審議会と省庁折衝・政策の決まり方

先日、中教審に関して「省庁間の調整」を書きました。朝日新聞の4月19日社説が、「教育基本計画―中教審はどうしたのか」を書いていました。
・・教育現場が抱える課題は多い。とくに深刻なのは学力低下問題だ。学力格差をどう縮めるか。考える力をどう育むのか。そのためには、教師の数や質の向上が欠かせない。 だから、この答申で最も注目されたのは、教員を増やすなど予算のかかる措置が具体的にどう描かれるかだった。日本の教育への公的支出の割合は、先進国のなかでも低い。教育への投資は、日本の教育を底上げするには避けて通れない課題である。 ところが驚いたことに、答申には具体的な提言が見あたらないのだ。
どうしてこんなことになったのか。答申には、財政措置の必要性にさらっと触れたのに続いて、こんな一文がある。「しかしながら、国の財政状況は大変厳しい状況にあり、これまでの歳出改革等の改革努力を継続する必要がある」。まるで財務省の審議会の答申かと見まがう内容である。
委員の片山善博・前鳥取県知事が「あまりに財政当局に近い内容で、省庁折衝の結果と答申が同じなら審議会はいらない」と怒ったのも当然だ。答申づくりにあたって、文科省と財務省などとの事前折衝が行われ、財源の見通しがない具体策は盛り込まぬようタガをはめられた、ということのようだ。しかし、官僚たちの言い分を土台にして答申をつくるのでは、審議会で議論する意味がない・・

民間ベストプラクティス

15日の経済財政諮問会議の議事要旨が、掲載されました。民間ベストプラクティスに関する議論の、いくつかを抜粋します。残りは、原文(p6~10)をお読みください。
(丹羽議員)
毎年1%の削減は節約であり、5年間で5%というのが官庁では普通のことだが、民間ではそれは改革と言わない。改革というのは、2割、3割削減すること。5%の削減が大変だというが、それは現状を前提としての削減をするからであり、3割削減するためには、仕事のやり方、仕事そのものを見直していかなければいけない。
・・まず企業と官庁との大きな違いは、企業が結果主義であるのに対し、官庁は独占企業体であること。競争原理が非常に働きにくい予算主義だということ。官庁は予算の獲得に力を入れ、その予算を使い切ることを重視する傾向がある。国民からすると結果が重要であり、仕事の結果や効果を国民に見えるようにすべきである。
・・例えれば公務員は従業者で、内閣が経営者あるいは取締役会。公務員をうまく使って最大限の効果を出すのは、経営者である内閣と上級幹部の責任である。内閣と上級幹部のリーダーシップを期待している。同時に、国民は株主であり、株主である国民への情報開示を徹底することが、国民本位の「ムダ・ゼロ」政府実現をすることになるだろう。
(御手洗議員)
仕事のたな卸しについて。企業が業務改革をする場合には、まず、一つひとつの業務を分析し、徹底的に無駄な作業を洗い出し、業務の流れをできるだけシンプルにすることから始める。その際、企業でも、仕事のやり方を変えるということにはとても大きな抵抗があり、多くの場合、外部の専門家の方に社内で業務監査を実施してもらうことが大変有効な手段であると、経験上感じている。
(増田議員)
目標管理、MBOの関係であるが、少なくとも足元の総務省できちんとこうしたことが行われているという実態とはほど遠い。ただ、これは官民で違いがあるわけではなく、大きな組織であれば、必ず組織として行っていかなければならないものである。私も以前、知事をしていたときには、毎年度、当初に部長と課長からきちんと文章にした紙をもって、年度末には個別に面談して評価していた。こうしたことは、組織として徹底していかなければならない。御指摘を十分踏まえ、どう実行させていくのかについて、少し中で検討したい。

第2回目の授業

今日は、2回目の授業。大学の前のハナミズキは、早くも白やピンクの花を咲かせています。
教室に行って、びっくり。前回より受講生が増えて、教室がほぼ満員状態でした。出席表では、100人近くになりました。資料は、80部しか刷っていかなかったので、もらえない学生が出ました。第2回目は第1回目より、受講生が減るだろうと予測していたのです。観客が増えるとうれしくて、元気が出ますねえ。もっとも、来週には減っているかも。しかも、早々と小レポートを、連休の宿題に出したので。資料を受け取れなかった学生諸君。ごめん。来週に、今日19日分と先週12日分を追加配付します。
以下、授業の補足です。
今日の授業で紹介した、人口ピラミッドは「日本の人口」、経済発展は「戦後日本の経済成長と税収」のページに載っています。経済財政諮問会議関係は、「経済財政」「4月1日諮問会議」「使い勝手の悪いIT」「15日諮問会議」「民間ベストプラクティス導入」を見てください。中教審をめぐる話は「省庁間の調整」「朝日新聞4月19日社説」を読んでください。なお、先週の授業で紹介した、私の資料整理術は、「知的生産の技術」に載っています。

2008.04.18

今日、毎日新聞社の「エコノミスト賞」授賞式に行ってきました。赤井伸郎大阪大学准教授が『行政組織とガバナンスの経済学』(有斐閣)で、2007年度のエコノミスト賞を受けられたのです。先生からお誘いがあり、参加しました。先生の奥さんと息子さんも出席され、晴れやかでした。

各紙の解説

18日の朝日新聞は、「分権推進委員会、格上げ討議でも不発」を伝えていました。これまで各省の部長級を相手に議論してきましたが、局長級を呼んで権限移譲を迫る公開討議を始めました。しかし、前進せず、丹羽委員長は「あまり実りがなく、ぱっとした回答がなかった」と語っておられます。詳しくは、記事をお読みください。
また、毎日新聞は18日の社説で、
「ゼロ回答にもほどがある」を書いています。・・これまでは中央省庁の抵抗が目立ち、丹羽宇一郎委員長が「頭にきている」と批判する事態だ。福田内閣が官僚に足元を見られている表れではないか。同委はひるまず勧告に踏み切り、福田康夫首相に実現を迫るべきだ・・