12月29日の日経新聞、「ベンチャー育成、官がどこまで」に、政府の成長戦略として、官が主導するファンドによる新企業育成の議論が載っていました(官民ファンド)。政府が産業にどこまで、どのように関与するのかは、大きな課題です。
国家が経済成長をするために、産業政策がとられます。かつては、欧米先進国に追いつくために、先進的な産業を導入し保護育成しました。他方で、衰退する産業を保護しました。これは、技術指導、補助金、低利融資、税制、参入規制などの手法を組み合わせました。
また、一時的に破綻に瀕した個別企業を救済したこともあります。企業再生や銀行救済などです。このほか、日本の生活文化を海外に売り込むための、「クールジャパン機構」も作られています。
かつてのような特定産業の保護育成は、終わったようです。今、話題なっているファンドは、どの産業と決めずに新産業・ベンチャーを育成しようというものです。追いつき型経済発展の時代が終わったら、自らで新しい分野を開拓する必要があります。既存企業が新しい分野に進出するほか、ベンチャー育成は、その一つです。
放っておいてもどんどん新企業が出てくれば良いのですが、近年の日本は廃業が多く開業が少ないとのことです。起業家精神を喚起し、どのような条件を整えると、新企業がたくさん出てくるのか。その際どこまで、政府が関与するかです。
ところで、銀行がこのような挑戦者に融資をしてくれるほかに、保険の役割もあります。新しく見込める商品やサービスに、リスクの補償をするのです(例えば、2013年7月18日、日経新聞「ニッポン金融力会議。新産業、保険で後押し」)。そのような観点からも、保険の役割は重要です。目的とともに、手法も大切です。
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2013年大晦日
今日は、大晦日。みなさん、今年はどのような年だったでしょうか。充実した1年であったことと、存じます。
私は、仕事では、大震災被災者支援からは3目年、復興庁が発足して2年目でした。それぞれに仕事が進み、新しい段階に入ることができました。12月27日「御用納め、この1年の仕事」に書いたとおりです。
新しい段階に入ると、また次の課題が出てきて、なかなか「失業」することはありません。大臣の下で、現場での復興を進めるという「成果の進行管理」とともに、そのために組織を動かすという「組織管理」の二つがあります。これは、どの省庁でも同じことですが、復興庁の仕事は成果が見えやすい一方で、これまでにないことが多く、また新設組織なので、その苦労もあります。支えてくれる職員たちに、感謝します。
このホームページは、200万人を突破しました。おもしろいことも書いていないのですが、読んでくださる方に感謝します。後輩たちや世間の方に、官僚はこんな生活をして、こんなことを考えているのだと、参考にしていただければと思って、書き続けています。
私事では、家族を含め、健康で過ごすことができました。これは、神様に感謝しなければなりません。なんと言っても、心身の健康があっての仕事です。
皆さん、良いお年をお迎えください。
アメリカ型組織・人事と日本型組織・人事。4
雇用が個人や社会にとって重要なのは、それが安心の要にあるからです。雇用が安心の要にあるということを教えてもらったのは、宮本太郎北大教授(当時)です。
麻生政権の安心社会実現会議で、「安心と活力の日本へ」という報告書をまとめました。その報告のポイントは、安心の中心には雇用があり、その回りに、子育て、教育、健康、老後があるというものです。私は、安心と聞くと、健康保険や介護保険と年金、そして生活保護制度を思い浮かべていました。しかし、それらの中心に、雇用があるのです。日本社会が安定しているのも、安全安心な社会だといわれるのも、失業率が低いこととともに、労働者が安心して働けることと、そこそこ満足できているからです。それが、個人や家庭の安心にもなっています。
国家の視点からは、経済成長やGDPが重視されます。確かに、豊かさは重要な指標です。また経済成長によって、失業率は低下します。しかし、GDPが大きくても、貧富の差が大きくては、社会は安定しません(そのほかに、政治的・社会的自由と平等も、近代社会の安定には必要です)。生産や消費の数値より、個人にとっては雇用が重要なのです。欧米のように失業率が上がり、また近年の日本のように若者が非正規雇用に追いやられると、個人や家族そして社会の安心は保つことができません。社会の安定にとって、そして個人の安心にとって、雇用が大きな要素です。
仮想通貨ビットコイン
「ビットコイン」という言葉を目にした方も、多いでしょう。ニュースやインターネットで、話題を集めています。これは、インターネット上に作られた「仮想通貨」です。実際に使われています。
わかりやすい解説が、日経新聞電子版に載っています(ビットコイン、ギークが育てた無国籍通貨。12月29日)。
なぜ、急速に広がっているのか。ビットコインは、金融機関を介さず、少ない手数料ですばやく送金できます。また、キプロスでは、金融危機の際に、政府が銀行預金への課税を決めると、ビットコインが資産の逃げ場になりました。
ビットコインは、通常の電子マネーやプリペイドカードとは違います。日銀金融研究所によると(1)発行体がない(2)発行時の払い込みがない(3)特定の資産による裏付けがないの3点で、従来の電子マネーとは大きく違うのだそうです。
日銀や政府といった、責任ある主体が発行しているのではありません。それでも通用するのは、皆がそれを通貨だと信じているからです。もっとも、その点では、紙幣も同じです。紙切れを、1万円や千円の価値があると信じているのですから。
しかし、通貨発行権は国家の重要な権限でした。実際には、中央銀行である日銀に委託しています。そして、金融政策として通貨の総量を管理しています。各国政府と離れて流通する通貨が巨額になった場合、金融政策や管理にどのような影響を与えるのでしょうか。
さらに、匿名であるので、犯罪に利用されているとも指摘されています。それらを含めて、インターネットが「主権国家」を掘り崩す例です。
住宅、立て替えでなく改修して資産価値維持を
日経新聞12月29日「戦略2014、そこが知りたい」は、和田勇・積水ハウス会長でした。
来年4月の消費増税を前に、住宅メーカーの業績は好調で、積水ハウスは過去最高の利益の見込みです。もっとも、国内の住宅市場は、人口減などで長期的には縮小しています。2012年度の新設住宅着工戸数は89.3万戸で、1996年度に比べ約半分になっています。
「今後、住宅市場の鍵を握るのは何か」という質問に対して。
・・中古住宅の活用だ。今、日本の住宅への累積投資額はおよそ850兆円にのぼる。ただ、資産として残っているのは350兆円程度しかない。それは、25年とか30年くらいの家を壊してしまっているからだ。500兆円もの国富がなくなっている計算になる。スクラップ・アンド・ビルドの時代は終わらさなければならない。
米国では、投資した金額以上の資産価値を維持している。日本に必要なのは、きちんとリフォームをして、その家が20年、30年経っても売却されるときに価値がゼロにならない仕組みをつくること。そうしたとき、住宅メーカーにとっても、新たな巨大市場が姿を現す・・
ところで、積水ハウスのCM(少年と犬)って、泣かせますよ。私は、テレビでは見たことがないのですが。