年別アーカイブ:2018年

イノベーション政策、政府の役割

2018年6月18日   岡本全勝

6月15日の朝日新聞オピニオン欄、神里達博さんの「イノベーション政策 政府は「主導」より「対処」を」から。詳しくは、原文をお読みください。

・・・ 最近、「イノベーション」という言葉をよく耳にする。現政権においてもイノベーションは非常に重視されており、「第三の矢」とされる「成長戦略」においては、中心的な役割が与えられてきた。
イノベーションさえ起これば経済は成長プロセスに乗り、日本社会は再び活気を取り戻すはず。そんな漠然とした期待が広がっているようにも思う。しかし、それは確かなことなのだろうか。
今月は、この概念の本来の意味を確認した上で、近年の日本の「イノベーション政策」について、少し考えてみたい・・・

・・・ 一方、その過程やメカニズムについての学術的研究もなされてきた。その結果、イノベーションを管理するための知識も、ある程度は蓄積されてきた。だが、社会に強いインパクトを与えるようなイノベーションの多くは不連続的な現象であって、事前の計画や設計ができる類いのものではないことも分かってきた。
また、真に影響力の大きいイノベーションは、以下のような物語を伴うことも多い。少数のパイオニア、時には狂信的ともいえるような情熱を持った人たちが、世間の冷たい視線にもめげず努力を続ける。そしてついに成果を世に示す日が来る。人々は驚愕し、世界が変わる――この種のストーリーは当然、計画や設計にはなじまない・・・

・・・本来、科学技術政策と産業政策は別ものだが、最近は産業政策、特にイノベーション政策の手段のように科学技術政策が位置づけられることが目立っている。
実際、政府の科学技術政策の司令塔「総合科学技術会議(CSTP)」は、14年の内閣府設置法改正により、「総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)」に名称変更された。
加えて、閣議決定で設置された「日本経済再生本部」のもとに置かれた「産業競争力会議」の、さらにその中のワーキング・グループが、CSTIに対して「宿題」を出し、CSTIが対応するという、不思議な現象も起きているという。
これを「官邸主導」と呼べば聞こえはいいが、国会の議決に基づく、法的根拠のある行政組織が、閣議決定を根拠とする組織の「手足」のごとく走り回っているとすれば、問題ではないか。

これらは一部の例に過ぎないが、日本では他にも、すでにさまざまな政策が、イノベーションの名の下に動員されていく流れにある。それが本当に日本社会を豊かにするならば、一つのやり方かもしれない。だが、シュンペーターが指摘しているように、本物のイノベーションが起これば、それはしばしば既存のシステムの破壊を伴うということも、忘れるべきではない。
かつての通商産業省は、石炭から石油へのエネルギー革命に対処すべく、石炭対策特別会計を設け、石炭産業を安定化させ、離職者の生活を守ることにも気を配った。
行政の本来の仕事は、イノベーションを加速することよりも、その結果起こるさまざまな社会経済的なゆがみに対処することではないだろうか。結局のところ、政府はイノベーションという難題に、どのように、どこまで関わるべきなのか、いま一度、落ち着いて見つめ直すべき時だろう・・・

官僚機構改善論3―人事政策が必要

2018年6月17日   岡本全勝

官僚機構改善論2―バックオフィスの管理の続きです。
さらに話を広げれば、これからの国家公務員をどのように育成するか、「人事政策」を明らかにする必要があると思います。

これまでは、各省単位で国家公務員を管理していました。その中で、上級職・中級職・初級職の区別、事務職・各種の技術職の区別で、管理していました。ところが、そこに「明示的な」人事方針はないようです。公表されていて、公務員たちが知っておくような文書・指針は、寡聞にして知りません。評価や面談については、この10年ほどの間に、整えられました。
人事課の仕事には、人事異動のほか、定数管理、採用、評価、給与、福利厚生、組合対応などがあります。そして、それらを統合して、どのような公務員を育てるか、目標と方法が必要です。ここでいう人事政策は、これを指しています。
制度に対する運用、さらには運用の方針と言ってもよいでしょう。国家公務員法があっても、それは制度であって、実際の運用と運用の方針は明示されていないのです。

これまでは、あまり問題にならなかったのです。国家のために働く、それが官僚の目標であり、生きがいでした。給与といった見返り以上に、このやりがい(と出世)が官僚たちに、私生活を犠牲にした働きに駆り立てたのです。
その際の目標と手法が、明白でした。欧米に学ぶという、わかりやすい目標と手法がありました。しかし、もうこれは終わりました。また右肩上がりの時代は、予算や人員を増やすことが善でした。これも、終わりました。新しい法律や制度も、増やせば良いという時代ではありません。すると、公務員特に官僚たち(幹部公務員)に、何を目標とさせるのかが、問われます。
他方で、国家のためなら滅私奉公、無限定な残業をする時代も、終わりました。部下に、ワークライフバランスを勧めなければなりません。また、かつてに比べ、心の病を発病する職員が増えています。
これらにどのように対応するかを、公務員全体に示し、さらに人事課長たちにも教えなければなりません。「官僚機構改善論4」へ。

相馬LNG基地

2018年6月16日   岡本全勝

福島県相馬港(新地町)に、石油資源開発株式会社が建設を進めていた、液化天然ガス(LNG)供給基地が完成しました。今日は、その竣工式に行ってきました。
外国から専用船(LNGを冷却して液体で運んできます)を運んできた液化天然ガスを受け入れ、ガスにして国内に供給します。パイプラインやタンクローリー車に積んでです。パイプラインは仙台や新潟まで通じています。敷地の隣では、それを原料にした発電所も建設中です。
福島県浜通は、原発なきあと、どのように産業を振興するか。大きな課題です。この施設も、その一つです。
奇しき縁で、会社の社長は、岡田秀一さんです。20年前に、省庁改革本部で参事官として、一緒に苦労しました。

今日は、仙台駅から、高速道路を南下して、新地町に入りました。発災直後は、高速道路の海側は、津波によるがれきがいっぱいでした。田んぼ1枚に自動車が1台と言っていいくらいに、転がっていました。
復興が進み、今通ると、もう災害を思わせるものは何もありません。新地町も、駅が流されるなど、大きな被害に遭いました。新地駅は、陸側に移転しました。
新地町長のほか、宮城県岩沼市長や山元町長も来ておられ、そのような話をしてきました。

今日の浜通も、気温16度。先週の寒さに懲りて、今日は下着をそれなりのものにしていきました。おかげで、大丈夫でした。

慶應大学、公共政策論第9回目

2018年6月15日   岡本全勝

公共政策論も、第9回目。
前回、企業の方に、企業の社会的貢献を話してもらったので、まずはそれのおさらい。

さらに、これまでの私の講義の全体像を、図示して解説しました。
新しい社会のリスクが生まれていること、個人の責任だと思われていた問題が社会の課題になっていること。
他方で、社会・公共空間は行政だけが責任を持つのではなく、企業も非営利組織も重要な主体であること。
すると、官民二元論ではなく、官共私三元論がふさわしいこと。
その変化の背景には、自立した市民による社会という近代市民国家像から、自立できない人もいることが発見されたこと。労働者、病人、障害者、子供、高齢者、消費者・・・。それを救うのが公共の役割となったこと、などなど。
この視点からは、これまでの公共政策論は行政が主で、狭いこと。これからは、3つの主体による課題解決、さらには3主体の協働をどのように進めるかが重要になる。

これで、全体像が見えたでしょう。学生諸君も、理解しやすくなったと思います。