慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第13回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第13回の講義。これまでの講義のおさらいをしました。
私の12回の講義が、どのような部分から成り立っていて、全体から見るとどのような配置になっていたかを、目次を見せながら説明しました。そして、どこが地方財政論の肝かも。学生の感想文には、「全体がよくわかりました」というものが多かったです。
そうですね。私も学生の時、あるいは分厚い本を読んでいて、全体像が分からないことから、理解が進まないことがありました。

日経新聞夕刊コラム第2回

日経新聞夕刊コラムの第2回目「暗闇の灯台になる」が載りました。前回に続き、大震災直後の話です。
当時は、「未曾有」とか「想定外」という言葉が、よく使われました。しかし、想定外のことは起こります。その際に、責任者は何をするべきか、何を考えるべきか。私の経験を伝えたくて、この話題を選びました。
個別の案件を処理するのが、トップの仕事ではありません。たくさんの課題を円滑に処理できるように仕組みを作ること、かつ混乱している中で優先順位を付けることが、仕事です。そのために、そのようなことができる組織をつくることが重要です。

私がしたのは、それをしてくれる2人を呼んできたことです。
組織が出来て(作りつつですが)、仕事の流れができれば、それぞれの担当者が処理してくれます。そして、彼らが判断できないことを私が判断する、あるいは大臣に相談すれば良いのです。
あわせて、ここに書いたように、国民に私たちの存在を知らせる必要がありました。それが「灯台」です。関係者に「手形交換所」を知らせることも必要でした。

文中に出てくる2人は、山下哲夫・行政改革本部参事官(現・総務省行政管理局長)と、福井仁史・内閣府公文書管理課長(現・国立公文書館理事)です。
被災者生活支援本部の記録、下(事務局風景)の真ん中の写真で、左奥時計の下のスーツ姿と、左手前資料を持って歩いている姿です(2011年3月24日)。発足当時は彼らは机もなく、立ったままで、あるいは空いている席を見つけて仕事をしていました。
下左の写真、手前真ん中が私の席ですが、座っていませんねえ。指示を書く罫紙と万年筆とサインペンが載っています。この騒々しさの中でしゃべるので喉を痛め、ペットボトルの水が必需品でした。
下右の写真は、しばらくしてから移った執務室です。服装を見ると、初夏の頃でしょうか。
1月16日に続く。

ナポレオン時代

アリステア・ホーン著『ナポレオン時代 英雄は何を遺したか』(2017年、中公新書)が面白く、読みやすいです。ナポレオンの伝記ではなく、政治家ナポレオンが何をしたか、当時はどのような時代だったかを整理した本です。

下級貴族に生まれた男が皇帝になり、ヨーロッパを征服する。近代第一の英雄でしょう。しかし、軍人としての才能だけでなく、その後の各国の模範となる民法典など、近代国家の基礎をつくりました。
そもそも、大革命後の混乱、恐怖政治を終結させただけでも、大した力量です。国王を処刑した国民が、10年余りで皇帝をつくるという歴史の迷走もありますが。もっとも、彼を皇帝に押し上げた対外戦争での勝利は、それがないと民衆の支持がないことになり、彼は無謀な戦争を続行します。

ここは、ヒットラーと同じです。歴史上の英雄も、高邁な目標を持って判断と行動するのではなく、その場その場で「よい」と思った判断を積み重ねて、結果を残すのでしょう。後から考えると、「なんで、そんなことするの」と思うようなこともあります。
そして、英雄が一人で判断して歴史をつくるものではありません。たくさんの登場人物の絡み合いの結果でもあります。

本書では、政治や軍事より、建築、様式、文学、社交など、ナポレオン時代のフランス社会・パリが描かれます。お勧めです。
著者はイギリスの作家です。日本人が日本人向けに書く新書も読みやすいですが、翻訳も小著なら、新書が向いているのでしょう。
ジェフリー・エリス著『ナポレオン帝国』(2008年、岩波書店)も、ナポレオン時代を分析した書ですが、そちらの方は、行政組織、経済などより専門的です。

真山仁さん「怖いものはみたくない」

1月3日の朝日新聞経済面、作家の真山仁さんの発言「財政破綻 誰も言わないなら、私が言う」から
・・・怖いものはみたくない。できたら通り過ぎてほしい。「見ざる」「聞かざる」「言わざる」の3ザルですよね。お上に、よきに計らってもらえばって思っている表れでしょう。でも、そうしていたらろくなことがなかったのが、この20年ですよね。
特に東日本大震災の後、官僚やメディア、大学教授といったインテリに対して国民が嫌悪感をもってしまっていて、福島第一原発事故などに関して「だまされた」という感情がある。「もっと一生懸命言ってくれたら、気にしたのに」と思っている。本当は、スリーマイルもチェルノブイリの事故も隠されてはいないのに。
政治家も、財務省をたたいていれば自分たちの責任が転嫁される、と考えているふしがある。官僚主導が嫌ならば、政治家がもっと勉強して官僚を使いこなせばいいのに、それもできず、警鐘がきちんと鳴らされていない・・・