慶応大学での講義

2007年4月から、慶応大学法学部で非常勤講師を勤めています。
2007年度春学期は行政学特論Ⅰ「行政管理論」秋学期は、行政学特論Ⅱ「地方自治論」です。2008年度春学期も、行政学特論Ⅰ「行政管理論」です。
2010年秋学期も出講することになりました。

2017年、2018年はこちら

2007年春学期
行政学特論Ⅰ「行政管理論」土曜日第2時限(10:45~12:15)

授業科目の内容
日本の統治において、執政(executive)を担うのは内閣(政治家)であり、執行(administration)を担うのは各府省(公務員等)です。地方にあっては、前者は首長で、後者は市役所などです。つい最近まで、日本の公務員は世界一優秀であると評価されていました。それが近年、大きな批判にさらされています。その一つは官僚の失敗と呼ばれるものであり、もう一つは官僚主導への批判です。なぜこのように、評価が急激に変化したのでしょうか。ここに、行政と官僚だけでなく、それを包含した日本の政治や社会の転換が表れているのです。
この講義では、従来型の行政管理論にとどまらず、転換を求められている日本の官僚制と行政について、同時代的視点から分析します。(以上、シラバスから)
このように、これまで東大大学院や一橋大学大学院で講義した「日本の行政の成功と失敗」を基本に、改めて、現在日本の行政の問題と官僚の役割を考えてみます。日々報道されるように、日本の行政には、次々と問題が生じています。また、私は昨年から、内閣府(経済財政諮問会議の事務局)と内閣官房(再チャレンジ支援)に勤務しています。その経験から、最近の動きも含めて、同時代的問題を具体的に、お話ししたいと考えています。

授業予定
4月14日 講義の狙いの説明。はじめに(行政管理論、私の視角)
4月21日 (私の視角)続き。第1章日本行政の成功と失敗(1私たちの成功)
4月28日 (休講)
5月12日 第1章(2私たちの失敗)。宿題提出日。
5月19日 宿題講評。第1章(3政治と行政の評価)。第2章行政機構と官僚制(1官僚制とは、二つの批判)
5月26日 (休講)
6月 2日 (早慶戦で休講)
6月 9日 第2章(3日本の行政機構)
6月16日 第2章(2官僚の失敗への批判、4官僚制の限界、5責任の所在と対応策)
6月23日 第3章行政改革(1行政改革の分類、2行政改革の進化)。レポートの課題発表
6月30日 第3章(3行政構造改革)。第4章政治の役割と行政の役割(1政治と行政)
7月 7日 第4章(2政と官、3与党と内閣)
7月14日 第4章(4政治の役割)、第5章転換の方向終わりに

配付資料
レジュメ p1~4(4月14日)、p5~7(4月21日)、p8~11(5月12日)、p13,14(6月23日)、p16、17(6月30日)、総目次(7月14日)
資料 1-1、1-2(4月14日)、1-3~1-6(4月21日)、1-7(5月12日)、1-8、2-1~2-5(5月19日)、2-6~2-10(6月9日)、3-1~3-8(6月23日)、4-1、4-2(6月30日)、拙稿「再チャレンジ支援施策に見る行政の変化」(7月14日)
パンフレット 「ここまで進んだ小泉改革」(4月21日)、日経新聞小冊子、朝日新聞小冊子2種類(5月12日)、人事院案内、内閣府案内、総務省案内、国家公務員受験案内(5月19日)

成績評価
平常点(出席状況)とレポートにより、評価します。

参考
同時期に、平井文三講師(総務省)が、「現代日本行政論」を講義される予定です。そこでは、日本の行政の仕組みや制度について、理論的に解説がなされると聞いています。また、秋学期は、行政改革を取り上げるとのことです。それに対し、私の講義では、現在の日本の行政、特に官僚を中心に、成果と問題点を明らかにします。その際には、日本の政治、社会、経済といった、広い視点から分析します。

参考書
拙著「新地方自治入門-行政の現在と未来」(2003年、時事通信社)は、東大大学院での講義録を加筆したものです。この本は、地方行政から日本の行政を分析したものですが、今回の講義内容と視点は同じです。
また、このホームページにこれまで書いた、さらに書き続けている「日本の行政」、特に「政治の役割」「政と官行政機構」「官僚論」(それぞれ増殖中)が、参考になります。

地方分権改革推進委員会の道筋

4日の日経新聞社説は「首相主導で地方分権実現を」、朝日新聞社説は「丹羽流で役所に切り込め」でした。それぞれ、分権への応援をしてくださり、ありがとうございます。しかし、これらの社説を読んで、今一つパンチがないと感じたのは、私だけでしょうか。第一次分権(前回の諸井分権委員会)と三位一体改革、さらには結果を出せなかった西室分権会議を経験して、この10年間で多くの知識が得られました。それは、次のようなことだと思います。
1 分権は、民間有識者が提言しただけでは進まないこと
有識者会議が提言し、霞ヶ関が同意する内容は、すでに実現しました(昨日の西尾先生の記事)。
2 官僚に任せていては進まないこと
これは、三位一体改革の過程と結論が示しています。地方団体の提言に対し、霞ヶ関は徹底して抵抗しました。小泉総理の指示にも、抵抗しました。
3 分権は行政改革でなく、この国のかたちを変えることであること
中央集権の担い手は、官僚であることが、三位一体改革の過程でよく分かりました。地方団体が「いらない」といった補助金を、各省が「受け取れ」と主張するのですから。これまで日本国の企画部であった官僚が、分権では機能しないだけでなく、抵抗勢力になります。三位一体改革の補助金廃止は、地方団体が提言し進みました。
4 政治主導でないと、総理が主導しないと進まないこと
三位一体改革は、審議会なしで進みました。それは、総理が指示を出し、片山総務大臣・麻生総務大臣が知恵と技を出されたからです。
これらについては、これまで新聞も指摘したことです。私は、「続・進む三位一体改革」に整理しました(うーん、やっぱり単行本にしておけば良かったですね)。これを踏まえると、今回は、分権のうち具体的に何に取り組むのか、それはどのような工程で進めるのかが、重要なのです。残念ながら、これらの社説では、それが見えてこないのです。

貿易量と情報量

3月27日の経済財政諮問会議「アジアゲートウェイ」の審議の中で、菅総務大臣が世界貿易の流通量と情報の流通量を比較して、次のように述べておられます。
資料1ページ目の右上に「世界の貿易流通」がある。5,830億ドルが北米と欧州である。北米とアジアが7,820 億ドル、アジアと欧州が7,250 億ドルであり、大体均衡がとれている。しかし、情報の流通では、欧州と北米が669Gbps、北米とアジアがその半分であり、アジアと欧州はその28 分の1である・・・
アジア・北米・欧州間の貿易量が、ほぼ同じということも驚きました。アジアは、そこまで大きくなったのですね。それに比べ、情報の流通量が28分の1とは、これまた驚きです。これから、モノやカネ以上に、情報が価値を持つ時代になるでしょう。すると、この差は大きいですね。

国家公務員の配置転換

国家公務員の本格的配置転換が、始まりました。まず、約700人が、食料管理・農林統計・北海道開発局から、刑務所刑務官・国税職員などに配転になりました(3日付け読売新聞ほか)。慣れない職場で苦労される方もおられると思います。また、何人かの方は、引っ越しもあったと思います。
このHPでも指摘しましたが、地方団体や民間企業では当たり前に行われてきたことが、これまで行われていなかったのです。今後、行政の役割変化に従って、さらなる配置転換が必要になると思います。かなり以前から、予想されていたはずなのですが。
かつて、公共事業部局の人事担当の先輩に、「将来、事業が減って、職員数削減が必ず来ますよ。後輩のためにも、採用人数を減らした方が良いのではないですか」と言ったら、「全勝は簡単にそういうけど、私の代に人数は減らせないよ」と言われたことを思い出しました。

官僚の国会待機

丹羽宇一郎伊藤忠商事会長が、日経ビジネス3月26日号に「官僚深夜待機への疑問」を書いておられます。
国会開会中、大勢の官僚が午前1時、2時といった深夜まで、待機を余儀なくされている。翌日の質疑に必要な答弁を、書くために残っている。いったい官僚に徹夜させるほど急を要する質問が、どれほどあるのだろう。突発的な事態を除いて、前々日までに質問を出さない場合は、国会で答えない。必要ならインターネット上で解答するなど、国民が見られるようにすればいい・・・