日本が、世界第2位の経済大国になるまで、経済規模の拡大とともに、企業は発展しました。そこには、国内での競争があり、社会も活き活きとしていました。しかし、日本が世界第2位の経済大国になった時、そこで次なるフロンティアを目指したかどうか。それが、企業にも日本社会にも、分かれ道になったというのが、私の仮説です。
個人にしろ企業にしろ、発展するためには、(内に)高い志を持つか、欲望を持つか。(外で)他人と競争するか、強制されるか。いずれかが必要です。
海外を目指した企業がさらに発展し、国内に閉じこもった企業は、そこで発展を止めました。もっとも、その時点で、直ちにダメになったのではありません。1億人という国内市場があるので、そこそこ発展します。しかし、ダイナミズムは失われ、さらに海外企業が入ってきた時に、負けてしまうのです。
それと同様に、日本社会をリードしていた「業界」が、世界を目指さず、国内に閉じこもったことが、日本社会の停滞を招きました。代表選手が、「銀行」「政治と官僚」「マスコミ」の3つです。これらは、戦後の日本の発展に、大きく寄与しました。しかし、世界第2位の経済大国になった時、そこで安住してしまったのです。引き続き、国内では威張っていながら、海外で勝負しなかった業界です。
「銀行」は、日本の企業・産業の代表として、挙げました。もちろん、単なる企業の一つではなく、金融という「血管」を通して、日本の金融構造を決めていました。規制によって、守られていた業界の代表です。バブルの時に海外に大きく出ていきましたが、うまくいきませんでした。そして、金融自由化が進むと、安心だといわれた銀行が、いくつも倒れました。
「政治と官僚」は、今回の議論の中心です。もちろん、政府は主権国家であり、通常は、国境を越えて働くことはありません。しかし、国際社会での議論に、積極的に参加するのかどうか。議論を、リードするかどうか。国際政治の世界もまた、世界市場と同じく、競争の世界です。そこでの競争が、日本政治を活性化します。
もちろん、「そんなことをしなくても、国内政治は活性化する」とおっしゃる人もあるでしょう。確かに、新しい課題を取り上げ、解決していくことが、国内政治を活性化します。しかし、過去の成功に安住すると、新しいことに取り組まない。また、既存の仕組みを変えないように、なるのです。予算や人員の配分を、変えようとはしないのです。
繰り返します。個人と同様に組織も、内に高い志を持つか、外で競争するか。発展するためには、いずれかが、必要なのです。フロンティアという言葉は、それを示しています。