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地方行財政-三位一体改革

三位一体改革26

27日の新聞は、26日に開かれた国と地方の協議会4回目の様子を伝えていました。主に公共事業関係で、各省の案は交付金化です。これでは税源移譲につながりません。毎日新聞は「地方への影響力温存」と大きく書いていました。
財務大臣の交付税大幅削減案については、地方団体側は激しく反発し、麻生大臣も「ぶち壊すような激論はおかしい」と発言しています。
朝日新聞は「三位一体改革深まる対立」を、各大臣のスタンス解説図付きで解説していました。
東京新聞は、社説で「補助金改革、既得権維持が目に余る」でした。中学校教職員給与について「国庫負担廃止の見返りに税源が移譲されてもなお、教育の水準が低下するという理屈に、どこまで納得させる力があるのか」「厚生労働省は、補助率引き下げという対案を出している。これでは、地方側への行政の裁量はほとんど広がらない。省側の権限を維持しようという意図がありありだ」。また、同紙は「補助金削減の衝撃」の連載(中)「省益、負担は他省庁と地方に」「カネと権限は自らに、負担は相手に-。三位一体改革の成否は、こうした中央省庁の論理を崩せるかどうかかが大きなカギとなる」。
産経新聞は「三位一体、乱戦の構図」連載4回目「財務省vs総務省」を載せていました。(10月27日)
28日の読売新聞は、神野直彦先生の「三位一体改革・古色蒼然たる官僚の抵抗」を載せていました。「日本では、補助金が中央官僚支配の道具になっている」「地域住民の共同の財布である地方財政を、中央官僚から国民の手に取り戻すことが、その目的だといってもよい」「この改革に中央官僚は激しく抵抗している。・・その抵抗の論理は、戦後の民主化に抵抗した時以来の古色蒼然としたものだ」「義務教育費国庫負担金は、教職員の給与の50%を中央政府が負担し、50%を自治体に裏負担させるが、この負担金だけでは地域間格差は逆に拡大し、行政水準は確保できない。・・貧しい自治体でもどうにか裏負担に耐えられているのは、交付税が交付されているからだ」。ぜひ本文をお読みください。
同じ読売新聞には、全面広告で「今、日本が危ない!日本の義務教育が今崩壊しようとしている」と、著名人が名前を並べていました。誰も、教育費を減らそうとなど言っていません。教員給与の50%を国庫負担すると義務教育が成り立ち、それを税源移譲すると「崩壊する」というのは・・。
バカさ加減に、開いた口がふさがりません。なぜ、教育の質の議論を、教員の給与の半分を国が持つかどうかにすり替えるんでしょうか。この人たちは「国庫負担金のない高等学校教育は、既に崩壊している」というんでしょうか。
先生方は、物事をわかっていないか、誰かに言わされているんでしょう。自らの名誉を、自ら傷つけておられることに、悲しくなります。
私立学校は、義務教育費国庫負担金を受けていません。私立学校の先生や私立学校の卒業生まで名前を出しておられるのは、自分の学校が国から「差別」されていることをご承知なのでしょうか。あるいは、「国庫負担金をもらっていない私の学校は、教育が崩壊しています」と発言しておられるのでしょうか。まさか。うちの娘も私立中学校に通っていましたが、崩壊していませんでしたよ。
知事や高校の先生、私学の先生は、怒ってください。
東京新聞は、連載「補助金削減の衝撃」(下)、族議員は「生命線維持に必死」を解説していました。(10月28日)
新聞は毎日、三位一体の記事が花盛りです。しかしその内容は、「理念や理論編」でなく、「政治力学編」に移っているようです。例えば29日の毎日新聞では「三位一体改革は首相批判の接着剤」というようにです。
理論編では、絶対に地方案で進むはずですが、それを阻むために、省庁と「族議員」は力学編に持ち込もうとしています。
29日の各紙は、「各省ゼロ回答、1兆円どまり、目標ほど遠く」と書いていました。各省の抵抗について、各紙は批判的です。当たり前のことですが。産経新聞は「乱戦の構図」第5回「地方自治体間の対立」を、読売新聞社説は「激しさ増す補助金削減の攻防」を載せていました。
30日の朝日新聞社説は、「補助金削減、これは対案に値しない」を載せていました。「補助金を減らそうとまじめに取り組んでいるとはとても思えない。それどころか、小泉改革に従わないと表明したに等しい。小泉首相は閣僚や次官らを更迭するぐらいの気持ちで進まないと、道は切り開けまい」。わかりやすいです。日本経済新聞は「財政攻防4」を載せていました。(10月30日)

三位一体改革25

19日に、関係閣僚と地方団体代表との協議(分野別2回目)が行われました。新聞各紙によると「また平行線」だそうです。産経新聞によれば、「経産相が容認姿勢」とのことです。他の省の主張は、再度出席した厚労相を含め、補助率カットと交付金化です。
これが、地方団体の意見及び総理の趣旨にそぐわないことは、みなさんご承知のとおりです。補助率カットでは、地方の自由度が上がりません。それは、単なる負担の転嫁です。交付金化では、税源移譲になりません。地方団体が言うように、こんな会合だったらやってもムダですわ。調整なんてできません。
「総理の指示であっても、抵抗さえしていれば、進まない」といった「ごね得」は許されるのでしょうか。たぶん、総理は認めないと思います。
ある記者さん曰く、「地方団体は、自民党の有力な支持母体ですよ。総理も自民党の議員も、それを怒らせるような決着はできませんよね」。
でも、想定したくありませんが、地方案が進まない場合には、地方団体は「どのようにぐれるか」考えておくことも必要でしょうか。(10月20日)
20日の参議院予算委員会で、麻生総務大臣と財務大臣が対立したと、各紙が伝えています。所得税から3兆円税源移譲すると、交付税原資が1兆円(3兆円×32%)減ります。財務大臣は「新たに財源を見つけるのは難しい」。麻生大臣は「交付税が減少すると地方の財源不足が拡大する。いろんな手法で埋める」と答えておられます(朝日、毎日など)。
どちらが正しいか、よく考えてください。一見、財務大臣の説も、正しいと思えますよね。いつも私が使う「国の予算と地方財政計画の4本柱図面」で考えてみてください。3兆円税源移譲すると、国は△3兆円(税源移譲分)+1兆円(交付税跳ね返り分)=△2兆円です。ここで、財務大臣の手品がばれます。財務大臣がわかって言っておられるのか、事務方に言わされておられるのか・・。
21日の記者会見で、香山総務事務次官は次のように答えています。「これは、当然補てん措置を講ずべきものでありまして、この点については議論の余地はないと、私共は思っております。交付税の率を上げるのか別の方法をとるのか、そこはいろいろとこれからの議論だと思いますけれども。所得税が減ったために反射的に交付税が減る分については、減りっぱなしということは断じて有り得ないことでして、当然そういうことに臨んでいきたいと思っております」。
産経新聞は「三位一体:乱戦の構図」「倒閣か族つぶしか:首相vs族議員」を解説していました。何回か解説したように、この構図は本質的ではありません。でも、こういう対立構図は、小泉改革には有効でしょう。
ある記者曰く「小泉総理は、族議員と官僚の抵抗を『歓迎して』おられるでしょう。そうすれば、世論がますます小泉を支援すると。『私は旧来型の自民党をブッ壊す』ですよ」。なるほど。(10月21日)
22日の経済財政諮問会議では、交付税改革が審議されました。民間委員、麻生大臣、財務大臣がそれぞれ資料により、主張を述べられたとのことです。議論のポイントは、地財計画と実態との乖離をどうするかと、中期見通しをどうつくるかです。
もちろん財務省の主張は、交付税を大幅削減するためのものです。そのため22日の朝刊には、財務省の主張がいくつも「リーク」されていました。
夕方、国会から帰ってきたら(毎日国会に出勤しているので)、何人もの記者さんから「7兆円も交付税を削減したら大変ですが・・」と問い合わせがありました。
全:「そんなの、大蔵のいつもの手口やんか。毎年、夏と今頃になると、こんな記事が出るで。去年の新聞見てご覧。記者さんは1年で交代するから、知らへんのやなあ」
記:「そうなんです。でも、私だって、主計官から紙を貰ったら、喜び勇んで書きますよ。で、どうなるんですか」
全:「地財計画と交付税を削減するのは、閣議決定済み。ただし、安定的な財政運営ができるだけの額は保障することも、書いてある。16年予算で減らし過ぎて、地方団体の猛反発をくらったからね」
記:「じゃあ、削減額は、16年度とゼロとの中間ということでしょうね」
全:「12月末に予算が決まったら、二人で検証しようや」
地財計画議論の2つのポイントについては、別に解説しましょう。(10月23日)
23日の各紙は、22日の経済財政諮問会議を載せていました。総理は、義務教育費国庫負担金の削減に文部省などが強く反対していることについて、「みんな反対、反対という。しかし、やらざるを得ない」と記者団に述べ、地方案に沿って削減案をまとめる決意を強調しました(毎日新聞、読売新聞など)。
産経新聞は「三位一体・乱戦の構図」第3回を、毎日新聞は宮田哲記者による「ヤマ場の補助金削減・地方も問われる説明責任」を載せていました。24日の東京新聞は「三位一体改革ヤマ場へ」「地方:自由な財源、分権加速vs省庁・族議員:なくなる仕事・影響力」を解説していました。(10月25日)
26日の東京新聞は、「補助金削減の衝撃・三位一体改革の今」上「自立」を載せていました。「地方にとって三位一体改革は、国への依存体質から脱却するチャンス。だが、カネを手にすると同時に責任も負う。地方の想像力、そして覚悟が問われることになる」(10月26日)
25日の日本経済新聞社説「地方の自由度を広げる補助金改革に」は、三位一体改革の理念や意義をわかりやすく解説していました。「失敗は住民の責任に」とです。優れた論文だと思います。ぜひご一読ください。(10月25日)

三位一体改革24

今日から、臨時国会が始まりました。総理の所信表明演説の最初は、「官から民へ」=郵政民営化と、「国から地方へ」=三位一体改革でした。重要課題を抱えることはありがたいことですが、それはそれで大変で・・。(10月12日)
13日の朝刊各紙は、昨日の国と地方との協議会を大きく伝えていました。「各省庁抵抗」「出口見えず」「調整難しく」などなど。当然、予想されたことです。各省が削減案を作れないから、地方団体に案の作成を依頼しました。各省はそれに抵抗するだけでは、調整は不可能です。その事務方の意を受けて大臣が発言すると、もうどうしようもありませんわ。
違う角度から解説していたのは、東京新聞です。
「補助金削減で仕事が消える」。地方団体案を「そのまま受け入れた場合、各省では、削減される補助金担当課はなくなるか、少なくとも今までのような数の職員は不要になる」。わかりやすいですね。各省はなぜ補助金死守で頑張るか。
また、「文部科学省は『義務教育費を全部持っていかれたら、A級官庁からD級官庁に落ちてしまう』との声も漏れる」ともあります。補助金額の多さで、各省のランクが決まると思っているとは・・。それだと、文部科学省でも、その他の局はD級の局と言うことですか。財務省や外務省もD級ですね。
官僚って、この程度の人たちだったのですか・・。同業者として情けないです。地方団体側が「こんな協議を続けても意味がない」と発言する気持ちもわかりますね。新聞各紙が冷静に分析しているのが救いです。
11日の毎日新聞は、「三位一体改革の現場」連載第2回「義務教育、財源より権限求める声も」を書いていました。もちろん、権限の委譲も重要です。でも、それは文部省がもっと手放さないでしょう。二兎を追ってはいけません。先ず財源を貰ってから、次に権限を貰いましょう。(10月13日)
関西学院大学が、「地方交付税発足50年、制度の持続可能性を問う」(10月12日~14日、新宿住友ビル)という講演会をしてくださいます。去年は、小生が出演して「交付税は破綻している」と発言し、物議をかもした会です。(9月28日)
14日の参議院本会議で、小泉総理は「関係閣僚に地方団体の改革案を受け止め積極的に取り組むように指示したが、その明確な指示を勘違いしている閣僚もいるので強くこれからも指示する」と答弁しました(日本経済新聞夕刊)。
総理はここまで明確です。各閣僚の、今後の言動を監視しましょう。(10月14日)
各紙が、昨日の総理発言を解説していました。また、夕刊では、文部大臣が「義務教育補助率削減は考えていない」と発言したことを伝えていました。(10月15日)
17日の日経新聞は、「三位一体改革新たな対立」「都道府県vs市町村」を書いていました。「人口など財政基盤の違いに応じて格差ができる。総じて都道府県が潤い、市町村は減収になるところが多い」とです。
困ったものですねえ、こんな間違った記事を書いて、誘導するのは。
財政基盤に応じて格差がでるのは、事実です。でも、人口は財政基盤ではなく、財政需要の方です。人口が多いほど費用がかかるのです。この点は不勉強。そして、「都道府県が潤い、市町村は減収になるところが多い」は間違いです。都道府県分の補助金廃止に応じて税源移譲を行い、市町村分の補助金廃止に応じて税源移譲を行います。
都会対田舎の地域間対立は生じても、県対市町村という対立は生じません。
さらに「補助金の配分を知事がする」という点は、全くの誤解です。国庫補助金がなくなって、それが県から市町村への補助金になるかのような言い方ですね。
税源移譲の意味がわかっていませんね。あるいは、知っていながら「ある目的のために誘導している」のか。
こうして対立をあおり、改革に抵抗する結果になるのです。というより、県対市町村の対立はないので、「対立を作り上げている」と言う方が正確です。7月7日の神野先生の解説を参照してください。
このような記事は、あたかも事実を報道しているかのようで、実は偏向しています。日経新聞は、三位一体改革に反対ではないと思うのですが。この記者だけが不勉強で、・・(9月17日の解説に続く)。(10月17日)
18日の朝日新聞は、「知事会・市長会が補助金廃止案主導」を解説していました。辻陽明編集委員の書かれる記事と解説は、いつもよく掘り下げてあります。
「これまで地方6団体は、自治省の別働隊とみられてきた。だが、昨年9月からは『国と闘う知事会』の姿勢を強め、総務省の主張とは必ずしも一致していない。総務省幹部は・・・とぼやいた」とかです。これは、「地方6団体の事務総長は自治省の出身」と書いていた、どこかの新聞とは大違いです。
毎日新聞は、「三位一体改革の現場から」連載3で、公共事業を取り上げていました。「省庁、削減案に猛反発。業界も危機感募らす」と。補助金が誰のために役立っているかが、よくわかる記事です。(10月18日)

三位一体改革23

7日の朝日新聞「私の視点」には、梶原拓全国知事会長の「地方分権改革:歴史の大きな分岐点」が載っていました。
読売新聞や毎日新聞には、小泉首相が省庁からの妨害行為について「中央省庁の圧力に地方もおびえちゃだめですよ。しっかりしてもらいたい」と発言したと書いてありました。そのとおりです。「補助金は要らない」と言ったのは、地方団体です。各省が何を言ってきても、「要りません」と言えばいいのです。
地方団体も、個別には、補助金をもらった方が得でしょう。でも、それでは分権はいつまでたっても実現しません。今回は、「やせ我慢の説」で頑張らなければならないのです。ここで妥協すると、各省は「やっぱり地方団体はダメだ」とバカにするでしょう。
7日の日本経済新聞は「列島再編2/3の波紋」連載3で、合併しない町村の、生き残りのための行革事例を紹介していました。
6日の日経は「地域金融は今:変わる自治体との絆」連載5で、公共事業に依存してきた地域経済が「脱公共投資」路線で受ける影響を解説していました。小泉内閣になって、公共事業に頼る景気対策は終了しました。また、公共事業に頼る経済=「モルヒネ経済」も終了したのです。これ以上借金をしてまで、続けることはできません。それでも、巨額の国債・地方債の残高が残っています。(10月7日)
8日の閣僚懇談会で、官房長官から三位一体改革について、次のような発言がありました。
「関係各大臣は地方からの改革案の実現を原則として、そのための取り組みについての現時点における検討状況を具体的に説明していただきたい。仮に地方からの改革案に意見がある場合であっても、その理由を明らかにするとともに、提案されている廃止額に見合う代替案についての考え方を十分に説明していただきたい。」
「地方団体との協議も踏まえた上で、地方からの国庫補助負担金等の改革案について、平成17年度改革分、平成18年度改革分の仕分けを含め、補助事業等の所管府省において検討を進め、その結果を10月28日までに提出していただきたい」
「政府として11月半ばを目途に三位一体の改革の全体像を取りまとめていきたいと考えている。関係各大臣は総理のご指示に沿って地方からの改革案を真摯に受けとめ、改革案の実現に向けて率先して責任を持って全力で取り組んでもらいたい」「なお、地方団体から、補助金等を所管する府省から不当な圧力がある旨の指摘があったので、関係各大臣は十分注意をし、全体像の取りまとめに向けてリーダーシップを発揮していただきたい
8日の読売新聞では、青山彰久記者が「国VS地方」「内閣は省庁依存脱し責任ある対案示せ」を主張しておられました。「地方側は、省の代弁者ではなく、閣僚である大臣と協議したいというわけだ」として、政と官の役割を論じています。ぜひ、ご一読ください。
各大臣にとっては、官僚の書いた紙を読み上げるだけの人(官僚の言いなり)であるか、政治家(自分の意見を持っている)であるかを試される「公開試験」ですね。これからの政治ドラマを、政治部記者と一緒に観戦しましょう。採点表も持って。
官僚に「取り込まれる」政治家がだらしないのか、政治家を取り込む官僚が悪いのでしょうか。地方団体が「要らない」と言っている補助金を「なぜ受け取らないんだ」と言い続ける官僚。歴史の流れや世論の流れに、ここまで抵抗する官僚を見て、悲しくなります。
いずれにしても、国民の官僚に対する信頼は低下するでしょう。「官僚は守旧派」「国民より自分の利益優先」と。有能な官僚は、この事態をわかっていても「中央集権」「個別権限」に固執するのでしょうか。それとも、自分のとっている行動の意味が理解できないほど「無能」なのでしょうか。しょせんは、その程度の集団だったのでしょうか。続きは副業の「時評」インタビューを読んで下さい。(10月9日)
新聞各紙は、各省の抵抗を伝えています。9日の朝日新聞は「官邸指示に省庁抵抗」、日経新聞は「厚労省は健康保険の補助率削減、国交省は交付金化を検討」でした。
補助率削減は、15年末に総理が拒否したものです。交付金化は、税源移譲になりません。いずれも、閣議決定「骨太の方針」に反します。総理が受け入れるはずも、ありません。官僚は、なぜそのような案を検討するのでしょうか。それぐらいしか、智恵がないからでしょうか。
そもそも、「各省の補助金を廃止し、中央集権をやめる」というのが三位一体改革です。各省の抵抗は、「有罪判決を受けた被告」が反論しているようなものです。
地方団体が「要らない」といっている補助金を、押しつけようとするところに、抵抗の「おかしさ」が見えますよね。(10月9日)
11日の朝日新聞社説は、「補助金削減 反対するなら案を出せ」でした。
「各省庁が、地方案を精査し、意見を言うのは当然のことだ。だが、それは三位一体改革を進めるうえで建設的なものでなければならない。補助金を通じて維持してきた自らの事業や権限を守ろうとしたり、自治体に圧力をかけようとしたりすることは論外だ」
「あれほど補助金をほしがった自治体が、もう要らないと言う。補助金を減らしていけば、各省庁とも政策の立案という本来の仕事に取り組みやすくなる。官僚にとっても損はないはずだ」(10月11日)

三位一体改革22

26日の読売新聞社説は「補助金削減 地方の裁量増やす基本忘れずに」でした。「補助金は思い切って減らし、税源移譲により地方の裁量を増やす方向で議論を深め、最終方針をまとめるべきだ」。
また「財務省は、公共事業関連については、補助金を削減しても税源移譲できないとしている。・・だが、建設国債にしてもいずれは税金で償還されることを考えれば、ほかの補助金と区別する理由にはならない。スリム化を図りながらも、補助金削減分の一定割合は、地方に移譲するのが筋だ」とも。こういう主張がついに新聞でも出てきました。
27日の日本経済新聞社説は「補助金削減反対一点張りでは通らない」でした。
「何とも奇妙な光景である。補助負担金をもらっていた地方はもう要らないといい、配分する側の各省はぜひもらってほしいと頼み込む。時にはもらわないと大変なことになるぞと脅す。役回りが逆である」
「関係各省はこの削減案に反対の大合唱である。これらの補助負担金を廃止すれば、税源移譲しても、事業が縮小しかねないし、財政力の弱い自治体では事業の実施が困難になり、地域間格差が広がってしまうという主張はほぼ共通している」
「しかし、社会人になった息子が仕送りは要らないというのに、無理に押し付ける親と同じで、説明はつけにくい。教育をないがしろにし、老人福祉施設などの整備を怠る自治体なら、住民が放っておくはずがない。まともな行政サービスをしない首長や議会があれば、選んだ住民の責任という当たり前の自治が機能する形にするのがなぜいけないのか」
「小泉首相は地方に削減案の取りまとめを要請した以上、尊重する責任がある。各省も反対だけでは責任を果たせない。もっと地方の裁量が広がるいい対案があるなら示せばいい。関係閣僚は地方案に対して、省益の代弁に終始してきたが、間もなく内閣改造がある。省益を超えて、指導力を発揮できる閣僚をそろえなければ、改革は進まない」(9月27日)
27日夜、内閣改造後の記者会見で小泉総理は、内政問題の大半を、三位一体改革と郵政民営化に費やしました。そして、「三位一体改革は、年末にかけて大きな課題であります」と述べました。
10月4日から毎日新聞が、「三位一体改革の現場:地方はどう変わるのか」の連載を始めました。野倉記者は、次のように解説しています。
「厚生省出身の浅野史郎宮城県知事は、・・『省庁は「我々が補助金でミニマムを保障している」と考えているが、政治という場で納税者が鍛えられる過程を経なければ、日本はいい国にならない』と話した。補助金による全国一律の行政を選ぶか、格差拡大のリスクを抱えつつも住民自治のプロセスを重視するかー。問題は国の在り方そのものにかかわっている」
産経新聞では、藤原正彦お茶の水女子大教授が「義務教育は地方分権になじまず」を書いておられました。でも、このような主張をなさる方の通例として、義務教育のどの部分が地方分権になじまないのか、分別して述べておられません。今も、小中学校は市町村立で、先生は地方公務員です。これを、国立にするという主張でもないでしょうし・・。また、先生の給料=教育の水準と、話をすり替えられるのです。(10月4日)
5日の読売新聞は「どうなる懸案-小泉新体制」連載の2で、三位一体改革を取り上げていました。「根強い省庁、閣僚の抵抗」です。「先行きを懸念する麻生総務相は、首相によるトップダウンでの決着が不可避と見る。『地方への3兆円の税源移譲を決めたのも、税源移譲に見合う補助金を地方に考えさせたのも首相。最終的には首相の決断だ』」
日本経済新聞5日のコラム「春秋」は、イチローとシアトルから、アメリカの伝統を取り上げています。「政府が口出ししない結果、個人が自分自身で何でもやる習慣がつく。他からの助けを求めず、自分で考え対処する」というトクヴィルの言葉を引いています。そして、三位一体改革の必要性を述べています。
三位一体改革は分権の一部であり、日本の政治と文化を変えようとするものなのです。(10月5日)
6日の朝日新聞朝刊は、大きかったですね。1面トップで、紙面の半分を使って「地方へ補助金維持したい」「官庁圧力」でした。2面ではその解説「首相の指導力かぎ」がされていました。板垣記者ありがとうございます。署名入り記事は重みが違いますよね。
これまでの中でも、この記事は地方財政関係では「史上最高」の扱いだったと思います。大きさだけでなく、内容もインパクトがあります。西日本新聞も2面で大きく取り上げていました。
5日には、地方団体代表が官房長官に申し入れをしました。要点は「前回の関係大臣の発言に失望した。これでは、三位一体改革、地方に行政を任せるという基本方針にもとるんじゃないか。同じことを閣僚が言い続けて、それに反論すのでは意味がない」ということです。
三位一体改革をめぐる「せめぎ合い」「抵抗」については、追って解説する予定です。
一方、6日の毎日新聞朝刊は、「国債発行抑制、三位一体改革に期待」を大きく伝えていました。財務大臣が総理に、来年度の国債発行額を抑制する方針を伝えたとのことです。それ自体はいいことです。でもその要素は、景気回復による税収の増と、三位一体改革による歳出の削減だそうです。
財務省から見ると、三位一体改革は「歳出削減」なのです。もう一つ、国は、それ以外の歳出削減努力はないのでしょうか。(10月6日)
10月4日に「新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)」が、「小泉内閣改造後の政党政治のあり方に関する提言を発表しました。文章は日本の政治の在り方に関するものですが、その中で第2番目の項目として、三位一体改革の進め方が取り上げられています。概要は次のとおりです。
「小泉内閣は三位一体改革で責任ある対応を」「三位一体改革は、小泉改造内閣の真価が問われるきわめて重要な『試金石』。各省大臣は『政権公約を小泉首相とともに共有する内閣の一員』として行動を。各省の個別的抵抗を統制するのは小泉首相の責任。各省は、仮に地方の提案に反論があるのであれば対案の提示を。」
詳しくは、本文を見てください。(10月5日)