カテゴリー別アーカイブ: 行政

行政

自治体賃金、女性平均低く 

3月28日の読売新聞解説欄に「自治体賃金 女性平均低く 男性の8割未満71% 多い非正規 少ない幹部」が載っていました。

・・・都道府県や政令市など主要121自治体の多くで、女性職員の平均賃金が男性の8割に満たないことが読売新聞の集計で明らかになった。女性職員に占める非正規雇用職員の多さと幹部登用の少なさが主な原因だ。都道府県や市区町村は、国と共に女性活躍の旗振り役とされ、改善への取り組みが必要だ。

女性活躍推進法に基づく改正内閣府令で、自治体は2023年度から、賃金格差について公表を義務づけられた。だが大半の自治体はウェブサイトの探しにくい箇所に公表している。
読売新聞は23年8~9月、都道府県と政令市、県庁所在地、東京23区の計121自治体に、22年度の非正規職員を含めた男女間の職員の賃金差と、背景要因などを書面で尋ねた。その結果、71・9%にあたる87自治体で女性の平均賃金が男性の8割に達していないことが分かった。

要因を尋ねた選択回答式の設問に対し、9割近い106自治体が、非正規雇用である会計年度任用職員として働く女性の多さを回答した。次いで半数を超す68自治体が「管理職への登用の少なさ」を選んだ。

会計年度任用職員は地方公務員特有の職種だ。総務省の20年度調査などによると、地方公務員の2割弱(約62万人)を占め、その8割弱が女性だ。
この職種は民間のパートタイムやアルバイトに比べ、休暇制度や福利厚生が充実しているとされる。家庭などを優先したい人には利点があるが、あまり昇給を見込めず、自分の得意分野を生かして働きたい人には物足りない面もある・・・

詳しくは記事を読んでいただくとして。時代が進んだことを実感します。30年前までは、女性は補助的業務に従事し、結婚したら退職、非常勤職員は女性、幹部に女性はいませんでした。1946年に日本国憲法が男女同権を定めたのですが、実態はこうだったのです。日本社会と国民の暮らし、そして意識は、急速に変化しつつあります。まだその途中ですが。

公文書、政治の介入許すな

3月26日の朝日新聞オピニオン欄に、福田康夫・元首相の「国民のための公文書 歴史の生の記録は国家形づくる石垣、誠意の介入許すな」が載っていました。

・・・「その一つ一つが、国家を形づくっている石垣です」。公文書管理法の生みの親ともいえる福田康夫元首相は、公文書を城の石垣にたとえる。相次ぐ改ざんなどで、その石垣が揺らいでいる。国民共有の知的資源で、説明責任が求められる公文書。適切な管理に最も重要なことは「政治を介入させないこと」だと話す・・・

―なぜ公文書問題に取り組んだのですか。
「国家として歴史の事実の記録をきちんと残していく。それは当然のことです。事実を知ることは民主主義の原点、民主国家の義務です。しかし、その基礎となる法律が日本にはなかった。民主主義国家として恥ずかしいことです」
「米国の公文書館には国の歴史が詳細に保存され、それを国民が容易に見ることができる。国家がどのような歴史を経て今の形になったのか。事実の積み重ねを具体的な生の記録を通じて知ることで、歴史の事実を実感をもって理解してもらうことができる。それが、国民の国家への信頼につながり、対外的な信用も生まれる。その記録の豊富さ、閲覧のしやすさなどに驚かされました。日本にもこういうものをつくらないと、と痛感しました」

――公文書を見ればその国がわかるということですか。
「小さい事実、歴史の記録の一つ一つがお城の石垣のように積み上がって国家を形づくっている。その石垣が公文書です。公文書を通じてその国がどういうものかが読み取れる。その国がどんな歴史を経て今に至ったか、その姿を後世にきちんと引き継ぐ、その基礎となります」

―政治の責任はどうですか。
「大きくいえば、政治の責任です。きちんと記録を残すよう関係省庁に促したのかどうか。記録がないと、後々検証ができません。検証できなければ、教訓を後世にいかすこともできません。今回の裏金問題も同じ構図といえます。なぜ、このようなシステムができあがったのかを解明し検証しないと有効な対策がとれない、と野党が国会で追及している通りです」
「最も極端なケースは、敗戦直後に各省などで資料が一斉に焼却されたことです。戦争責任の追及を恐れた政治指導者が、責任追及を回避するために証拠隠滅をはかろうと指示したものでした」

――第2次安倍政権では、公文書改ざんが明らかになりました。
「事実を正しく記録したものでなければならない。その公文書が偏っていたり、事実と違っていたりしたら、国民にも、対外的にも信用されなくなります。改ざんがいけないのは公文書に限ったことではありませんが」

―財務省の公文書が改ざんされた森友学園問題がそうでした。
「官僚は、上から評価してもらうため、自らの身を守るために忖度して行動しがちです。内閣人事局ができたことで官僚に対する官邸の人事権が強まったこともその傾向を強めています。文書改ざんは過度に忖度したということでしょう。そこには政権が強力で長続きしそうだという判断も恐らくあったと思います」
「政治家が常に心しなければならないのは、権力行使は最低限にとどめなければいけないということです。権力者が長くその地位にとどまることは、決して好ましいことではない。そのことを政治家が自覚すべきです。官僚機構も同じです。要職に長くとどまると、新たな権力構造が生まれやすくなります」

――権力は腐敗すると。
「腐敗しがちだということです」
「中立性、公正性を保つには、公文書館は内閣から独立した存在にすることも改めて考えるべきでしょう。内閣だけでなく、三権に対して強い権限を持つ必要があります。たとえ政府や国家にとって都合が悪いことでも、事実を記録して公開する。それが国家としての信頼につながります。そのためには、政治を介入させないことが何より重要です」

日本版○○、劣化コピー

3月25日の日経新聞に「日本の観光司令塔「DMO」、看板倒れ 人や金に制約」が載っていました。
・・・国が観光立国の旗振り役として期待する観光地域づくり法人(DMO)の存在感が乏しい。地域の観光戦略の司令塔として300近くが登録されたが、人材や財源が足りず、自治体と事業が重なるといった課題がある。新型コロナウイルス禍後の訪日客急増でオーバーツーリズム(観光公害)などの弊害が表面化する中、実効性を高める取り組みが急務だ。
「予算を効果的な取り組みに使えていない」「プロモーションのみに終始している」。東京・霞が関で観光庁が1月に開いたDMOに関する有識者会議で、民間委員から厳しい指摘が相次いだ。
人口減少時代の地方創生策として、訪日外国人(インバウンド)需要が盛り上がる観光を起爆剤にしようと、国は2015年に欧米で先行したDMOを手本に「日本版DMO」の登録制度を始めた。戦略策定や実行のためのマネジメント、データを生かして来訪者を呼び込むマーケティングを担う地域の観光司令塔に位置づけた。
「器」はもくろみ通り増え、登録済みのDMOは282と5年で2.7倍に増えた。23年の訪日客数はコロナ禍前の19年の8割までに回復し、23年の消費額も5兆円を初めて超えた。DMO効果にも見えるが、実際は多くが機能不全に陥っている・・・

ここで紹介したいのは、その記事についている「日本版○○、劣化コピー脱却を」という記者の意見です。
・・・海外に範を取るのは明治以来のお家芸で、日本版○○政策は枚挙にいとまがないが、失敗が多い。例えば、中心市街地のまちづくり機関「日本版TMO」。甘い計画が乱立して霧消した。
なぜか。責任が曖昧で補助金狙いが先行し、地域特性を踏まえず形をまねる「劣化コピー」の愚が繰り返されるためだ。DMOでも「補助金を取ろうとコンサルティング会社や旅行会社に促されて立ち上げ、アイデア出しも丸投げするだけの、やる気のない団体が多い」とDMOで勤務した経験のある会社員の男性は証言する。
DMOでは国は当初、世界水準の団体を20年に100件にすると掲げ量的拡大を優先した。先進例を選んで底上げをめざすものの、多くがデータを使いこなせず活動目的もおぼろげだ・・・
として、日本版の、TMO、CCRC、MaaS、ライドシェア、ビッグバン、バイ・ドール制度、SOX法、EMP、DBSが載っています。

諸外国の先進的な試みに学ぶことは有用です。日本は明治以来、それで発展してきましたから。でも、日本の実情を勘案して、工夫すべきでしょう。名称がアルファベット略語である時点で、国民への普及を考えていませんね。

国際クルーズ船、入国者名簿を紙で提出

3月23日の日経新聞夕刊に「国際クルーズ船、また来て! 入港手続き軽減や港湾整備」が載っていました。そこに、次のような話が出ています。

クルーズ船の外国人観光客が日本に入国する際、船長または代理業者が入国前に、人数や船の名称を記載した申請書と、乗客の氏名や生年月日をまとめた名簿を、出入国在留管理官署に提出します。名簿は電子データで送ることができますが、申請書は紙で窓口に持って行く必要があったのです。
業者や審査官の負担軽減のため、オンライン化の要望があり、電子メールで送ることができるようにするとのことです。
「え~、今ごろ」と思うのは、私だけでしょうか。

韓国輸出規制の代償

3月24日の朝日新聞に「韓国輸出規制、解除1年 半導体製造「日本リスク」回避へ、失ったシェア」が載っていました。

・・・2019年夏に発動され、韓国側の猛反発を招いた半導体素材の輸出規制が、昨年3月に解除されて1年が経った。政治の対立を背景に当時の安倍政権が切ったカードだったが、日本側は代償も支払った。影響は今なお残っている。

「朝起きたら突然、規制の話が出ていて、てんやわんやの騒ぎになった。客先のサムスンからどうなるのかと聞かれ、慌てて韓国に飛んだ」
日本企業の幹部は、当時の衝撃をそう語った。
安倍政権は19年7月、韓国で日本企業が賠償を命じられた元徴用工訴訟判決への対抗策として、半導体の生産に使われる素材3品目(フッ化水素、フッ化ポリイミド、フォトレジスト)の韓国への輸出について新たな規制を発動した。
輸出を完全に止めたわけではない。それまで企業ごとに一定の期間について包括的な許可を与える方式だったのを、個別に審査する方法に切り替えた。これにより、日本メーカーの通関の手間が増すことになった。
影響は大きかった。半導体の洗浄などに使われるフッ化水素をつくる森田化学工業(大阪市)は、最初の半年間ほど輸出許可が下りなかった。輸出量の9割以上は韓国向けで、20年6月期決算の純利益は前年度比で9割も減少した。
昨年3月に規制は解除されたが、韓国への輸出量は元通りにはなっていないという。今後も量は戻らないとみており、担当者は「米国など別の所に販路を拡大したい」と話す。
「韓国で『日本リスク』が確立されて、日本企業の製品を使わなくなっている」。そう語るのは、同業のステラケミファ(大阪市)の広報担当者だ・・・

・・・輸出規制はなぜ打ち出されたのか。日本政府は、今日まではっきりとは語っていない。
ただ、日本側の狙いは後年になって、意外な形で明らかにされた。
「韓国は、日本との関係の基盤を損なう対応をしてきたわけです。(中略)私は『国と国との約束が守れない中において、貿易管理は当然だ』とも述べました」
安倍晋三元首相は、死去後の23年に出版された回顧録の中で、経産省と首相官邸が徴用工問題の対抗措置として輸出規制強化を発案したと認めた。
経産省中堅官僚は「私たちは『やってはならない規制強化だ』と2度突き返したが、最後は官邸に押し切られた」と漏らす。外務省に至っては「発表数日前に初めて知らされた」(幹部)といい、一貫して蚊帳の外に置かれていたという・・・

このような大きな政策転換も、首相官邸主導だと、公文書などにはどのような検討をしたのか残らないのでしょうね。