白猫黒猫論、白犬黒犬論

汽車と新幹線、漱石と鄧小平」の続きです。

鄧小平の有名な言葉に「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」という「白猫黒猫論」があります。共産主義であれ、資本主義であれ、人民を豊かにするならどちらでもよいという趣旨です。当時それを聞いて、わかりやすい表現だなと思いました。

後に、次のようなもじりを考えました。
「白い犬でも黒い犬でも、しっぽを振る犬はかわいい」です。
どれくらい役に立つ犬かはわかりません、またどちらが美しいかは分かりません。しかし、しっぽを振って寄ってくる犬はかわいいのです。たくさん肉をもらえます。それに対し、しっぽを振らない犬は、かわいくありません。肉を少ししかもらえません。
職員も、仕事の出来不出来はひとまずおいて、愛想よく近づいてくる人は憎めません。上司の評価が高くなります。

この「ことわざ」は、白猫黒猫論に比べ低級ですが、私たちの日常では、こちらの方をよく体験します。ゴマスリ人間は尊敬できませんが、上司から見ると、しっぽを振る犬はかわいく見えるのです。
ニコニコしていることが楽しく仕事をするコツだと、お教えしました。無理してごまをする必要はありませんが、時に上司に合わせることも出世のコツです。
物事をきちんとまじめに考える人には、この話は通じないので、読み飛ばしてください。

平成30年の回顧1、復興

年末になったので、今年の回顧を始めましょう。
まず、第1回は、復興についてです。引き続き、内閣官房参与、福島復興再生総局事務局長として、大震災からの復興に関与しています。

被災地では、復興が着実に進んでいます。いくつかの町で、復興工事は完了しています。「復興の状況
津波被災地では住宅再建が9割以上終わり、多くの人が仮設住宅から恒久的な住まいに移っています。とはいえ、8年は長かったと思います。発災直後の47万人(推計)から、5万4千人にまで減りました。「避難者数の推移

あと2年3か月で、発災から10年になります。復興創生期間が終わり、一つの区切りとなります。復興庁も、10年の時限組織です。次に向けて、被災地域の復興状況を調べ、自治体に何が残っているかを聞き取りました。
地震・津波被災地域は、生活インフラの復旧はほぼ完了し、総仕上げの段階です。 被災者の見守りや心のケア、コミュニティの形成は、なお対応が必要です。
原子力災害被災地域は、中長期的対応が必要であり、今後も継続して取り組む必要があります。

東北復興新聞に、復興についての私の考えを簡潔にまとめました。ご覧ください。「復興庁は何をしたのか。元事務次官が語る国の”責任”」(2018年4月18日)
その2へ続く。

12月28日

今日は、12月28日。御用納めでした。
かつては、昼くらいから職場でお酒を飲んで、一つのけじめをつけていました。その後に、お店に繰り出すのです。1月4日には、また御用始めとして昼からお酒を飲んでいました。おおらかなものでしたね。農村社会の風習を、職場というムラ社会に持ち込んでいたのです。
最近は、職員を集めて首長が訓示する、御用納めの式や御用始めの式をやらなくなっている自治体も増えているようです。それも、一つの見識ですね。休める職員は、既に冬休みに入っています。

私は、職場で資料整理にいそしみました。挨拶の職員や相談の職員が来てくれますが、ふだんほどは多くなく、まとまった時間が取れました。
概要だけ理解して、詳しくはあとで読もうと取ってある資料が、たくさん積んであるのです。これらは、集中しないと読むことができません。一気に片付けました。
今年は、年賀状も早々と出したので、ゆっくりとした年末を迎えることができます。とはいえ、原稿がいくつか待っています。休みの間に読もうと、少々分厚い本も買ってあります。どこまで進むことやら。

福島市や先日行った福井県大野市でも、まとまった雪が降ったようです。荒天も予想されています。ひどいことにならないとよいのですね。
年末年始も、休むことなく働いている方々に、感謝します。

大震災に対する税制措置の解説

林宏昭編著『日本の税制論』(2019年1月、清文社)が出版されます。
関西大学経済学部と、中国北京の中央財経大学財政税務学院との共同研究の成果です。中国(語)で、日本の税制(第1部)やトピック(第2部)を、日中の研究者が出版されました。その第2部トピック部分が今回、日本語として出版されたのです。「税と経済成長」「社会的公正と税制」「土地と課税」「税と社会貢献」「超高齢化」など、興味深いテーマが並んでいます。

林先生の要請で、私と小栁太郎くんで「第5章 東日本大震災に対する税制上の措置とその特徴」を書きました。これまでにない大災害への対応、多岐にわたるそして時間とともに課題と対応が変化した税制特例を、わかりやすく整理してあります。

二人で書いた形になっていますが、冒頭を私が書き、本体ほとんどは小栁くんが書いています。月刊誌『地方財務』2017年12月号に「東日本大震災に対する税制上の措置とその特徴」を書いてくれました。それを下敷きにして、外国の方にもわかりやすいように加筆しました。
小栁くんは、復興庁で税制特例を担当してくれました。その後、梶山弘志・内閣府特命担当大臣の秘書官を務めました。その忙しい中で、執筆してくれました。

学習塾の効用

12月24日の日経新聞教育面「連載「挑む」終了 塾講師3氏が座談会(下)」から。

・・・後藤(学習塾講師、代表) 立派な自習室を用意している中学・高校もある。子供たちが塾の自習室に行くのは、家に帰りたくないからではないか。長期休暇中に3泊4日の勉強合宿を開いている。3日目の夜に「明日、家に帰りたくない人」と聞くと、かなりの子供が手を上げる。親もぴりぴりしているし、塾で得られる人間関係もある。塾は子供たちのコミュニティスペースなのだ・・・

・・・平松(塾講師、代表) 高校受験も同じだ。思春期真っ盛りで親子関係が最悪の場合、最高の癒やしは友達と話すこと。親から「塾から帰って来ない」と電話があって、後日、生徒に理由を聞いたら、友達の家の前で遅くまでおしゃべりしていた。塾で友達と話すうちにやる気が出る場面もある。
後藤 ヨーロッパ留学の経験があるが、向こうに塾はない。その代わり社会に何らかコミュニティスペースがある。日本ではその機能の一部を塾が担っている。それはそれで、いかがなものかとは思うが……・・・

担当者(横山晋一郎・編集委員)が、塾の効用について評価したあと、次のように述べています。
・・・一方で「学校は何をしているのか」という思いも募った。受験勉強に特化できる塾と、「知徳体」にまんべんなく重点を置く学校では、背負っているものが違う。それは分かっていても、塾通いの現状を前に、学校のふがいなさを感じてしまう。これでは、学校は「勉強以外のことをする場所」になりかねない・・・

塾が暗いものではなく、生徒たちに居場所、勉強の場所をつくっていることが分かります。しかし、指摘されているように、学校は何をしているのでしょうか。このような座談会に、文科省、教育委員会、学校の先生が参加して欲しいです。