9月4日の日経新聞、ロビン・ハーディング、ファイナンシャルタイムズ・アジア・エディターの「放蕩か高齢か貧乏か 日米欧、ましな借り手は」から。
わかりやすい表現です。「多くの国では政府が大盤振る舞いを約束する一方で、経済はそれを支える力を失いつつある。しかも、こうした厳しい現実を有権者に突きつける政治的意志はほとんどみられない」という記述が肝ですね。
・・・あなたがある銀行の融資審査委員会の委員長で、3件の案件が審査に上がってきたとしよう。次のうち、どの相手に融資するのがよいだろうか――。
1件目の借り手は起業家として成功したものの、どこかで道を踏み外したようで、パーティーや薬物に途方もなく浪費する放蕩(ほうとう)者で、このライフスタイルを維持するのにもっと現金が必要だという。
2件目の人物は実業家で、高齢ではあるが評判はよい。莫大な借金を抱えながら、まだ散財する計画を立てているが、多くの資産を保有し、勤勉さでも定評がある。問題は今後、どこから収入を得られるのかという点だ。
3件目は威厳のある大邸宅に住む貴族だ。ただ、かなりの借金を抱えており、子どもの教育費や馬の維持費、屋根の修理代など出費も非常に多い。邸宅は外から見た目はよいが、部屋の中は寂しく、持ち主が今後どれほど稼げるか疑わしい。
これら3つの借り手は、先進国の財政状況が軒並み悪化するなかで、世界の投資家がどこに資金を振り向けるべきかという選択を象徴している。
候補1は米国だ。国内総生産(GDP)の6%近くに相当する財政赤字を抱えているが、その大きな理由は「増税などアメリカらしくない」という発想をしている以外に見当たらない。しかも、その状況を改める計画もなければ、どうやら改めるつもりも全くなさそうだ。
候補2は日本だ。巨額の公的債務を抱える一方で、人口の高齢化が進んでいる。しかも長年にわたるデフレ問題を克服したにもかかわらず、財政赤字を続けるという奇妙な決断を下した。もっとも日本の場合、政府も国民も多くの資産を保有している。
候補3は欧州だ。債務国が多く、中でもフランスやイタリア、英国などは債務レベルが高い。欧州では少なくとも建前上は公的債務や財政赤字は抑制すべきだ、との注意喚起がなされている。しかし、多くの国では政府が大盤振る舞いを約束する一方で、経済はそれを支える力を失いつつある。
しかも、こうした厳しい現実を有権者に突きつける政治的意志はほとんどみられない。
各国債の利回りは上昇傾向にある。30年物国債の利回りは日本が4%を超えており、米国と英国は5%台と、債務を抱えるすべての国には例外なく財政上の圧力が強まっている。
各国は自国の財政問題と、それを招いた政治家たちの放漫ぶりを嘆いている。いずれの国も2008年の世界金融危機以降、公的債務が大幅に増加しており、特にコロナ禍以降に増加した・・・
・・・日本は長年にわたり巨額の公的債務を抱えており、そのため日本は世界でも例外的な存在だとみなされてきた。とはいえIMFによれば政府が保有する金融資産残高を差し引いた純債務は26年末にGDP比で134%になることが見込まれ、ほかの先進国とそれほど大きな差はないように見える。
日本が直面する財政問題で最もやっかいなのが、容赦なく進む人口の高齢化だ。これにより医療や年金にかかるコストが毎年膨らみ続ける一方、それを負担する生産年齢人口は減る一方だからだ。
現在、日本には財政問題に取り組む好機が訪れている。デフレからインフレに転じたおかげで、ゼロ金利時代に借りた債務の価値が目減りしている。だが、高市早苗首相は不必要な歳出拡大を進め、この絶好の機会をみすみす棒に振る決意を固めているようだ。もっとも、それらの歳出は少なくとも手厚い福祉で固定化される経費ではなく裁量的なものだ・・・