三位一体改革64

NHKニュースによると、「全国知事会は、いわゆる三位一体の改革をめぐって、24日、幹部が緊急の会議を開き、焦点となっている生活保護の取り扱いについて、厚生労働省が国の負担割合を減らすという今の案を撤回しなければ、町や村が都道府県を通じて行っている生活保護を受ける人数や世帯数などの国への報告を取り止めることなどを決めました」。
24日の日経新聞1面「改革もう一押し、05年体制への試金石2」は、三位一体改革を取り上げていました。論点として「族議員を根絶するため、補助金削減は徹底的に」「中央省庁だけでなく、地方自治体もリストラ」「国と地方の役割分担の見直しも必要」を掲げています。
「国のお仕着せでなく、自治体が自身の判断で予算を使えるようになれば、創意工夫の余地が広がる。補助金配分に口を出すことで利権を得てきた族議員の息の根を止めるためにも欠かせない改革だ」「生活保護費の補助削減に反対する地方側は、新規の受給者に関する事務を国に返上する構えだ。5年前に中途半端に終わった国と地方の関係を見直す絶好の機会だが、目先のつじつま合わせで手いっぱいの政府・与党内にそういう声はほとんどない」。
読売新聞は、23日には「生活保護費調整大詰め。地方側、強硬姿勢崩さず」を、24日には「埋まらぬ地方との溝。今週末に最終調整」を書いていました。その中で、生活保護費国庫負担率引き下げ、施設整備費の地方移譲、中学校教職員給与分の地方移譲、の3点の対立を表にして解説していました。
毎日新聞23日は「生活保護費削減で対立。厚労省、官邸からノルマ。自治体、分権効果は乏しく」「国・地方の役割論議、不在」を、24日には「三位一体改革、調整大詰め。生活保護費対象除外も」を書いていました。東京新聞は24日に「月内決着へ調整加速。生活保護、義務教育深い溝」を書いていました。(11月24日)
生活保護費を巡る議論が続いています。25日の朝日新聞は「安倍氏、試練の調整役。期限目前、閣内も対立」を解説していました。補助金廃止がどれだけ日本の政治に深く関わっているかが、よくわかります。
それだけに、よくここまで進んだと思います。これまでの日本の政治と行政なら、ちっとも進まなかったでしょう。総理・官房長官・関係大臣の政治主導を期待しましょう。政治家が「日本の政治と社会を変えるのだ」という気概を持つのか、官僚に丸め込まれるのかの分岐点です。(11月25日)
28日の日経新聞「義務教育費国庫負担、私の考え4」は、苅谷剛彦東大教授でした。教授は、国庫負担制度維持を主張されています。そして、負担金制度を廃止した場合の問題を指摘した後に、次のように述べておられます。
「それ以上に心配なのは、文科省の役割変化の可能性だ、財源保障の役割が縮小すれば、残る国の仕事は、『評価』になる。・・評価を通じて教育をコントロールする仕組みへと変ぼうを遂げる可能性である・・」。
うーん、私は、国庫負担金という「投入量」による評価・担保より、教育の成果という「成果」による評価の方が重要だし、必要だと思うのですが。
また、この主張では、文科省は「お金を配る省」ということになりますよね。
何人もの記者さんが、三位一体改革の決着を心配して、話しに来てくださいます。本当に、どうなるのでしょうかねえ。小泉改革政権の真価が問われている、と思うのですが。(11月28日)
(評価の基準)
何人かの記者さんが来て、結末の予想と評価を議論しました。どのような結果になるかは、現時点ではわからないので、それを前提にした評価です。
彼らの主張は、「一番の分かれ道は、生活保護が補助金削減の対象となるかどうかである」とのことです。地方団体は、「生活保護は絶対に認められない」と主張しています。それを含めるようでは、地方団体は三位一体の結論を評価できず、いえ受け入れることも拒否するでしょう。
分権の視点からは、全体像について「多分、良い評価はできないでしょう」とのことです。すなわち、4兆円の補助金廃止がなされたとしても、地方の自由度を高めたものは非常に少ない。公立保育園補助金くらいであり、あとの義務教育関係(共済長期など)は地方の自由度は高まらない。ただし、「3兆円の税源移譲が行われれば、歴史的には画期的なこと。対象補助金について問題があるとしても、進んだことを評価しよう」「第二期につなげることができれば。次があるから」。
次に、政治過程としての評価です。
「総理や官房長官の指導力が、どう発揮されるか」。これが、国と地方との綱引き以上に、今回の焦点だと、何人かは指摘しています。党や霞が関で議論していると、補助金廃止は進まない。官邸から視界1キロメートルの望遠鏡では、判断を誤る。政治家には、日本国・社会を見渡す望遠鏡が必要である。また、5年や10年後を見通す望遠鏡が必要である。その望遠鏡で見れば、自ずと結論が出るはずだ。
国と地方のせめぎ合いとか、政治家の争い(政局)としてみると、この問題の大きさ、意義深さを見誤る。自民党の支持団体を切り捨ててでも、改革を進めることを示したのが、9月11日の総選挙であった。族議員と官僚に任せていては、補助金廃止・分権改革は進まない。総理の政治主導が不可欠である。去年は、総理はみすみす、それを示すチャンスを見逃された。今回の結論(その際の政治判断)は、日本の政治が大きく変わる分かれ道である。というのが、多くの記者さんの見立てです。
変な結論が出て、地方が三位一体議論そのものを「蹴飛ばしたら」どうなるか。これについては、「喜ぶのは、各省と財務省である。補助金を守ることができ、分権改革を止めることができるのだから」とのことです。(11月29日)