今日は、岩手県庁幹部職員研修に行ってきました。千葉副知事、風早総務部長の依頼なので、断るわけにもいかず。最近は管理職研修でしゃべっていないので、何をお話しするか悩みました。「明るい公務員講座」の連載を始めたのですが、これは初級編なので管理職向けではありません。
部下はどのような上司を望むか、どのような上司を嫌うか。上司はどのような部下を望むか、どのような部下に困るか。それを中心にレジュメを用意しました。話では、その各項目ごとに、体験談や失敗談を入れようと考えたのですが。逆にして、私の体験談を中心に、「こういうことをしてはいけませんよ」「私はこのようなことを心掛けてきました」をお話ししました。
「部下が相談しやすい上司になろう(逆の場合の困った例)」「スーパーゴミ箱」のほか、「重要な上司への説明資料は、自分で書くこと」「想定問答づくり、特に質問作りを部下に任せてはいけない」など、全勝流の仕事術も伝授しました。それも抽象論や一般論でなく、私が失敗した実例を入れた「説得力ある」お話しです(苦笑)。
(補足)
「仕事を減らすためには、上司が判断しないと、担当者は前年どおりに行う」と、お話ししました。県庁でもやっていると聞いていますが、上司と部下との定例面談(目標設定と達成度評価)に、「業務量削減の具体事項」を入れてはどうですか。なお、お詫びの仕方のページ。
公務員になって37年あまり、県庁や自治省などで仕事のほか、総理秘書官や被災者生活支援本部と復興庁と、なかなか経験できない仕事もさせてもらいました。話しているうちに、どんどん元気が出て、またいろんなことを思い出して、いつものことですが、時間が足らなくなりました。
月別アーカイブ: 2015年11月
コボルトその8
アナグマ商会あらわる
「あたちはちゅてきな精霊ちゃん、おほほ、おほほ、どですかぽん(ポン)」
コボルトちゃんが巣穴の中でぽんぽんを撫でながら「ぽんぽん節」を歌っています。この歌は精霊に古くから伝わっている歌で、「どですかぽん」と歌うたびに「ポン」とおナカを叩いて拍子をとる歌です。
「おほほー、ちゃいきんはお供えモノもたっぷりあるし、チアワセでちゅ」
その時、巣穴の外で、「ごめんくださ~い」と声がしました。
「なんでちょ。謝っていまちゅね」
とコボルトちゃんが巣穴から顔を出しますと、見慣れないドウブツがいます。
「おマエ、ナニモノでちゅか。何故アヤマっているのでちゅか」
「わたしは妖精やドウブツのみなさまに手広くご利用いただいておりますアナグマ商会のアナグマでございます。今日はコボルトさまが最近ご景気がいいと伺いまして、さらにご景気がよくなるすばらしい当社の金融商品のご紹介にあがりました」
と、アナグマは礼儀正しく挨拶しました。
「キンユウ商品? おいちいのかちら?」
アナグマはにやりと笑いました。どうやら聞きしにまさるおバカさんの精霊のようですので、いいエモノだと思ったのです。
「えー、では、わたしどもの金融商品をご説明いたします。ひとつには預託事務を行っておりまして、わかりやすく説明いたしますと、わたしどもにお客さまが百円のおカネをお預けくださいましたら、一月で五パーセントの利率で運用いたしますので、つまり、百円が百五円になるわけでございます。毎月毎月五円が手に入るわけなのです」
「へー。・・・でも、あたちヒャクエン無いから関係ありまちぇんね」
「いえ、大丈夫でございます。わたしどもはご融資の方も承っております。利率は一月でわずか十五パーセントでございます。ですから、お客さまが一円の現金もお持ちでなくても、わたしどもの融資口座から百円をお借りいただいて、その百円をそのままお預けいただけばいいわけです。これが当商会のヒット商品「モトデナシー」でございます。「モト
デナシー」をご利用いただけますと、コボルトさまには毎月毎月五円が支払われます。一方融資の方は半年〆でございますから、半年経ってから毎月十五パーセントの複利分をお返しいただければいいだけなのです。いかがでございますか。今なら御新規さま大サービスセールで、来月分の五円が今月手に入るサービスも実施中ですよ」
とコトバ巧みに持ち掛けました。
「へー。・・・ゴエンってどんなモノなの?」
「こういうモノでございますよ。今契約いただいたらこの場で今月分を差し上げます」
アナグマはカバンの中から五円玉を出してコボルトちゃんに見せます。
「おほほー、どんな味なのかちら」
コボルトちゃんはアナグマの手にしていた五円玉をぱくりと口に入れ、舐めたりぼりぼりと噛んだりしていましたが、やがてバラバラになった五円玉を吐き出しました。
「なんでちゅか、これー。固くて食べられまちぇん。ちょれにニガ~い。こんなモノをもらっても何の得にもなりまちぇん。とっとと帰りなちゃ~い」
と、アナグマを追い返してしまいましたそうです。 (採集地:ホッホハンバー地方)
コボルトその7
トマト畑のワナ
マジメなお百姓さんのボックがトマト畑の側でなにやら作業をしています。
「ボックおじタマ、ナニちてるの?」
小さなオンナのコがやってきて訊ねました。ボックさんはオンナのコを見ると、
「おお、これはこれは大地の精霊コボルトさまではございやせんか。ご機嫌うるわしゅうございます。・・・あっしはこの柵の下にワナを仕掛けているんでございますよ」
「ナンのワナなの?」
「最近このトマト畑に盗みに入るふてえドウブツがいるようなんでっさ。昨日もトマトを十個もとられちまいました。トマトはコボルトさまの祠にも毎日一個づつお捧げしておりますからご存知だと思いますが、みずみずしくて美味しくてカラダにいいクイモノですので盗むヤロウがいるようなのでございますよ。そこで、そのドウブツがこの柵の下からもぐりこもうとしたら、ばちん、と捕まえるワナを仕掛けているのです」
ボックは親切に教えてくれます。
「ちょ、ちょんなワルいドウブツがいるのでちゅか。おほほー、ちょんなワルいヤツはばちんとやっちゅけないといけまちぇんねー。ト、トマトはおいちいでちゅからねー」
コボルトちゃんは何故だかどぎまぎしているようです。ワルいドウブツも生き物ですから、そのドウブツがばちんとやられると聞いてかわいそうだとか思っているのでしょう。
「ヤラなければこちらがヤラれるんでっさあ。カワイそうだがしようがねえですだよ」
とボックはコボルトちゃんに申し上げます。するとコボルトちゃんは、
「ワ、ワルいやちゅはやっちゅけないとねー、まったくでちゅねー、おほほほー」
とか言いながら駆け出して行ってしまいました。
さて、その夜。
がさごそ、とトマト畑の側で物音がします。月明かりの中でよくよく見ると大地の精霊コボルトちゃんです。
「おほほ、ボックのおじタマから聞き出しておかなかったら、ばちんとヤラれてちまうところでちた。やはり情報収集が大事なのね。アブない、アブない」
と言いながらコボルトちゃんは、
「こちらには秘密兵器があるのでちゅ」
と森の中から引きずってきた細長いモノを抱き起こしました。
「これで柵の上を越したら、柵の下にあるワナは作動ちまちぇん」
なんと、竹馬です。コボルトちゃんは竹馬にまたがると、
「おほほ、おほほ」としばらくよろよろしていましたが、やがて何とか竹馬で柵の上を越えます。
「うまくいきまちた。ちゃあて、おチゴト、おチゴト。トマトはおいちいので一日一個のお供えモノだけでは満足できないの」
コボルトちゃんはトマトを十個懐に入れて、再び竹馬にまたがると柵の外に出ました。
「大セイコー。おほほほほー」
と笑いながら、竹馬を引きずって森の中に消えていきます。
翌日、ボックがまたまた荒らされたトマト畑を見ながら「う~ん」と腕組みをしていると、コボルトちゃんがやってきました。
「ボックおじタマ、ナニ悩んでいるの?」
「あ、コボルトさま。またヤラれたんでっさあ。おまけにどうやってこのワナを逃れて忍び込んだのか、まったくわからないんでございやす。う~ん、これでは防ぎようがない」
その晩、またまたコボルトちゃんは竹馬を引きずって現れます。
「ボックのおじタマはタケウマの利用に気づいてないみたいでちゅね。ちめちめ」
コボルトちゃんは竹馬で柵を越え、今夜も熟れたトマトを十個ぐらい懐に入れまして、また竹馬で柵の外へ出ようとしました。しかし、世の中そうはうまくいきません。ごつんと竹馬が柵に引っかかりまして、「きゃあ」と柵の外側に放り出されてしまいました。
どすんとおナカから着地したので、懐のトマトがいくつか潰れたみたいです。しかし、さいわいケガはありません。すぐ立ち上がりまして、柵の中に残してしまった竹馬を取り戻そうとしますが、柵に引っかかって取り外せません。しばらく月明かりの下でごにょごにょしていましたが、このままでは番犬のドックに気づかれる可能性も出てきます。
「おほほー、ちかたありまちぇんね、長居はムヨー」
と逃げて行ってしまいました。もともと飽きっぽい性格でもありますからね。
次の日、ボックがトマト畑の惨状と遺留品の竹馬を見つめてため息をついていますと、またコボルトちゃんが現れまして、少し離れたところから大声で訊ねます。
「今日は事情があって近くに行けまちぇんが、ボックおじタマ、どうちたのー?」
「どうしたもこうしたもねーんでっさあ。ドロボウのドウブツはえらく知恵の回るやつでしてな、この竹馬で柵を飛び越えていたみたいなんでっさ」
「おほほー、ホントにいけないコでちゅねー」
「まったくでっさあ。でも、ここでつまずいたみたいで、そこらへんでアタマかなんか打ったみたいでしてな。今朝そこのとこに血の跡が残っていました」
ボックが血の跡と思っているのは、潰れたときに出たトマトの汁です。
「かなり弱ってちまったでちょうね。もうワルさはできないんではないでちょうかねー」
コボルトちゃんはそう言いましたが、ボックはかぶりを振ります。
「いや。一度トマトの味を覚えたやつはまたやってくるにちげえねえです。今度は畑の周りにバクダンを埋めておくか、あるいはドクでも盛っておくしかねえのでっさ」
と、恐ろしい作戦を口にしました。
するとコボルトちゃんは、突然ボックの方にとことこ寄ってきて、
「お願いー、ほかの方法にちてくだちゃ~い。ジライやドクは困りまちゅ~」と「お願いスリスリ」をしたと言います。
「はあ・・・。コボルトさま、なんだか服からトマトのニオイがしますよ・・・」
ボックはにやりと笑いました。
「なんとなくカラクリがわかりやした。ジライとドクは使いません。しかし、こうなったら、コボルトさまを大地の精霊と見込んでお願いでございます。これから毎日祠の方にトマト五個を捧げますので、ワルいドウブツからわしの畑を守ってくだせえ」
「え? ・・・五個でちゅか、う~ん。十個の半分・・・」
コボルトちゃんはしばらく考えこんでいましたが、ついに、
「・・・わかりまちたー。お互いのチアワセのために五個で手を打ちまちょー」
と答え、それからはトマトの被害は無くなったそうです。 (採集地:カゴメール地方)
コボルトその6
大魔ジンの恐怖
カントン伯ギョウザー領の人民は、服がキタナいし、貨幣を持っていないので貧乏だと思われています。また領主のことを「やる気ないしだらしないしヨメももらえないし、最低のやつだ」とボロクソ言います。そういう不満を持っているのに、革命を起こそうとはしません。外から見ると、そこではすごい恐怖政治が敷かれているカモ、と疑われます。
実際には領主のカントン伯が税金をとるのも面倒くさいと思っているため税金がすごく安いので、クイモノなど生活必需品は豊富にありますし、領民はカントン伯をバカにしきってますからかなり自由なのです。倒すにも値しないと思って放っておいてあるだけなのです。でも、そんな状況は周りの地域のひとから見ると「ありえない」ことにしか思えま
せんので、「やる気がなくてしかも恐怖政治のカントン伯からマズしい領民を救わなければならぬ」という大義名分のもと、ステーキ公ロベルトが軍隊を進めてまいりました。
カントン伯領は税金が安いのでほとんど軍隊がいません。ステーキ公の軍は破竹の進撃です。侵略をはじめてから三日で、カントン伯のお城を取り囲んでしまいました。
「ここまでは順調だったが、カントン伯ギョウザーは魔法使いともつながっているといわれるから、どんな秘密兵器を使ってくるかわからん。情報収集を怠ってはいかんぞ」とステーキ公は部下を引き締めます。
「まったくであります、さすがはわれらが大公爵さまよ」と部下たちは尊敬を表しました。その時、情報収集に出していた兵士が報告に戻ります。
「われらが偉大な大公爵さま、報告であります。村人をとっつかまえて尋問したところ、今年は豊作だったのに領主が税金を集める手間をメンドウくさがったため、カントン城内にはほとんど食糧は無いのではないか、との情報がありましてあります」という幸先のよい報告です。
ステーキ公と周囲のモノたちはにやにやします。「よし、このまま取り囲んで兵糧攻めじゃ」
「ただ、ひとつだけ気になる情報がございますであります」
「なんじゃ。申してみよ」
「とるに足らぬ情報なのですが、お城から一匹のゲコが出てきまして、人目を避けるように森の中に入って行ったのでございます。普通ならただのゲコに注意することなどないのですが、何しろカントン城は別名「ゲコ城」といわれるほど魔法のゲコのうわさのあるところ、注意だけはしておこうと思いまして、その後をつけてみたのであります。ゲコは森の中の木のウロのところまで行きまして、外からゲコゲコと鳴きました。すると・・・」
「すると、どうしたのじゃ」
「ウロの中からヘンなオンナのコが現れ、ゲコのコトバを聞き、「わかりまちたー、ちょうがないから大魔ジンと大魔オニでも持っていきまちょう」と答えたのでございます」
この報告を聞いてさすがのステーキ公の顔が青ざめました。
「な、なにいっ。大魔神じゃと・・・サラセンの魔法を用いるつもりか・・・」
東方のサラセン国には「大魔神」というでかい魔神がいるといわれています。普段はランプや指輪の中でぐうたらしているらしいのですが、ご主人さまに呼び出されると現れて敵をやっつけてしまうという伝説が伝わってきています。「大魔鬼」の方はそのコブンか何かでしょう。恐ろしい魔界のモノどもを味方にしようとしているのです。
「カ、カントン伯め、わが軍にかなわぬと見て異教徒の魔神と手を組んだのか。・・・モ、モノドモ、われらには正しい神が引っ付いているのであるから臆するでないぞっ」とステーキ公はぶるぶる震えながら言いました。
「ま、まったくでございます、い、偉大なわれらが公爵さま~」と部下たちも賛同いたしましたが、顔が引きつっているのでした。
カントン伯があろうことか異教徒の魔界のモノどもに援軍を頼んだらしいというウワサはステーキ軍の兵士たちの間にもすぐ広まりました。兵士らは恐怖の面持ちで、手入れもしてないのでボロボロになっているカントン城の城壁を見上げます。そう言うメで見てみると、剥げ落ちた石垣やクモの巣の張った城門もおどろおどろしい雰囲気です。
夜になるとお城の中からは不気味なゲコの鳴き声が無数に聞こえてきますし、城門からときおり覗く城兵の顔とかはどろ~んとしていて覇気というかやる気がまったくなく、悪魔にタマシイを売ってしまっているようにさえ見えます。
このような緊張した状態で数日が過ぎた夜のことです。
遠くからゲコゲコと多数のゲコの不気味な声が聞こえてきました。ステーキ軍の兵士はびびりはじめます。ステーキ公も寝所から出てきまして、恐怖に引きつった顔でゲコゲコに聞き入ります。その間にも、ゲコゲコの声はどんどん近づいてくるのです。魔界の軍隊がついにやってきたのかも知れません。しかも、単なるゲコゲコの声ではなく、
このコ刻んでどろどろ煮立てて食べまちょう(ゲコゲコゲー)
このコ煮えたらおさじですくって食べまちょう(ゲコゲコゲー)
という背筋が凍りつくような恐ろしい歌になっているのです。
「す、すぐ近くまで来たぞ・・・」
みんながすごい緊張したちょうどその時です。お城の城門には古ぼけた塔があるのですが、その上から、カントン側の見張りの兵士が、
「来たぞー、大魔ジンと大魔オニが来たぞ~、助かったぞ~」と叫ぶ声が聞こえました。
「うひゃあ、大魔神だ~」
ステーキ軍はかなりパニック状態です。
カントン城内では「おお~」「ハラ減った~」という歓呼の声が上がり、突然ギギギ~と城門が開かれ、松明を手にして多数のゲコや兵隊が出てきました。
「うわ~、大魔神と挟み撃ちだ~」「逃げろ~」
ステーキ軍は城門から出てくる覇気の無い兵士はともかく多数のイボゲコたちに飛び掛かられて、「わ~ん、イボができちゃうよう」と士気を失ったのです。ステーキ公も「もはやこれまで。引け、引け~」と逃げ出しました。
城の兵士たちはクモのコのように逃げて行くステーキ公の軍隊には目もくれず、ゲコの歌とともにやってきたひとりのオンナのコを出迎えました。オンナのコは、すごく巨大なニンジンとタマネギを担いだゲコたちを引き連れて城門をくぐりながら言いました。
「おチロのクイモノがなくなったというから、巨大魔法ニンジン(略称大魔ジン)と巨大魔法オニオン(略称大魔オニ)を持ってきてあげまちたー。やちゃいカレーライチュを作って食べて、みんなでカチコくなりまちょー」
国に逃げ帰ったステーキ公は、恐怖でつるつるになってしまい、子々孫々カントン地方には手を出さないように厳命したということです。 (採集地:ステーキ地方)
コボルトその5
コボルト暦
みなさんは中世の一時期、お百姓さんたちの一部で使われていたコボルト暦をご存知ですか。中世のカレンダーはたいてい毎日、どういう農作業をすべき日かとか、どういう聖人をお祭りすべき日か、といったことが書き込まれていたのですが、内陸部のドリエンヌ地方で使われていた絵入りカレンダーには、特に、三日から四日ごとにコボルトちゃんの印が入っていまして、「コボルト暦」といわれているのです。
このコボルトマークは何をあらわすものなのだろうか、ということに多くの学者が悩みまして、いくつかの学説が立てられました。
① 中世の精霊信仰に注目したドレスデン学派は、このマークをコボルト信仰で説明しようとしました。代表的な学説は、次のとおり。
「大地の精霊「コボルト」への信仰はドリエンヌ地方で最大であったのじゃ。当時のオロカな民衆たちはひと月の中に何日か、大地のチカラが最大限に発揮される日があると信じ込んでおり、その日に農作業をすると豊かな収穫が約束されると信じておって、これらのコボルトマークはその日を示すモノなのであーる。」
(ドレンスデン大学メッセル教授講演「中世のオロカなものどもについて」)
② 欧州大戦後には、中世のひとたちの考えていた宇宙像から説明しようという学派もありました。代表的な学説は次のとおり。
「当時のひとびとは天王星より外側の惑星を知りませんでした。代わりに、目に見えないナゾの惑星の存在を信じていまして、この星が三日から四日ごとに太陽または月の軌道と交差すると考えられていたのです。その日を示すのがコボルトマークです。コボルトさんは神出鬼没なので、この星のような目に見えないモノの代替物として使われたのです。」
(マイエルツ迷信文化研究所ドンマル副所長「中世のクダらん天文学的発見」)
③ このマークはコボルトちゃんとは違うコかも知れない、という逆転の発想からナゾを解こうとしたのがマルタンヌ文化庁の新鋭の学者たちです。代表的な学説は次のとおり。
「このマークは、コボルトちゃんと別種のケボルトちゃんのマークであり、転写の過程でケが落ちてしまったものにすぎない。中世のひとたちは、三日から四日ごとにヒゲを剃っていたので、このケボルトマークは「髭剃りをすべき日」を示している。」
(マルタンヌ文化庁編「ケボルト文明」)
しかし、近年、ドリエンヌ地方の農家の土蔵から、秘密にされてきた文書が発見され、これらの学説が誤りであったことが証明されるに至っています。この文書は「メントマリーの手記」と呼ばれ、農家のシュウトメがヨメに主婦としての心構えをコト細かく教えようとしたものですが、その中に「コボルトに注意するんだよ」という一条がありました。
コボルトは食い意地がはっているからキケンだよ。しようがないから村の各家庭交代で毎日祠にお供えモノをしておくんだけど、オオグイだからお供えモノだけでは足らずに、三日か四日に一回は人家に盗みに来るよ。だから、コボルトが来そうな日には、パンくずや食い残しをテーブルの上に置いておくんだね。それを盗んでいってくれるから、生ゴミ
を出さなくてよくて助かるよ。コボルトも利用できないようじゃ、主婦失格だね。
これでやっとわかったのです。コボルトマークの日は、コボルトちゃんが盗みに入る可能性のある日を示していたのです。要するに「コボルト注意報」だったのですね。みなさんもコボルトちゃんには気をつけましょう。 (採集地:ドリエンヌ地方)