被災地での宗教

このホームページでは、「まちの復旧は、行政だけではできない。企業やNPO、地域の絆などの力が必要だ」と、主張しています。それらとは少し違った観点から、行政では手の届かない領域があります。
心の問題や宗教です。
例えば、孤立化や孤独死が問題になっています。しかし、「放っておいてくれ」という人に、それ以上のお節介を焼くわけにはいきません。これは、引きこもりへの対策の際に、論じました。

次に、宗教です。先日、お寺や墓の移転について、公金を出せないことを書きました(10月23日の記事)。今回は、心の問題から取り上げます。
災害で亡くなられたご遺体を、埋葬したり火葬しました。死亡証明があれば、市町村役場が埋葬や火葬をします。これはこれで大変でした。数が多いこと、火葬場が壊れて使えなかったことからです。身元確認ができなかったこともあります。
さて、埋葬の際に、ご遺族がお葬式を望まれることがあります。式はできなくても、「せめて僧侶によってお経を唱えてほしい」という声が、たくさんありました。被災地では、お寺も流され、お坊さんもおられません。行政は宗教に関わらないとの原則で、それをお手伝いできませんでした。
しかし、親しい人、かけがいのない人を失ったご遺族は、心の整理がつかないのです。その際に、葬式はその区切りをつける重要な機能を担っています。「葬式仏教」と批判されますが、「葬式仏教」の重要な機能なのです。

末木文美士先生は、『現代仏教論』(2012年、新潮新書)などで、宗教と現代日本を論じ、現代日本が死を避けてきたこと、葬式仏教にも重要な機能があることを指摘しておられます。

反射的回答、実績を問わない内閣支持率調査

講談社のPR誌『本』11月号に、薬師寺克行・東洋大学教授が、「世論調査政治の落とし穴」を書いておられます。
1946年8月5日付の朝日新聞の世論調査の記事と、2012年6月6日付の世論調査記事との比較です。1946年(昭和21年)の場合は、「吉田内閣を支持しますか」と「もし近く総選挙があるとすえばどの政党を支持しますか」という、内閣支持率調査と政党支持率調査です。全国で20万枚の調査票を配り約13万票を回収しています。
論点はここからです。
吉田内閣の発足は5月22日、世論調査は7月以降に実施され、記事になったのは8月5日です。内閣発足から世論調査実施までに、1か月以上をかけています(準備などに時間を要したのかもしれません)。回答者(有権者)は、吉田内閣の働きぶりを見て、答えているでしょう。
一方、2012年(今年)の場合は、6月4日に内閣改造が行われました。午後1時半ごろに記者会見があり、皇居での認証式は17時、初閣議は20時40分です。朝日新聞による「全国緊急世論調査(電話)」は、6月4日と5日に行われ、記事は6日の朝刊に載っています。調査は、4日午後から5日夕方までに行われたと推測されます。
すなわち、回答者は新内閣の仕事ぶりも見ないで、回答を迫られています。薬師寺さんは、次のように書いておられます。
・・内閣改造の瞬間から実施される今日の調査は、回答者の何を引き出すことができるだろうか。新閣僚らはまだ何も発信していない。さらに多少は回答者が考える余裕や持ちやすい面接調査ではなく、即答を求められる調査である。大半の回答者は、突然かかってきた電話に驚き、十分な判断材料のないまま直近に得た情報や目にした映像などに頼って、反射的に「支持する」「しない」を回答しているのだろう・・
薬師寺さんは、元朝日新聞政治部エディター(政治部長)です。この批判には、重みがあります。

中公新書50年

今日、本屋で、『中公新書 総解説目録』(非売品)をもらってきました。たくさん積んでありました。
創刊以来、今年で50年になるそうです。書目は2,189点です。私も高校生の時以来、岩波新書、講談社現代新書とともに、結構お世話になりました。かつては、半透明のビニールのカバーが付いていましたよね。
2009年に『中公新書の森―2000点のヴィリジアン』(非売品)をもらいましたが、これは目録と言うより、識者によるアンケートでした。今度の総解説目録は、品切れのものも含めて、解説付きで載っています。ぱらぱらとめくると、昔読んだ本が並んでいて、懐かしいです。たくさん、品切れになっています。というか、新書という性格なのに何十年も売れ続けている方が、すばらしいことでしょう。

冒頭に、加藤秀俊先生が「創刊のころ」を書いておられます。そこに、中公新書の末尾(奥付の次のページ)に付いている「刊行のことば」(ついてないものもあります)は、加藤先生が32歳の時に書かれた文章だということが、「種明かし」されています。「1冊あたり1円の印税」と提案したけれども、買い切りの原稿料になったと、書いておられます。
・・1冊につき1円というあの冗談が実現していたら、私はかなりの資産家になっていたにちがいない。でも、そんなことはどうでもよい。こうして50年をこえて、なおじぶんの書いた文章が数々の名著の末尾にかかげられていることこそ、わたしにあたえられた最高の報酬だと思っている・・

慶応大学で講演

今日は午後から、慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所で、講演でした。「復興リーダープロジェクト」です。公務員、NPO、企業、マスコミなどの社会人が、受講生でした。それぞれ復興に関与しておられる人ばかりで、かつ土曜日に勉強しようという意欲のある人なので、話は早いです。
逆に言うと、通り一遍の「復興の現状と課題」をお話しするだけでは、要望に応えられません。私が考える「今回の復興の難題」「復興から見た日本の行政や社会の課題」を、大胆に切り込んでお話ししました。
質疑も活発で、合計2時間半かかりました。

講演の記録

全国に散らばった避難者への情報提供

宮城県では、情報誌(ちらし)の「みやぎ復興プレス」を発行しています。これは、被災者や県外避難者に、宮城県の復興状況や被災者支援情報などをお知らせするものです。
それを、みずほ銀行が、全国の支店のロビーに置いてくださっています。このような協力もあります。紹介が遅くなって、申し訳ありません。
発災直後は、全国のコンビニが協力してくださって、店舗に「全国に散らばった避難者の方に、避難元自治体への連絡を呼びかけるポスター」を貼ってもらいました。