投入されるには、円滑な労働移動が重要だ。一方、労働資源が投入される職場で最も効率的に活用されることも重要だ。

後者の点では、見えにくい仕事にインセンティブを与えるには、働く場所を移動すると報酬が下がる仕組みが必要となる。もし移動してもすぐに同じ報酬が得られるならば、契約で明示されておらず、しかもその成果が見えない仕事に頑張ろうとはしないからだ。
また見えにくい仕事は前もって約束しにくく、定型化しにくい。人間に優位性があるのは定型化しにくい仕事だ。事前に明確にできないことに柔軟に対応することに、人間の優位性と労働者を雇用するメリットがある。明確にできる仕事は機械に代わられ、外部に委託され、労働者を雇う必要性が小さい。雇われても対価は高くないことが多い・・・

・・・どこにでも役立つ一般的技能は労働者の生産性のコアだ。古典的な人的資本理論では、一般的技能の習得費用は労働者個人が負担すると考えられていた。にもかかわらず、外国語学習のように一般的技能の習得を企業が支援してきたのは、従業員が長期的に貢献してくれるという期待があったからだ。それが失われるならば、自分で自分に投資する金銭的余裕のない者は能力の向上が妨げられる。
これは企業が抱え込みたい優秀な人材は会社から能力向上の機会を与えられる一方、そうでない人は機会に恵まれないことになり、二分化が進むことを意味する。実際、短時間労働者の推移をみると、どの国でも女性での割合が高い(図2参照)・・・