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地方行財政-三位一体改革

三位一体改革65

(評価・項目別)
三位一体改革の政府与党合意が決まったようです。まずは、結果がまとまったことを喜びましょう。地方団体の評価を待ちたいと思いますが、取り急ぎ、昨日書いた評価基準で簡単に見てみましょう。
結論が出て、目標金額を達成し、3兆円税源移譲できることになったことは、○。
地方団体が拒否していた生活保護国庫負担金が対象とならなかったことは、○。ただし、児童手当などが負担率引き下げとなったことは、×。
義務教育国庫負担金が8,500億円一般財源化されたことは、○。ただし、中学分の全額でなく小中分の負担率引き下げなので、それについては、×。
国債対象である施設費補助金が、一般財源化対象になったことは、○。もっとも、税源移譲が半額であることは、△としましょう。
全体像を見て、地方の自由度が高まったかについては、×に近い△でしょうか。第2期への見通しは、よくわからないので、△。
政治主導については、官房長官裁定が出たことは○ですが、ここまでもつれたこと、地方に案を作らせながらそれを採用しなかったことを考えると、△ですかね。(11月30日)
(評価・その全体像について)
今回決まった三位一体改革の項目別の評価は、前回(11月30日)書いておきました。新聞などの評価も、ほぼ同じだったと思います。「では、全体としてどう評価するのか」というお尋ねが、記者さんたちからありました。私の考えは、次のようなものです。
1 短期的には
この3年間(三位一体改革を進めた期間)でみると、高い評価ではない。新聞が書いているように、数値目標は達成したが、分権の目的である地方の自由度が高まったとはいえないので。
2 長期的には
かけ声だけで進まなかった「補助金廃止・税源移譲」が3兆円も実現することは、画期的なこと。大きな前進。
3 大きな歴史の中では
今回の三位一体改革の評価は、今回だけでは定まらない。すなわち、今後引き続き補助金廃止・税源移譲が進めば、今回はその突破口として大きな評価がされるであろう。しかし、これだけでとどまるなら、分権の歴史の中では良い評価にはならないだろう。(12月11日、パソコンが復旧したので今頃書いています。)
昨日までの三位一体:パソコン故障で載せることができなかったものを、記録のために書いておきます。日々のニュースは割愛し、解説や主張などを中心に紹介します。)
(12月1日の各紙社説)
共通した部分が多いので、それは省略します。
朝日新聞は「公約は果たしたけれど」として、「初めて3兆円という大規模な税源移譲が実現する。全国知事会の麻生渡会長が『画期的だ』と語るのも、あながち誇張ではない」
「しかし、内実は苦しい数字合わせに終始した。そもそも何をめざす改革だったのか。こんな疑問がどうしても膨らむ・・・。単純化して言えば、自治体側は地方分権を、霞が関は財政再建と権限温存を考えていた。この食い違いを乗り越えるには、国と地方がそれぞれ担うべき役割を整理し、時代の変化に応じて分担のあり方を見直す構造改革が必要だった」。
この社説の指摘の通りですが、その構造改革議論は簡単には進みません。改革を拒む勢力が権力側にいるのですから。何度か指摘したように、三位一体改革の進行過程そのものが、政治改革なのです。
毎日新聞は「小泉政権後に不安残すな」で、「国の『下請け』に甘んじてきた地方が一連の改革をリードし、政府の政策決定のあり方にも変化をもたらした点は評価すべきだろう。しかし中身をみると『地方にできることは地方に』という原点は忘れ去られ、数字あわせに終始したのが実態である」
「制度に踏み込めなかったことに加えて気がかりな点がある。曲がりなりにも今度の改革が進んだのは、『改革派知事』が各地で誕生し、全国知事会の発言力が増しただけでなく、これが小泉純一郎首相の志向と合致した事情も大きい。果たして、『小泉後』もこの流れが続くのか。今回の交渉過程を見ても、各省庁の抵抗は極めて激しく、担当閣僚も従来通り省庁の代弁者に過ぎなかった。地方側は07年度からの3年間を第2期改革と位置づけて、さらなる補助金廃止と税源移譲を求めることにしているが、こうした姿を見ていると、『小泉後』がはなはだ不安になるのだ。政府と地方が協議する場を制度として明確にするなど、後戻りをさせない仕組み作りも必要だ」
これも、指摘の通りです。後段の「第2期」については、そのほかの新聞も主張していました。
日本経済新聞は「第2期の三位一体改革に踏み出せ」で、「国から地方への補助負担金は約20兆円もある。これほど巨額の補助負担金を使って、地方に口出ししている国はない。4兆円削減の第1期改革では、各省はこの体制を実質的に存続させる形で逃げ切った。これでは構造改革の名に値しない。政府・与党合意は今後の改革についてはややあいまいだが、本筋に戻した第2期改革に踏み出すべきだ」。
産経新聞は「これで終わってはならぬ」として、「三位一体改革の目的は、国と地方の役割分担を明確にし、財源を効率的に使うことで財政を再建することだ。それには継続的な改革が必要となる。地方分権の確立のためにも、今回の決着で終わりにしてはいけない」。
読売新聞は「国と地方、痛み分けの税源移譲」で、「地方側の言い分も盛り込まれたが、補助金削減では国の関与が残るケースが目立ち、双方、痛み分けの決着、と言うことも出来よう」と述べていました。
確かにそういえるのですが、国の関与が残るのでは分権にはならないのです。やや切れ味の悪い主張ですね。
(残る課題:交付税)
三位一体のうち補助金廃止と税源移譲が決まったので、残る課題は地方交付税であると、新聞は報道しています。もっとも、論点は平成18年度の地方交付税総額がどうなるか=いくら削減されるかになっています(12月1日付け朝日新聞、12月6日付け日経新聞など)。財務省がもっぱら国の財政再建=国の歳出削減の観点から、交付税総額の大幅な削減を主張しているという構図です。
このHPでも何度か解説しましたが、交付税総額は、毎年度の地方財政計画の歳出額と歳入額を積み上げ、その不足分を計算することで決定されます。そして、歳出の多くは、国が基準を決めています。収入の大きな部分である地方税は、その標準が国で決まります。国庫補助金は、国が総額を決めます。地方債は、公共事業などの額が決まれば、ほぼ自動的に決まります。そしてこれを比較して、足らない部分を交付税などで埋めています。国税の一定割合である地方交付税額(実力)で埋まれば問題はないのですが、近年は大幅に足らないので、国から特例の加算をしてもらい、地方も赤字地方債を出しています。
この特例を減らしたいのは、関係者みんなの思いですが、そのためには、地方税収が増えること、あるいは歳出総額が減ることが必要なのです。(12月12日)

三位一体改革64

NHKニュースによると、「全国知事会は、いわゆる三位一体の改革をめぐって、24日、幹部が緊急の会議を開き、焦点となっている生活保護の取り扱いについて、厚生労働省が国の負担割合を減らすという今の案を撤回しなければ、町や村が都道府県を通じて行っている生活保護を受ける人数や世帯数などの国への報告を取り止めることなどを決めました」。
24日の日経新聞1面「改革もう一押し、05年体制への試金石2」は、三位一体改革を取り上げていました。論点として「族議員を根絶するため、補助金削減は徹底的に」「中央省庁だけでなく、地方自治体もリストラ」「国と地方の役割分担の見直しも必要」を掲げています。
「国のお仕着せでなく、自治体が自身の判断で予算を使えるようになれば、創意工夫の余地が広がる。補助金配分に口を出すことで利権を得てきた族議員の息の根を止めるためにも欠かせない改革だ」「生活保護費の補助削減に反対する地方側は、新規の受給者に関する事務を国に返上する構えだ。5年前に中途半端に終わった国と地方の関係を見直す絶好の機会だが、目先のつじつま合わせで手いっぱいの政府・与党内にそういう声はほとんどない」。
読売新聞は、23日には「生活保護費調整大詰め。地方側、強硬姿勢崩さず」を、24日には「埋まらぬ地方との溝。今週末に最終調整」を書いていました。その中で、生活保護費国庫負担率引き下げ、施設整備費の地方移譲、中学校教職員給与分の地方移譲、の3点の対立を表にして解説していました。
毎日新聞23日は「生活保護費削減で対立。厚労省、官邸からノルマ。自治体、分権効果は乏しく」「国・地方の役割論議、不在」を、24日には「三位一体改革、調整大詰め。生活保護費対象除外も」を書いていました。東京新聞は24日に「月内決着へ調整加速。生活保護、義務教育深い溝」を書いていました。(11月24日)
生活保護費を巡る議論が続いています。25日の朝日新聞は「安倍氏、試練の調整役。期限目前、閣内も対立」を解説していました。補助金廃止がどれだけ日本の政治に深く関わっているかが、よくわかります。
それだけに、よくここまで進んだと思います。これまでの日本の政治と行政なら、ちっとも進まなかったでしょう。総理・官房長官・関係大臣の政治主導を期待しましょう。政治家が「日本の政治と社会を変えるのだ」という気概を持つのか、官僚に丸め込まれるのかの分岐点です。(11月25日)
28日の日経新聞「義務教育費国庫負担、私の考え4」は、苅谷剛彦東大教授でした。教授は、国庫負担制度維持を主張されています。そして、負担金制度を廃止した場合の問題を指摘した後に、次のように述べておられます。
「それ以上に心配なのは、文科省の役割変化の可能性だ、財源保障の役割が縮小すれば、残る国の仕事は、『評価』になる。・・評価を通じて教育をコントロールする仕組みへと変ぼうを遂げる可能性である・・」。
うーん、私は、国庫負担金という「投入量」による評価・担保より、教育の成果という「成果」による評価の方が重要だし、必要だと思うのですが。
また、この主張では、文科省は「お金を配る省」ということになりますよね。
何人もの記者さんが、三位一体改革の決着を心配して、話しに来てくださいます。本当に、どうなるのでしょうかねえ。小泉改革政権の真価が問われている、と思うのですが。(11月28日)
(評価の基準)
何人かの記者さんが来て、結末の予想と評価を議論しました。どのような結果になるかは、現時点ではわからないので、それを前提にした評価です。
彼らの主張は、「一番の分かれ道は、生活保護が補助金削減の対象となるかどうかである」とのことです。地方団体は、「生活保護は絶対に認められない」と主張しています。それを含めるようでは、地方団体は三位一体の結論を評価できず、いえ受け入れることも拒否するでしょう。
分権の視点からは、全体像について「多分、良い評価はできないでしょう」とのことです。すなわち、4兆円の補助金廃止がなされたとしても、地方の自由度を高めたものは非常に少ない。公立保育園補助金くらいであり、あとの義務教育関係(共済長期など)は地方の自由度は高まらない。ただし、「3兆円の税源移譲が行われれば、歴史的には画期的なこと。対象補助金について問題があるとしても、進んだことを評価しよう」「第二期につなげることができれば。次があるから」。
次に、政治過程としての評価です。
「総理や官房長官の指導力が、どう発揮されるか」。これが、国と地方との綱引き以上に、今回の焦点だと、何人かは指摘しています。党や霞が関で議論していると、補助金廃止は進まない。官邸から視界1キロメートルの望遠鏡では、判断を誤る。政治家には、日本国・社会を見渡す望遠鏡が必要である。また、5年や10年後を見通す望遠鏡が必要である。その望遠鏡で見れば、自ずと結論が出るはずだ。
国と地方のせめぎ合いとか、政治家の争い(政局)としてみると、この問題の大きさ、意義深さを見誤る。自民党の支持団体を切り捨ててでも、改革を進めることを示したのが、9月11日の総選挙であった。族議員と官僚に任せていては、補助金廃止・分権改革は進まない。総理の政治主導が不可欠である。去年は、総理はみすみす、それを示すチャンスを見逃された。今回の結論(その際の政治判断)は、日本の政治が大きく変わる分かれ道である。というのが、多くの記者さんの見立てです。
変な結論が出て、地方が三位一体議論そのものを「蹴飛ばしたら」どうなるか。これについては、「喜ぶのは、各省と財務省である。補助金を守ることができ、分権改革を止めることができるのだから」とのことです。(11月29日)

三位一体改革63

13日の読売新聞に、全面広告が載っていました。「日本の教育改革を進めるためにも、義務教育費国庫負担制度は絶対必要です」という内容で、全国の教育長・小中高学校長と日教組などがスポンサーです。
去年もこんな広告がありました(10月27日31日)。私の知る限りでは、読売新聞だけに載っています。何か意図があるのでしょうか。でも、この広告って、理解者を増やしているのでしょうか。
文部科学省・教育委員会・学校長と、日教組が「同盟軍」であることは、去年も指摘しました。労働組合もまた、税金(補助金)配分に連なる「業界」でした。文科省と日教組って、何を対立していたんですかね。
学校長や教育委員会も、「私たちに任せてくれれば、良い教育をして見せます」と主張してほしいですね。「私たちは文科省の決めたことを実行する方が良いです」ですという主張は、情けないです。でも、ここまで言わせるようにした文科省の管理「教育」は、成功したと言うことですね。
「国庫負担金を一般財源化したら、各県ごとにこれだけも財源に差がつきますよ」という表がついていました。でも、現在だって負担金は、必要額の2分の1しか交付されていません。正確には3分の1以下になっています。でも、各県ごとに差がついていないんですよね。それは、交付税制度があるからです。ずるいですよね。この主張を貫くなら、「現在でも2分の1は一般財源化されていて、その分は各県ごとに差がついています」「2分の1の負担金をなくすと、現在の格差が2倍に広がります」と証明すべきでしょう。こんな主張では、算数の先生としては失格ですね。お金の話もいいですが、教育の荒廃についても広告を出してほしいです。その際には要求だけでなく、「私たちの責任」という視点もお願いします。(11月15日)
16日の読売新聞「論点」では、小西砂千夫関西学院大学教授が「交付税制度の再生、地方税での負担増も必要」を書いておられました。
朝日新聞社説は「三位一体改革、いま生活保護は無理だ」でした。「安倍官房長官から7省で6300億円の補助負担金の削減を求められたのに、合計で約300億円の答えを返したのだ。自分たちの所管分は削れないという相も変わらぬ霞が関流である。全国知事会など地方6団体が『官房長官の指示が守られないことは誠に驚くべきこと』と反発するのも当然である」
「しかし、私たちは、この段階で生活保護の負担金削減を『残り6千億円』の中に押し込むべきではないと考える。 理由の一つは、自治体が『生活保護は国の責任だ』として、そろって負担金削減に反対していることである。削減が強行されれば、政府への信頼が揺らぎ、福祉の現場で混乱が起きかねない。もう一つは、生活保護の場合、税源を自治体に移しても、自治体の裁量の余地が少ないことである。自治体側が厚労省に税源移譲を求めている在宅福祉や子育て支援などの方が裁量は広がる。
厚労省はまず、自治体の裁量が広がるものから、税源や権限を自治体に渡すべきだ。そうすることで、自治体が地域にあわせた工夫を重ね、行政を効率化することができるからだ」
「今回の厚労省の動きには無理がある。ほかの負担金や権限を手放したくないために、生活保護を持ち出したといわれても仕方があるまい」(11月16日)
厚生労働省が生活保護費の国庫負担率引き下げを提案していることに対し、地方団体が反発を強めています。まず、抗議の意味を込めて、基礎データを国に報告しない自治体が増えています(17日付け朝日新聞、毎日新聞、日経新聞他)。(11月17日)
地方6団体は、18日に厚生労働大臣に、生活保護費国庫負担率を引き下げた場合、生活保護の事務を国に返上することを申し入れたとのことです。返上するのは新規の受給者分で、来年4月からとのことです。この事務は、法律上は「法定受託事務」であり、地方が事務を拒否した場合、国が直接執行するになると考えられます。
小泉総理は、18日の記者懇談で、生活保護費について「地方の意見を尊重してやっていく」と述べたそうです(19日各紙)。
その総理の意向や、官房長官の金額割り当て指示が、実行されないのです。繰り返しになりますが、三位一体改革は、補助金改革を通して、日本政治の問題を浮き彫りにしてくれます。
問題の第一は、官僚が抵抗勢力であること。その二は、その官僚と各省大臣が、首相の指示を守らないことです。(11月19日)
18日の日経新聞は、「三位一体改革、補助金交渉が難航」「削減優先、分権骨抜き」を大きく解説していました。
「三位一体改革は・・・地方の効率化と、国の権限縮小を一挙に実現し、官のリストラを加速させるというのが本来の改革の狙いだ」「しかし、各省は補助金を通じた地方の監督権限を手放そうとせず、補助金を配る仕事が減りリストラされることに抵抗する。だがこのまま地方の反発を放置すれば、地方公務員の給与カットや交付税削減にも踏み込めず、小さな政府をめざす国と地方双方のスリム化に黄信号がともる」。
読売新聞の社説は「三位一体改革、地方に規律促す生活保護の移譲」でした。しかし、国庫負担率を4分の3から2分の1に引き下げることは、負担の押しつけであって、税源移譲とは言わないのです。このような主張をする人は、国庫負担率をもっと下げて例えば10分の1にしたら、地方の規律が増すと考えておられるのでしょうか。さらにはゼロにして、すべてを地方に任せるという主張をなさるのでしょうか。(11月18日)
21日の朝日新聞では、松田京平記者が「義務教育費と生活保護費、国負担でも異なる制度設計」を解説していました。同じ国庫負担金でありながら、なぜ地方は違った主張をするのか。二つの事務の違いは、案外知られていません。よく整理された解説です。ご一読ください。もっとも、一部異論があります。地方団体は将来負担が増えても、筋が通るものなら一般財源化を受け入れると思います。
また、石井記者らが「生活保護費、自治体負担増えると、地域で支給額に差?」「基準の引き下げを懸念」を大きく取り上げていました。
日経新聞では「義務教育費国庫負担、私の考え」第3回で、石井岡山県知事が「財源なくして自律なし」「真の分権、なお道遠く」を語っておられます。毎日新聞「経済サプリ」は、「三位一体改革って何?」を解説していました。産経新聞は「生活保護費国庫負担引き下げ、地方が反旗」「データ報告の停止相次ぐ」を解説していました。
20日の毎日新聞「発言席」では、西尾出雲市長が「地方教育自治の実現を」を書いておられました。
「・・依然として県も市も文科省の考え方に拘束され、ご意見伺いに終始している。・・その意味で、今や地方の教育行政当局の意識改革が迫られている。今後、地方の教育現場は文科省に気兼ねすることなく地域のニーズ、特色を生かす創造的な教員配置を断行すべきだ。同省はそれこそ地方の主体性を、お題目ではなく真に尊重すべきである」
「国庫負担金の予算要求は、毎年度財政当局の厳しい査定を受け、目標財源が十分認められない歴史が繰り返されてきた。財源確保は決して安定的ではない。むしろ、三位一体改革の流れからすれば、地方交付税や地方への税源移譲による財源確保の方が安定的と考える」
「・・文科省は知事や市長をもっと信頼し、教育行政への責任・参画を認めるべき歴史的転換期を迎えている。・・勇断をもって名実ともに教育分権確立に大きく舵を切ることにより、国民が真に信頼し期待する政策官庁として飛躍できることとなる」。
読売新聞「一筆経上」では、丸山淳一記者が「理念なきそろばん勘定」と題して、「双方の言い分の真ん中をとって、二つの補助金(義務教育と生活保護)の補助率を変えるなどの帳尻合わせをすれば、補助金削減額は目標には届く。しかし、地方分権の推進という改革の理念にはほど遠い」と書いていました。(11月21日)
政府与党の協議や4大臣協議が、続いています。(11月22日)

三位一体改革62

日本経済新聞「経済教室」は、1日は冨永朋義さんの「歳入改革で地方に自律性」「消費税を地方に、交付税制度は抜本改革」を載せていました。前段は、地方税である法人関係税を国税とし、国税である消費税を地方税とする案です。これで地域間税収格差は、かなりなくなります。2つめの交付税については、誤解があるようです。「自治体の収支ギャップをもとに交付額が決まる。だからある首長が歳出削減を断行すると、その自治体が受け取るお金は減る」というのは、明らかに間違いです。拙著「地方財政改革論議」p134をご覧下さい。歳出削減しても交付税は減らず、その分は余裕財源となるのです。
2日は神野直彦東大教授が「分権改革の第2弾、消費税の地方割合高めよ」「国・地方税を大改革、交付税の税目も入れ替え」を書いておられました。ここでも、消費税の取り分を地方に多く渡し、法人課税は国税に逆移譲する。交付税財源である消費税を地方消費税とし、国税となった法人税を交付税財源とする案です。地域間偏在を少なくし、また実現可能性の高い考えだと思います。私も、次はこの案だと考えています。
2日の読売新聞では、青山彰久記者が「解剖三位一体改革1、対立の重層構造」を書いておられました。一つは「分権vs集権」で、官僚が抵抗している背景には、補助金廃止が日本の統治構造の基本を変える要素があるからです。三位一体改革が、これまでの「補助金共同体構造」を破壊するからです。もう一つは「分権vs財政再建」です。よく分析されたわかりやすい解説です。是非ご一読下さい。(11月3日)
4日は、新内閣になって初めての、4大臣会合が開かれました。また、生活保護の協議会では、厚労省が、負担率引き下げや一部の一般財源化を提案しました。地方団体は猛反発していると、新聞は伝えています。(11月5日)
読売新聞・青山彰久記者の「解剖三位一体改革」は、2日が「義務教育の責任分担。国と地方、建設的議論薄く」、4日は「公共施設の補助金。廃止、権力構造の変化も」でした。(11月4日)
7日の朝日新聞1面は、三位一体改革に関する全知事へのアンケート結果でした。40人は「裁量広がらず」と厳しい評価でした。「移譲額という数字が先にあって、自由度が高まっていない」というのが主な理由のようです。また「交付金は補助金と同じで、自由に使えない」との意見も紹介されていました。
日経新聞は「義務教育費国庫負担金、私の考え1」で、中教審会長の意見を載せていました。見出しに「中教審の役割、今後も重要」とありましたが、自分の組織を「今後は不要」という人がいますかねえ。中教審がどのようなものかは、この騒ぎの中でよく見えました。国民が評価するでしょう。(11月7日)
読売新聞・青山彰久記者の「解剖三位一体改革」は、5日が「中央と地方の協議」「国のかたち変える契機に」でした。私は、三位一体の意義の一番はこれだと思っています。(11月7日)
今日の新聞は、昨日各省へ割り当てが示されたことについて、解説していました。日経新聞は「補助金削減 官邸ペース」、読売新聞は「省庁の抵抗排除狙う。官邸に危機感、反発強くなお曲折も」などです。(11月9日)
今日、官房長官が各大臣に、6,000億円の補助金削減案の各省への割当額を示したとのことです。各紙には、各省ごとの割当額も載っています。合計額は6,300億円で、5%増しの金額になっています。生活保護費については、厚労省に対し「国と地方による協議が整わなかった場合は、これを除く改革案を出してもらう」とのことです(日経新聞夕刊)。(11月8日)
10日の朝日新聞では、坪井ゆづる論説委員が「三位一体改革 決着は」を解説しておられました。「しかし、ここはあえて自治体案に沿って、分権改革の突破口として義務教育を位置づけるべきではないか・・」。
その中で、西尾理弘出雲市長(元文部官僚)が述べておられます。「文部科学省は本来、教育内容や水準を政策的に誘導する『政策官庁』であるべきだ。ところが現状は、国庫負担金を配る『人件費官庁』でしかない。分権議論を機に、政策中心の官庁に脱皮してほしい。そもそも負担金制度は、昭和20年代の公立学校中心主義の産物なんですよ。すでに制度として崩壊している」。
9日朝日新聞夕刊「窓・論説委員室から」では「最後の証言」として地方教育行政法制定に力を尽くし、後に文部事務次官になられた木田宏さんの証言を紹介していました。「この50年間、文部当局は、学校のことは市町村の仕事であるという指導をしてきませんでしたね。都道府県は国の言うことを市町村に伝達するだけでした。マスコミも、何かあると文科省にだけ目を向けて、ものを言ってきました」。
お二人の文部官僚OBの発言でした。(11月10日)
10日には、生活保護に関する国と地方の協議会が開かれました。厚労省が示した「国庫負担率を2分の1に引き下げ、住宅扶助負担の廃止・一般財源化」に対し、地方側は「三位一体改革に名を借りた地方への負担転嫁」と反発しました(11日の東京新聞)。読売新聞「論点」では、高橋はるみ北海道知事が「三位一体改革、負担押し付け許されず」を主張しておられました。11日の朝日新聞では、松田京平記者が解説していました。毎日新聞は社説で「押し付け合いはやめよう」と主張していました。
(11月11日)
11日には、官邸で「国と地方の協議の場」が持たれ、また政府主催の全国知事会議が行われました。朝日新聞によると「小泉首相は11日、政府主催の全国都道府県知事会議に出席し、06年度までの3年間で国から地方へ3兆円の税源移譲などを目指す、『三位一体改革』について、『地方の意見を尊重していく。これで終わりではありません』と述べ、07年度以降も税源移譲や補助金削減などを、さらに進めるべきだとの考えを示した」 とのことです。
日経新聞によると、麻生知事会長は、官邸が各省に対し14日までに提出を求めた補助金削減案について「官房長官が数値目標を示したのにゼロ回答だったら、内閣としての体をなさない」と牽制したそうです。その通りですよね。三位一体改革(補助金廃止)が日本の政治改革=官僚主導を止め、政治主導に変えることであることがよくわかります。(11月12日)
今日の正午が、補助金廃止の各省からの回答期限でした。
NHKニュースによれば「総務省は割り当てられた10億円の補助金を削減する案を示したほか、農林水産省は340億円の割り当てに対し、109億円を、また、経済産業省は70億円の割り当てに対し、59億円を削減する案を示したうえで、いずれも、このほかに削減する補助金を早急に決定し、目標を達成するとしています。一方、全体の80%にあたる5040億円を割り当てられた厚生労働省は、焦点となっている生活保護の補助金について、「地方側と調整がついていない」として盛り込まず、109億円と回答し、環境省は50億円の割り当てに対し、2億円あまりにとどまりました。さらに、文部科学省と国土交通省は「検討中」として金額は示さず、各省の回答は、全体として目標額の6300億円以上を大きく下回りました」とのことです。
社会の趨勢が認めている分権、そして総理の指示に対する回答が、このようなことです。私は、これが官僚にとって末期症状、各大臣にとっては政治主導を問われた試験だったと思います。(11月14日)
6,300億円の補助金削減を割り当てられた7省の回答は、合計289億円、達成率は5%に満ちませんでした。満額回答は、総務省だけでした。麻生全国知事会長は、「官房長官の指示が守られないことは驚くべきことであり、遺憾きわまりない」とコメントを出しました(11月15日づけ日経新聞ほか)。普通の人なら、そう思うでしょうね。

三位一体改革61

17日は、先に官房長官が各省に、補助金改革案の数字を提出することを求めた期限です。一部の新聞では、ゼロ回答の省もあると報道されています。まあ、去年のことを思い出せば、そんなところですかね。官僚は改革ができないだけでなく、抵抗勢力ですわ。
地方案の実現度」の表をご覧下さい。今年の欄には、どんな数字が入るのでしょうか。各省の回答が何であれ、去年は2.4兆円が決まりました。今年も、総理・官房長官・総務大臣が、「残る6千億円は達成する」と明言しておられます。(10月17日)
今朝の各紙によると、各省からの回答は、各紙の予想通りゼロ回答だったそうです。「地方案の実現度」の各省回答欄に、0を書き込みました。(10月18日)
19日の読売新聞は、「三位一体改革、月末に基本方針。中教審、官邸と対立。補助金削減、施設整備費が焦点」を大きく解説していました。
もっとも、「文教族は妥協やむなし」として、「文科省内でも、国庫負担割合を2分の1から3分の1に下げたり、負担金の使途を広げたりする交付金を創設したりする案が取りざたされている」とありました。
うーん、文科省もこれを書いた記者さんも、全然わかっていませんね。あるいは、地方団体や三位一体改革をバカにしているのですかね。地方団体が一番嫌がっているのが補助率引き下げ、次が交付金化です。これでは、税源移譲にならないのですから。
なお、別表で各省の対応案が出ていました。いくつかの省で「補助金削減」の数字が出ています。昨日、私は、「各省0回答」と書きました。明日、職場で確認します。もっとも、この記事でも、6000億円の目標に対して、52億円ですがね。
囲みの中で、塩谷裕一記者が「官から政も必要」を書いていました。「小泉構造改革の2大フレーズは『官から民へ』と『国から地方へ』。前者の具体策が郵政民営化、後者が三位一体改革だ。ただ、抜け落ちている視点がある。それは『官から政へ』だ。道路公団民営化など一連の改革では、首相らが重要な政策判断を官僚に丸投げするケースも目立った。三位一体改革や公務員の総人件費削減、政府系金融機関の統合などは、官僚の既得権益に切り込む改革ばかりだ。骨抜きに終わらせないためには、政治家自身の決断が必要だ。小泉改革の真価が問われるのはこれからだ」
「官から政へ」とは、良いフレーズですね。使わせてもらいます。(10月19日)
20日に、三位一体改革の4大臣会合と、各大臣を呼び込んだ協議が行われました。東京新聞は、「省庁は譲歩姿勢見せず。ゼロ回答、手放さぬ力の源泉」として、詳しく解説していました。
朝日新聞は、社説で「国と地方、首相の力量が試される」を書いていました。「首相は『官から民へ』と唱えて、郵政民営化法を成立させた。こんどは『国から地方へ』の第一歩として、この改革を有意義な内容に仕上げる番だ。 」「3兆円の税源移譲ができれば、首相は改革は成功だと胸を張るかもしれない。しかし、単なる数字合わせでなく、自治体に権限と税源を渡すことが重要だ。来年度以降も分権改革を進める道筋をつけることも、首相の仕事である。」
各省の回答で「削減」とあったのは、縮小(スリム化)であって地方への税源移譲に結びつくのではないそうです。よって、各省回答は、やはり「0」です。(10月21日)
22日の毎日新聞社説は「三位一体改革、ゼロ回答とはどういうことか」でした。
「地方財政の三位一体改革で中核をなす補助金削減で、06年度政府予算編成に向けた関係省の対応はゼロ回答だった。地方6団体が約1兆円の削減要求を策定し、小泉純一郎首相も地方の意見を尊重することを求めていたことに対しての返答である。・・それがゼロ回答では問題にならない。補助金改革では文部科学省が義務教育国庫負担金の地方移譲に執ように反対している。これと併せて、この後ろ向きの姿勢は何なのか。」
「では、政府はいま、何をやるべきなのか。第一は、補助金削減、税源移譲をやり切ることである。これがすべての出発点なのだ。・・小泉首相が昨年来、地方団体に改革案の提示を求めてきた。そのことを考慮すれば、今回の関係省のゼロ回答は、地方支配を維持しようという露骨な行動と言わざるを得ない。」
「第二は、補助率の引き下げや交付金化などで、数字の上で3兆円を確保する姑息(こそく)な手は許されない。」「第三には、施設費も聖域ではない。」
また、24日の毎日新聞「闘論」では、「義務教育費移譲の是非」を巡って石井岡山県知事と梶田兵庫教育大学長が、紙上討論をしておられました。(10月24日)
各紙が伝えているように、25日は官邸で、政府与党の協議会が開かれ、26日には国と地方の協議の場が開かれました。皆さん、これが当たり前のように思っておられますし、「協議をしても進まない」との批判もあります。
しかし、分権について、しかも各論について、官邸で各大臣が出席し、与党幹部を巻き込み、地方団体代表が出席して議論するということは、数年前には考えられませんでした。せいぜい、陳情に行くか、全国知事会議が儀式的に開かれるだけでした。それが、地方団体代表が首相官邸で対等の立場で議論するのですから、隔世の感があります。他のテーマで、これだけ官邸で議論している会議はないでしょう。
もちろん、そう簡単には、地方団体の希望通りには進みませんが、このような場を積み重ねていくことが重要だと思います。また、たとえ中教審で主張が通らなくても、出席して議論する。そして、中教審がどんなものであるかを国民に見せる。そういったことも、効果があると思います。内政の責任者になる、そう国民から認知されるには、努力と積み重ねが必要です。(10月26日)
30日の朝日新聞は、義務教育費国庫負担金について「中教審の100時間振り返る」を解説していました。また、読売新聞社説は「中教審答申に重なる地方の声」を書いていました。(10月31日)
1日の日経新聞は「三位一体改革-私の意見」(上)で、北城経済同友会代表幹事の「国との決別を」を載せていました。2日の日本経済新聞「三位一体改革-私の意見」(中)は、増田寛也岩手県知事の「地方の創意後押し、補助金は削減、内閣の優先課題」、3日(下)は、沼尾波子日大助教授の「住民の利点、説明を」「長期的視点で交付税考えよ」でした。