年別アーカイブ:2018年

東京大学、卒業生の進路変化

2018年2月21日   岡本全勝

2月19日の日経新聞に、「スタートアップ#東京大学(上) 勃興本郷バレー 省庁・大企業から人材シフト」が載っていました。
・・・省庁や大企業に優秀な人材を送ってきた東京大学。東大生の進路に変化が生じている。東大ブランドが通用しないスタートアップを選ぶ卒業生が増えている。スタートアップが大企業をリードするパラダイムシフトが起きているからだ。硬直的な官僚システムへの不満もある・・・

公務員就職率6%どまり」という解説もあります。
・・・東大から大蔵省へ――。このキャリアがエリートの代名詞だった時代は過去のものになったかもしれない。東大生が就職先として公務員を選ぶ比率はこの20年間で低下傾向にある。大学資料から算出した学部卒業生の公務員就職率は2017年春に6%と20年前(9%)と比べ下がっている。法学部でも29%から23%に低下した・・・

明治国家が先進諸国に追いつくために作った「総合輸入商社」「各分野での指導者育成塾」でした。ここが、オックスブリッジやハーバード大学などとの違いです。「制度輸入、官主導の国家育成」に効率よく成功しました。第1段階の使命は、達成しました。
次に、どのような役割を果たすか。第2段階への変身は、理工系学部は成功していると思います。世界の研究の最先端で伍しています。
難しいのは、社会科学系です。自然科学なら、研究対象は、多くの場合万国共通です。社会科学の場合は、研究対象が世界なのか日本なのか。その違いがあると思います。

イギリスの強さ、官僚の留学記

2018年2月21日   岡本全勝

橘宏樹著『現役官僚の滞英日記』(2018年、PLANETS)が興味深かったです。著者は、1980年生まれの官僚で(橘宏樹は仮名です)、2014年から2年間、イギリスの2つの大学院に留学しました。LSEとオックスフォードです。その間に、毎月1回、見聞きしたこと考えたことを、メールマガジンで連載しました。この本は、それをまとめたものです。

海外での体験や見聞を記すことは、かつてはよくありました。読む価値があるかどうかは、筆者の「切り口」「切れ味」によります。この本は、一読の価値があります。仮名なので、どのような経験を積んでおられるかは不明ですが、かなりの教養と学識があるとお見受けします。

私が特に興味を持ったのは、「無戦略を可能にする5つの戦術-イギリスの強さの正体」(p145)です。筆者は、「イギリスには戦略はなく、行き当たりばったりに見える。しかし、そこに強さの正体がある」と分析します。その「うまさ」とは、次の5つです。
弱い紐帯のハブ機能(旧英領植民地とのつながり)
カンニングの素早さ(他国から優良事例をパクること)
乗っかかり上手なイギリス人(人にやらせるのが上手。反対が日本人)
トライ・アンド・エラーをいとわない(とりあえずやってみる)
フィードバックへの情熱(やってみた結果を生かす)

そのほかにも、オックスフォードのエリート再生産システム、会員制クラブによる金とコネと知恵による力など、イギリスの強さを鋭く観察しています。
世界を支配した国、経済的に衰えたとはいえなお力を持っている国。世界第2位の経済大国になったものの、次の道を迷っている日本には、まだ学ぶことがあります。
お勧めです。

このような立派な内容を、匿名で出版しなければならないほど、役所の「規制」があるのなら、残念です。

雑誌『行政法研究』

2018年2月20日   岡本全勝

宇賀克也責任編集『行政法研究』第20号(2017年10月、信山社)を紹介します。
第20号は、「行政法の課題」です。現在の行政法学の課題を、それぞれ第一人者が解説しています。目次を見るだけで、そして冒頭の宇賀先生による概要紹介(はしがき)を読むだけで、現状が分かります。
行政法の世界も、社会の変化にしたがって、どんどん変わっていきます。教科書では追いつけません。何が問題になっていて、どのような考え方になっているのか。それを知るために、このような概括は便利で、ありがたいです。

この雑誌は、宇賀先生が編集者になって、2012年から発行されている論文誌です。この号で、20号になります。
フランスなどでは、有力な研究者が編集者になって、雑誌を編集することが多いようです。宇賀先生のこの雑誌も、そのような試みでしょうか。
社会科学系の研究者が論文を発表するには、ジュリストのような商業雑誌、学会の機関誌もありますが、それぞれ制約があります。このような雑誌は、良いことですよね。もっとも、商業的には成り立ちにくいでしょうし、編集担当の先生にも大きな負担がかかるでしょう。
信山社からは、その他の分野、環境法、社会保障法、消費者法などの論文誌も出ているようです。

住まいのない人を引き受ける施設

2018年2月20日   岡本全勝

2月17日の朝日新聞オピニオン欄「最低限の住まいとは」、奥田知志さん(NPO法人「抱樸」理事長)の発言から。
・・・1月に火災が起きた札幌市のそしあるハイムは、「無届け施設だ」という指摘があります。「届けを出さねばならなかったのに、出していない」という批判がこめられていますが、的外れです。「届け出なかった」のではなく、「届け出ることができなかった」あるいは「あえて届け出なかった」のだと思います。

法律に基づき届け出が必要な施設は利用者資格が明確に決まっていて、障がい認定や介護認定がなければ利用できません。つまり、制度ごとの縦割りになっています。そしあるハイムのような、40代から高齢者までいて、住まいの確保から就労支援、食事の世話、介護まで担う施設の枠組みはいまの日本になく、届け出のしようがないのです。

制度の狭間に置かれた、行き場のない人々が増えています。貧困だけでなく、社会参加できない、認知機能に問題がありそうだが介護保険の対象になっていない、家族と縁が切れているなどの複合的な要因を抱え困窮する人たちです。私も北九州市で無料低額宿泊所を運営していますが、公的支援はありません。縦割りで「入居者を限定する施設」ではなく「だれでも入れる施設」が必要だからです・・・

・・・もう一つ、民間施設には残念ながら「貧困ビジネス」もあり、玉石混交です。
そしあるハイムは生活保護受給者でも月に3万円程度手元に残る良心的な価格の施設でした。一方で、食事付きと称してカップめんだけとか、生活保護費を全額徴収し、入居者が自由になるお金がない施設が問題になっています。貧困ビジネスは規制し、必要な施設を応援するルールづくりが求められています・・・

日本記者クラブ取材

2018年2月19日   岡本全勝

今日は、日本記者クラブ「福島取材団」の取材を受けました。皆さん、現地視察を終えた後、19時からです。熱心さに、頭が下がります。
マスコミの皆さんは、現状と課題はご存じですが、全体を整理してもらうのに良い機会と考え、私の考えをお話ししました。復興政策を進めるため、国民に現状を知ってもらうことは、重要です。また、国費を使っているので、納税者への説明も必要です。

鋭い質問が、たくさん出ました。しかし、現地では、住民の思いも人によって違います。なかなか、一刀両断的な回答はできません。復興を進めることは、単線的ではないのです。