官僚の信頼を低下させたもの

朝日新聞連載「平成経済 グローバル化と危機」、12月3日は「大蔵接待「料亭は飽きた」」でした。
内容は、原文を読んでいただくとして。1990年代に、官僚への信頼が急速に低下しました。
その要因の一つは機能であり、もう一つは清潔さでしょう。
機能については、明治以来、先進国の先端行政を輸入し、効率的に日本に広めることに、官僚機構は良く役割を果たしました。
しかし、先進国に追いついたことで、この手法は終わりました。官僚主導、行政指導、護送船団行政は、時代遅れになったときに、批判されるものとして使われた言葉です。
新しい国家目標、新しい手法を提示できなかったのです。変わらなければならないときに、変えることができなかったのです。
清潔さについては、かつては「官僚は安い給料で夜遅くまで、国家のために働く」という評価を受けていました。その信頼が、記事にあるような一部の官僚の非常識な行動で、崩れてしまったのです。

新しい時代での役割を考え、国民の信頼を取り戻すこと。これが、官僚に期待されています。

自治体と企業との連携

福島県と三井住友海上火災保険が、包括連携協定を結びました。大震災からの復興と地域の活性化のため、さまざまな協力をしようというものです。
資料を見ていただくと、具体的には次のような項目が並んでいます。
・会社のお客様向けウエッブ配信サービスを使って、県の情報を定期的に配信すること
・ロボット分野での、事業者の紹介
・会社の県内代理店(620店)を活用した地域見守り活動
・県内市町村の業務継続計画策定への支援

企業は、さまざまな道具や技術を持っています。それを、地域の活性化に活かそうというものです。ありがたいことです。
ところで、自治体は、企業がどのような技術を持っているか、何を提供してくれるか、情報を持っていません。他方で、企業は、持っている技術を使って、どのように地域に貢献できるか、よく分かりません。
課題は、自治体と企業を結びつけることです。
具体的に取り組みが成果を上げれば、世間の人に認知され、他の企業にも広がると思います。

「先送り」から「先取り」へ

12月2日の日経新聞1面「ポスト平成 新しい日本へ」、原田亮介・論説委員長の「「先送り」から「先取り」の時代へ」から。
・・・平成が2019年4月末で終わる。何度も危機に見舞われた停滞の時代である。1945年以降の昭和が復興と高度成長の時代だったのとは対照的だ。
経済の停滞は金利の動きで明らかだ。長期金利は改元の翌年秋、8%台のピークを付けた。その後は急坂を転げ落ちるように下がり続け、山一証券などが破綻した97年に1%台に突入した。以後20年、超低金利がすっかり定着したのである。
停滞が続いた理由は何か。不良債権問題が典型だが、政府も銀行も企業も、問題解決を「先送り」し、無駄に時間を費やしたからではないか。
地価がまた上がるという希望的観測に頼ったり、自らの責任を免れるために痛みを伴う解決に逃げ腰になったり。結局、金融危機から脱出するのに平成の前半15年間が、まるまる消えていった・・・

「先送りから先取りへ」は、簡潔で良い表現ですね。原文をお読みください。

南相馬市、新しい段階へ

今日は、南相馬市役所で、復興の課題を議論しました。小高区(市の南部)に出ていた避難指示が、昨年夏に解除されました。約3割の住民が帰還し、平常の生活が戻りつつあります。
市長は、「復興から発展へ、段階が進んだ。進めたい」とおっしゃっています。同感です。避難指示が解除されたことで、次の段階に入りました。また、課題も変わりました。
産業や商業など、まだ元に戻っていないものもあります。医療や介護なども、従事者が不足して、完全には再開していません。これらも、順次解決していきます。

しかし、元に戻すだけでは、次への発展がありません。
津波と原発事故という災害は、大変な被害をもたらしました。しかし、それからの復興を機に、新しい町を作ろうという挑戦が、多くの地域で行われています。
市長は、その際に「住民が主役になる必要がある」と主張されます。この点も、同感です。国も参加しますが、自治体と住民の取り組みが重要です。
市町村が、かつてない復興に取り組んだ経験は、大きな財産です。案を作り、住民の意見を集約し、国や関係者と協議して、実現していく。これだけ「大きな事業」を成し遂げた市町村は、日本中でも珍しいことです。これを、新しい街づくりに生かしてほしいです。

論文・復興に関する税制特例

月刊誌『地方財務』12月号に、小栁太郎・前復興庁企画官の「東日本大震災に対する税制上の措置とその特徴」が載りました。
この大震災は過去に例のない規模のもので、発災直後から、法律改正を含めいくつもの税制の特例がとられました。
本稿は、それらの措置を時系列で整理するとともに、課題の変化に応じて何が必要だったかを分析してあります。被災者の税の減免の他、今回の特徴だった、復興特区税制、財源確保税制、原発事故特例も取り上げてあります。
年表と「時間の経過、課題の変化、税制上の措置を整理した表」がついています。これは、わかりやすいです。

たくさんの措置を整理するには、大変な労力が必要だったと思います。
将来への良い記録にもなります。ありがとうございます。