構造的権力

谷口智彦『通貨燃ゆ』(日本経済新聞社、2005年)p54以下に、スーザン・ストレンジ(イギリスの経済学者)の考えである「構造的権力と関係的権力」が、引用されています。
・・関係的権力とは、甲が乙をして、無理やり甲の意図通りのことをせしめる力を言う。それに対して構造的権力とは、物事がどんなふうに起きていくべきか、決める力を言う。国家が国家と、人間集団や企業集団と、どんな関係を結ぶかその枠組みを形づくる力を言う
それが露骨な権力の行使であることを意識しないまま、させないまま、ある種の行為へと人を導いていく枠組みというものが世の中にはある。そういう枠組みの中にいったん入れてしまえば、後は当人たちが自発的に求められる行動を取ってくれるから、あえて力を行使する必要すらない。そんな枠組みをつくり、維持する力こそは、構造的権力である。
具体的には、英語メディアが世界を覆う状況、ドルが基軸通貨であることなどです。

通説による思いこみ

15日の諮問会議、民間ベストプラクティスでの「結果重視」「目標による管理」をめぐっての記者さんとの会話。
全:霞ヶ関に100ほど局があるんだけど、そのうちいくつが予算の獲得と執行を主たる仕事にしているかなあ。
記:予算が主な仕事は、公共事業の国交省と農水省、社会保障の厚労省が代表ですね。それに対し、外務省(ODAを除く)、法務省、経産省だって中小企業庁以外は、アイデアで勝負ですよね。案外少ないのではないですか。
全:そうだよね。総務省の多くの局や内閣府も、予算なんてほとんどない。
記:政・官・業の関係を指して、「鉄のトライアングル」と言いますよね。政が官をして補助金や事業を出させ、受け取り手である業界が政に票と政治献金を出す。でも、そうしてみると、このトライアングルって、霞ヶ関の一部かも知れません。
全:そうだよね。補助金や事業だけでなく、規制という手段もあるけど。鉄のトライアングルは正しい指摘だけど、それがすべての霞ヶ関ではない。しかし、ある部分に貼ったラベルが独り歩きして、僕らもマスコミも、全体がそうだと思いこんでいるのかも知れない。
記:4月4日に発表された「成長力強化への早期実施策」も、予算や金目が主な内容ではなく、もっとソフトな政策や制度などでした。私たち記者も、予算が行政のすべてだと、思いこんでいるのですね。その頭で記事を書いてしまうから。
全:国会の予算委員会って、ほとんど予算は議論していないよ。外交、安全保障、政治のあり方が主だものね。僕の持論だけど、予算が行政だという発想は、発展途上国の思想だね。

国と地方の責任の取り方の違い

16日の読売新聞に、山田啓二京都府知事の「国の出先機関の統廃合。分権の目玉、政治主導で」が載っていました。
・・道路特定財源をめぐって国政が混乱している。だが、冷静に考えてみると、この国の将来にかかわるもっと本質的な問題が忘れられているように思える。この国は、衆参両院がねじれただけで、住民生活まで混乱してしまう。地方は陳情を重ね、政党は世論調査結果に一喜一憂する。地方財政や国民生活を人質にするような異常な状況で、果たして冷静な政策選択ができるのだろうか。国民に遠いところで議論せず、住民が受益と負担を考えて選べる仕組みに、なぜならないのか。道路財源を、マッサージチェアや職員旅行に使っていた例があった。地域生活を左右する大切な税金の使い道を、住民の付託を受けていない国の出先機関や外郭団体が握っていていいのだろうか。
こうした問題を解決するために行う改革が、地方分権だと思う。もちろん、地方自治体がすべて健全かと問われれば、ここ数年、地方も多くの不祥事を起こしてきたので、大きなことは言えない。しかし、地方自治体は常に住民の目にさらされ、住民の監視を受ける仕組みがある。もし、社会保険庁長官が地方公務員だったら、おそらく今ごろは何十億円かの賠償を求める住民訴訟を起こされているだろう。国とは違って、地方自治体には責任を取る体制がある。
各政党は、この(出先機関)改革こそ政治主導が必要だということを忘れて欲しくない。道路特定財源などに向けられる国民の不信を、表面だけでとらえず、改革が必要な根底の問題解決を先送りしてはならない。
詳しくは、原文をお読みください。インターネットでは、読めないようです。

福田総理の分権指示

15日に閣僚による分権本部が開かれました。NHKニュースによると、次の通りです。
・・・福田総理大臣は「現時点での各省庁の対応は地方分権改革を推進する観点から不十分だといわざるをえない」と述べました。そのうえで、福田総理大臣は「国と地方の役割分担のあり方を見直し、権限などの移譲を進めることは、きわめて重要だ。改革の実をあげられるよう、各閣僚は政治家としての判断を明確に示し、地方分権改革に向け、しっかり取り組んでもらいたい」と指示しました・・・

予算重視から結果重視へ

15日の経済財政諮問会議では、ムダ・ゼロ政府を目指してで、民間ベストプラクティスの導入が取り上げられました。有識者提案が、興味深いことを指摘してます。
・・企業と官庁との大きな違いは、企業が結果主義であるのに対し、官庁が予算主義だということである。官庁は予算の獲得に力を入れ、その予算を使い切ることを重視する。国民からすると、結果が重要である。仕事の結果や効果を、国民に「見える化」する必要がある。
・・予算の効果が誰に及んでいるのかを、ホームページで国民にわかりやすくする。
・・政策評価は導入されており、職員の目標による評価も実施されるが、政策と職員の評価が、組織評価につながっていない。民間企業では、企画・管理部門でも目標管理制度が機能している。役所では、多くの組織で年間の業務目標が決められていない。各局各課で年度初めに年間の目標を決め、終了後に達成度を評価すべきである。
原文をお読みください。