日経新聞連載「科学技術の役割ー原発事故に学ぶ」。6月1日は、田中耕一さん(島津製作所、ノーベル賞受賞者)でした。
・・東日本大震災が発生した3月11日以来、科学技術に携わる者として、もっと貢献できることがあったのではないかと悔やむ思いの一方で、科学技術にはまだやるべきことがたくさんあると痛感した。津波や地震のメカニズムはもちろんのこと、自然にはわからないことが数多くある。宇宙や地球の内部は当然、人間の内部ですら科学はその一部しか解き明かしていない。
にもかかわらず、我々にはもう学ぶべきことはないという過信や傲慢さがあったのではないか。地震や原発事故は、やるべきことがまだまだたくさんあることを示した。日本の科学技術はダメだと落ち込むよりも、新たな課題を与えられたと受け止め、再出発の起点にすべきだと考える・・
福島第1原発事故の背景には、技術への過信があったと思える。そもそも「絶対安全」な技術はあり得ない。「想定外」の大津波と表現されたが、わかったところだけが想定できるわけで、それをもとに大丈夫と言っていただけだ。
ただ、「絶対安全」といわなければならない雰囲気があったのかもしれない・・
原発の過酷事故が起きる可能性はないことが前提となるから、事故発生時の対策を考える必要はないという思考停止状態になってしまう・・
筆者は、日本の科学技術の問題点を指摘するよりも、今回の震災や原発事故を、科学技術が前に進むきっかけにすることが重要だと考える・・
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科学技術と政治決定
日経新聞経済教室は、5月30日から「科学技術の役割ー原発事故に学ぶ」を連載しています。30日は、失敗学の畑村洋太郎先生でした。
・・東日本大震災で津波被害や福島第1原発事故を拡大させた背景として共通するのは、自然や原子力という本来制御しきれない対象物を「完全に制御できる」と人間が考えたことではないか。人間には、見たくない物は見ない、考えたくないことは考えない、都合の悪い事柄はなかったことにするという習性がある。
・・宮古市田老地区では、新しい防潮堤は津波で破壊されたが、昭和8年の大津波直後に設計された防潮堤は原形をとどめている。新しい堤防は湾口に対して直角に、真正面を向いて建設されている。だから津波の勢いをまともに受けて破壊された。これに対し、古い堤防は湾口に対して斜めを向いている。津波の圧力を真正面から受け止めるのではなく、山の方へ逃がす設計になっている。先人は、どれだけ巨大な防潮堤を建設したところで、津波を完全に押し返すことはできないと悟ったのだろう。水が入ってきたとしても、退避のための時間稼ぎができればいいという発想だ・・
・・かつて訪ねた時に、田老地区の古い防潮堤の水門を、手動で開閉していた。「なぜ手動なのか」と問うと、「電動では、電気が来なくなると閉められないでしょう」。案内人は答えた。福島第1原発ではほとんどの電源が失われたことで、原子炉を冷却できなくなり、過酷事故につながった。この水門の事例は、外部との関係が遮断されて電気が来なくなるような最悪の事態を想定することがいかに重要かを示している・・
・・「想定外」との見方について思うのは、人間はあらかじめ想定の及ぶ範囲を決めないと考えられず、範囲の確定でようやく考えられるということだ。しかし範囲を決める線引きの際に「欲・得・便利さ」が入り込む・・(要約してあります)。
5月31日は、松本紘京都大学総長でした。今回の大震災と原発事故が、科学への不信を生んだことに関して、次のように述べておられます。
・・筆者は、科学そのものに対する不信というより、科学情報が正確に伝わらない、言い換えれば、科学情報の活用に関する不信が今問題なのだという点を強調したい。
原発事故を例に取ろう。「想定外」という言葉が流行になった。だが科学的な知見として、マグニチュード9以上の地震が起こらないと科学者が言っていたわけではない。地震学者は、明らかにそうした巨大地震が過去にも起きたことを知っていた。反論があることを承知で言えば、「想定」したのは、政府であり事業者であり、科学的知見を基に確率や利益などを勘案し、社会的、経済的な観点から設定されたものが想定値であった。大本の科学の知識が間違っていたわけではない。
科学とは、何ができるか、なぜ起こるか、どうなっているのかを明らかにするためにある。一方、政治は、何をするかという意思を実現するのが役割であろう。What we can doをつかさどる科学と、What we will doを担う政治を混同してはいけない・・
災害時、インターネットの効果
5月31日の日経新聞「大震災と企業」に、ヤフーの井上雅博社長のインタビューが載っていました。
それによると、5月下旬までの2か月半で、ヤフーがネットを通じて集めた募金は、90万人で14億円です。社長自身が、金額の大きさに、間違いではないかと思われたそうです。
また、インターネットは、被災状況や安否確認、支援物資集めにも、大きな力を発揮しました。3月14日のヤフー・ジャパンの総閲覧件数は、23億件。災害時には、平時の15倍にもアクセス件数が跳ね上がるそうです。情報を知りたい人にとって、重要な手段になりました。もちろん、被災地では電気や通信が通じないので、利用できません。また、信用できない情報が出回ったという欠点もありました。
いずれ、今回の大災害についての評価がされるでしょうが、ITはその新しい要素でしょう。阪神淡路大震災は、ボランティア元年と呼ばれました。今回の大災害では、それを教訓に、ボランティア活動がさらに進化しました。それ以外でも、自衛隊や消防の活動も進みました。そして、阪神淡路大震災の時には大きくなかったITの効果、さらには物流やコンビニの役割、企業の社会的貢献が認識されました。
被災者支援説明会延期
今日30日は、仙台で、被災者支援の各種制度説明会を予定していました。しかし、宮城県地方が暴風雨になる予測だったので、県庁と相談して延期しました。対象者が、各市町村の防災担当者です。この人たちには、各地域の警戒に当たってもらわなければならないのです。
地盤沈下した地域も多く、豪雨は心配です。がれきを積み上げてあるので、強風も心配です。また、弱くなった傾斜地や堤防もです。
被災者支援の壁新聞
被災者の方に支援の情報をお届けするために、「壁新聞」を発行しています。主に避難所に貼ってもらっているのですが、郵便局やコンビニの協力を得て、被災地域の店舗の壁にも貼ってもらっています。もちろん、各市町村は、よりきめの細かい情報を、広報誌や壁新聞で伝えています。政府広報は制度一般を伝えることはできるのですが、「○日にどこそこで、無料相談会があります」といったお知らせはできないのです。
今回、これとは別に、壁新聞特別号を発行しました。これは、全国に散らばって避難された方の所在を確認するためです。急いで避難されたので、多くの方がどこにおられるか、不明です。今お住まいの市町村役場に届け出てもらうと、そこから元いた市町村役場につながるようにしました。そうしないと、健康診断や学校への入学、介護保険などのサービスが十分にできないのです。現在、約5万人の方が、届け出ています。この特別号は、そのような目的なので、全国の郵便局、コンビニ、スーパーの協力を得て、店頭で貼ってもらいます。