財政論2

パネルディスカッション「都市対地方:財政、公共事業、一極集中の是非をめぐって」発言骨子(続)
財政論1から続く
3 財政から見ると
(1)都市から地方への財政移転
代表は、補助金(公共事業、農業など)と地方交付税。
地域間格差と財政問題を議論するときには、一人当たり所得やGDPが比較される。一方、税金がどのように配分されているか、補助金と交付税で分析するのが主な手法。
しかし、補助金と交付税のすべてが、地域間格差を埋めるためのものではない。
財政移転を二つに分けて考えるべき
①対人サービス
ナショナルミニマムといわれる支出は、地域でなく個人に着目して配分される。教育、医療、介護など。
これらは、1人当たりほぼ同額の支出。全国一律のサービス水準である。一方で、地方団体に事務を担当させているので、税収格差がある。それを埋めるための手法が、補助金と交付税。
②公共事業や産業支援
これは、国民1人あたりで支出していない。これを、どう評価するか
通常、都市対地方を比較する際に、公共事業費を住民1人当たりで比べるが、面積当たりで比べると東京が圧倒的に大きい。
また、公共事業支出が、地域の人たちに帰属しているとは限らない。地域外の大手企業が受注することを考えればわかる。
(2)経済論と政治論
このように、地域間再配分と国民間再配分を、分けて議論しなければならない。
そして、国民間の再配分は、まさに財政の仕事。
地域間の再配分は、この国をどうつくるか政治の仕事。
いずれにしても、この国のかたちをどうするかの問題。
補助金交付税の地域間帰属分析は、さらに三位一体改革議論も、行政分野だけの「狭い議論」でしかない。
4 国際比較
中国財務省幹部から、質問を受けたことがある。
「日本では、経済発展による地域間格差、人口移動にどう対処したか」「人口移動を法律で禁止したのか」
私の答は、「日本は、(最初に述べたように)いくつかの組み合わせで処理をした。人口移動は禁止しなかった。」
中国では、経済発展格差による人口移動は、人口増加問題に次ぐ、重大問題。
一方、先進諸国では、この問題はどのように設定されているか。
社会文化的背景が違う。ドイツ、フランス、アメリカ。
それによって、問題意識も、用いる政策も違う。
純粋経済学のみで議論したり、解決する問題ではない。
5 林正義先生(財務省研究所)からのコメントに対する発言
林先生が指摘されるように、現在の日本では、都会と地方とどちらが果たして豊か。
いつまで、一人当たり所得(お金)で、豊かさを測るのか。
西ヨーロッパ各国に比べ、一人当たりGDPでは1.5倍になっている。でも、幸せを感じない。
豊かさと平等を達成した日本。キャッチアップの終了は、戦後型政治の終了でもある。