今日の放課後に、入校中の女性学生さんたち(第1部第2部特別課程)と、懇談する機会がありました。私は最近、自治体現場から離れているので、このような生の声は、勉強になります。皆さん中堅どころになっておられ、また自治大に入校するくらいの優秀な方々です。約30人のパワーに、圧倒されました(失礼)。
私生活や家庭でも、いろいろとご苦労をされています。それはさておき、職場でのご苦労を聞きました。多かったのが、一つには、窓口でのクレーマー対応、執拗な苦情電話の対応、モンスターペアレントです。もう一つは、職場でのうつ病職員、コンプライアンス違反への対応です。おわびの記者会見設営のプロも、おられました。児童虐待、定住外国人特にその子どもたちへの支援など、地域の困難もありました。多くの人が、それぞれに苦労しておられます。
住民の多くは、根拠なき思いこみや、一部の不届き者をみて、「地方公務員は楽な職場だなあ」と思っておられます。そんなことはないのですがね。私たちのPR不足なのでしょうか。また、職場の恥は外に出したくない、苦労は言わないという美徳を、守っておられるのでしょうか。
自治大学校での授業も、これら「職場と地域の困難」に力を入れつつあります。法制度や知識を授けるだけでは、実践的幹部研修にならないと、私は考えています。
月別アーカイブ: 2010年9月
週末の講義準備と原稿書き
自治大学校、学生による評価
自治大学校では、教授たちの担当時間をもらって(削減してもらって)、私の講義を入れたりしているので、ますます忙しくなっています(自業自得)。しかし、自治大のカリキュラムを見渡すと、抜けている部分があって、どうしてもお話ししておきたいのです。
自治大でも、学生による講師の評価があります。消防大学校では5段階評価でしたが(2009年12月11日)、自治大は3段階評価です。といっても、学生の満足度や理解度を測ることに、違いはありません。また、ほかの講師と比較されることも、同じです。東大を始めとする一流の教授や研究者と、比べられるのです。
先月行った校長講話の、学生による評価が、報告されました。それを見ると、ほとんどの学生には、私の言いたいことが伝わっていて、ほっとしました(全員ではないことに、反省)。教育内容の水準を保つためには必要な評価ですが、しゃべる者にとっては、心臓に悪いですね(笑い)。
このほか、モニターテレビで、私の授業を見ていた教授たちから、「校長、今日の講話は、脱線が多かったですね」と批判されたり。「講話は、入校したばかりの学生に心構えを説くとともに、緊張を解いてもらうためだよ」と反論しました。講義は、そうはいきません。
まだまだ知らない隣国
韓国の躍進が素晴らしく、いろんな分野で日本が負けるようになりました。それによって、徐々にですが、韓国についての報道も増えてきました。9月2日の朝日新聞オピニオン欄は、「走る韓国」という特集を組んでいました。興味深いことが、いくつも紹介されていました。
韓国の人口は、4,800万人。日本の約4割です。国内市場が小さいので、海外へ出て行く戦略です。金美徳教授は、日本企業はモノ作り指向経営であるのに対し、韓国企業はマーケティング指向経営であると指摘しておられます。それが、海外市場で勝った理由の一つです。大学進学率は80%を超え、教育への投資や競争も激しいです。1997年のアジア通貨危機で、GDPが4割も減った経験が、競争を激しくしたのでしょう。
一方、負の面も指摘されています。出生率は世界最低水準で、国民皆年金になったのは1999年だそうです。競争が激しいので、一流企業でも失敗すればすぐ解雇、社内競争に敗れた人も次々退社するので、事実上50歳代前半が定年とのこと。
私たちは、これまで近隣諸国のことを、知らなさすぎました。世界史で西欧の歴史上の人物はたくさん習いますが、アジアの人物はほとんど知りません。アメリカ人やイギリス人なら10人くらいすぐ名前を挙げられますが、韓国人を10人挙げることができる人は少ないのではないでしょうか。
最新の事情を勉強する際も、欧米中心でした。しかし、今やアジアが日本と同等の経済発展をしつつあります。しかも、いくつもの分野で、日本を追い抜いています。もっと、現在のアジアを勉強すべきでしょう。
行政の分野でも、日本と韓国は比較が簡単な国同士です。省庁再編も、日本より後に着手して、日本より先に実行しました。行政の電子化も、韓国の方が進んでいます。
先日から、少し調べていることがあります。韓国の公務員削減です。1997年に経済危機になったこと、金大中大統領になったことを契機に、中央政府と地方政府の大胆な人員削減を行いました。正確なところはわからないのですが、何人かの人に聞くと、教育職と公安職を除き、約1割の削減をしたようです。もちろん、韓国にも公務員の身分保障はあります。しかし、GPPが4割も減るという非常事態で、それも言っておられなくなったようです。「中核的一般職は解雇されなかった」という話もありますが、ある人に聞くと、組織ごとに削減人数が決められ、解雇される人が指名されたとのことです。「職場は暗くなった」とおっしゃっていました。年齢の高い人は解雇された後、復職せずほかの職業に就いていると、おっしゃっていました。
近くても、知らないことが多いです。
見込み違い
9日の朝日新聞環境欄が、ごみの管路収集を取り上げていました。管路収集とは、地下に張り巡らせたパイプを使い、街中のごみを真空ポンプで集める仕組みです。例えば、東京のお台場では、内径60センチ、延長15キロの管の中を、ごみが時速90キロで飛び交うのだそうです。
こうすることで、朝のゴミ出しが不要になり、収集車も要らなくなる、きれいで便利になると、期待されました。「未来都市」の「夢のごみ収集」と呼ばれたのです。
ところが現在は、お台場では、一日300トンを集める能力がありながら、使われているのは11トンです。その他の地域でも、同じようです。順次、廃止されているようです。
なぜ、こうなったか。資源ごみの分別回収が普及して、捨てられるごみの量が減ったのです。また、この仕組みだと、ごみが目に見えなくなり、分別が進まなかったとの批判もあります。よかれと思って企画したのですが、失敗に終わりました。
人間の知恵とは、この程度のもの。担当者は、悪気があって事業を進めたのではないのでしょう。負の影響や時代の進展を予測するのは、難しいということです。「税金の無駄遣い」と批判されそうですが、新しい技術の導入には、失敗もあります。