カテゴリーアーカイブ:行政

政治の混迷、自民党を支える業界団体の消滅

2025年8月13日   岡本全勝

8月10日の日経新聞「風見鶏」は、山内菜穂子記者の「現役世代、怒りの矛先は何か 減税論が示す自民党政治の限界」でした。
自民党対社会党の対立構図が、はるか過去の話となり、自民党対民主党の対立も野党の多党化で崩れました。そして、自民党を支える業界団体もほぼ消滅し、政党は社会の利害対立、国民の要求をすくい上げることができなくなっています。戦後、ある程度機能した政党政治が、機能しなくなったのです。しかし、各政党は次への転換(政策の提示、国民の不満や意見の吸い上げ、支持者の確保など)に熱心ではないようです。与野党ともに、執行部の責任を問い、交代を議論すること以上に、この役割と支持確保を議論すべきです。

・・・税金は自分たちのために使われていない――。現役世代を中心にこんな怒りが渦巻いている。

現役世代が生活苦などから減税を要求する動きは、昨年末から本格化した「財務省解体デモ」で注目を浴びた。成蹊大の伊藤昌亮教授(社会学)によると、参加者は賃上げを期待しにくい自営業者や主婦、中小企業従業員ら様々だ。
「彼らは労働者ではなく納税者として団結しているため、緊縮財政を象徴する財務省が悪者になった」。労働組合なら企業の経営サイドに要求が向かう。労組に入る労働者が2割を切った今は敵意の対象が政府になるという見方だ。手取りが減る税金や社会保険料がターゲットになりやすい。

京大の諸富徹教授(財政学)は減税の要求に別の背景があると指摘する。これまでの政策決定のしくみが機能しなくなった点だ。
自民党は業界団体が要望する政策を実現し、その見返りに票を集めてきた。組織や団体から距離を置く人が多くなった現在は、業界向けの政策では響かない。結果として「減税のように幅広い人に一挙に利益を与える政策が選ばれやすくなっている」と分析する。

税や社会保険料の負担感を減らすだけでなく、納税への納得感をどう高めていくかも重要になる・・・

やはり政策は官僚が決めている?

2025年8月12日   岡本全勝

8月9日の朝日新聞に「コメ足りませんでした 農水次官ら、自民会議で謝罪」が載っていました。

・・・コメの増産に向けた政策転換について、農林水産省は8日、自民党の農林関係政策の会議で説明した。報道陣に公開された冒頭で、渡辺毅事務次官が「コメは足りている」と誤った主張を続けていたとして謝罪した。
渡辺次官は、コメ価格の高騰の要因を検証した調査により、コメ不足はないという誤った前提で行政を進めていたことが明らかになったとした。「この場を借りておわびを申し上げたいと思います。どうもすみませんでした」と述べ、ともに立ち上がった農水省幹部らと頭を下げた・・・

ここで見える構図は、米の生産目標設定とその管理は、官僚に権限と責任があるということです。農水官僚が自民党の部会に対して謝るのは、権限と責任が官僚にあって、政治家にはないということを示しているようです。政治における「官僚主導」は、まだ続いています。
ところで、農水省が謝る相手は、自民党でしょうか、国民でしょうか。

高齢社会対策大綱(2024年9月)

2025年8月11日   岡本全勝

2024年9月に、「高齢社会対策大綱」が閣議決定されました。もう1年近く前のことになります(書こうと思いつつ、放置してありました。いつものことながら反省。このホームページは速報性が売りではないから、よいでしょう)。
紹介したいのは、高齢者対策として、地域における社会参加、その場を作ること、地域の側からも課題解決に高齢者の参加を期待することが、取り上げられていることです。関係か所を引用します。

(3) 地域における社会参加活動の促進
① 多世代による社会参加活動の促進
高齢期における体力的な若返りや長寿化を踏まえ、長くなった人生を豊かに過ごすことができるよう、高齢期においても社会や他者との積極的な関わりを持ち続けられるようにすることが重要である。仕事の中でしか社会とのつながりがない場合には、定年退職とともに望まない孤独や社会的孤立に陥る場合もあり、高齢期を見据えて、高齢期に入る前から地域とのつながりや居場所を持つ機会を増やす取組も求められる。
また、地域社会の観点から見ても、地域を支える人材の高齢化や人手不足が進み、高齢世代から若年世代への役割の継承も課題となっている中で、地域でのつながりや支え合いを促進し、地域社会を将来にわたって持続可能なものとしていくためには、地域の社会課題に関する学びの機会の確保や担い手の育成を図ることが必要である。
こうした観点から、多様で複合化した社会課題に対応していくため、幅広い世代の参画の下、地方公共団体、大学等、企業・団体、NPO、地域住民等の多様な主体の連携により、地域社会の課題解決に取り組むためのプラットフォームの構築や活用の促進を図る。その一環として、幅広い世代から地域社会の担い手を確保するため、地域の仕事や社会活動、学習機会等の情報を一元的に把握でき、それぞれの働き方のニーズや状況に応じて個々の業務・作業等を分担して行うモザイク型のジョブマッチングを含め、多様な活躍の機会が提供される仕組みの構築を図る。こうした仕組みの構築に当たっては、施策分野の壁を越えて分野横断的な活動を行うための中間支援組織の育成・支援を図るとともに、住民の生活圏・経済圏の状況等を踏まえつつ、行政区域を超えた広域的な連携が効果的に行われるよう留意する。

地域での居場所作りについては、こども食堂が高齢者や外国人をも包摂しつつあります。「こども食堂、高齢者や外国人の居場所
内閣府政策統括官(共生・共助担当)は、まさに社会課題を扱う、これからの行政の主役だと、私は考えています。産業振興や行政サービス拡充ではなく、生活者を対象としてその困っていることを解消しようとする行政です。これまでは、このような課題は、個人や家庭の問題として片付けられていました。しかし、よくよく見ると、彼ら彼女らが暮らしにくいのは、社会の側に問題があるとわかったのです。
社会の意識や仕組みなので、行政だけで解決できるものではなく、企業や非営利団体の力も重要ですし、国民の意識が変わる必要があります。

審議会、政治家の隠れ蓑?

2025年8月8日   岡本全勝

8月6日の朝日新聞に「「6%ちょうどなんてダメ」決定権ない大臣の介入 最低賃金引き上げ、激しい駆け引き」が載っていました。
・・・最低賃金の目安は4日、過去最大の63円(6・0%)増の1118円で決着した。44年ぶりに7回に及んだ審議の舞台裏では「6・0%」をめぐる激しい駆け引きが繰り広げられた。
「6・0%ちょうどなんてないだろう。全然ダメだ。もう一声。これは政治判断なんだ」
4回目の審議会を終えた翌7月30日、永田町の庁舎を訪れた厚生労働省幹部に、賃金向上担当相を兼務する赤沢亮正経済再生相が言い放った。
審議会は、労使の代表と公益代表の有識者で構成する。赤沢氏に決定権はない。だが、公益代表をサポートする立場の厚労省側が示した内々の6・0%を、赤沢氏は上積みを求めて突き返した・・・
・・・審議会が15年ぶりの6回目に突入した今月1日、赤沢氏は経済団体の幹部を呼び、引き上げに理解を求めた。審議会とは別に、閣僚が直接要請に動くのは異例。関係者は「政府がやるなら審議会はいらない。勝手にやってくれ」と憤慨した・・・

ここで見えてくるのは、政治家か決めるべきことを、審議会に委ねている。いえ、審議会という形式を取りつつ、政治家が決めていることです。
私はかねて、最低賃金の決定を審議会に委ねず、内閣か国会が決めるべきであると主張しています。国民の利害が対立する案件は、政府が決めるべきです。なお正確に言うと、最低賃金は中央審議会は目安を決め、各県ごとの金額は厚生労働省の出先である各労働局長が決めます。よりひどい状態です。
最低賃金、政治の役割」「コメントライナー寄稿第6回

審議会で決めるようにしたのは、「関係者の意見を聞きました」ということとともに、官僚は責任を取ることができないので、「審議会が決めました」という体裁を取ったからでしょう。
かつて、審議会は「官僚の隠れ蓑」と言われました。審議会の裏で官僚が全てを仕切ることが多かったからです。現在の「政治主導」の下では、「政治家の隠れ蓑」と言うべきでしょう。

能登地震、県庁欠けた主体性

2025年8月5日   岡本全勝

8月2日の朝日新聞が「能登地震、甘かった想定・欠けた主体性 県の初動、検証委が報告書」を伝えていました。

・・・昨年1月に発生した能登半島地震での石川県の初動対応について、有識者による検証委員会が報告書をまとめ、1日に公表した。最大の課題として、災害対応における県職員の当事者意識の欠如と事前の想定の甘さを指摘。それが対応の遅れにつながったとした。
検証委は、発生から約3カ月間の初動対応をめぐり、県職員約3500人に加え、国や自治体、支援団体約100団体にアンケートを実施。その結果から53の検証項目を洗い出し、それぞれ課題や改善点を列挙した。報告書では、各項目の検証結果を踏まえ、ポイントを七つに整理した。

県組織の災害対応体制については、職員自身や家族が被災したり、年末年始で帰省したりしていたため、出勤困難者が多数にのぼり、参集した一部の職員に負担が集中。一方、発生から1週間の出勤率が50%を下回る人も多く、全庁的な対応に至らなかったとした。
また、庁内に組織横断チームを設けたものの、情報を集約・整理して共有する体制になっておらず、発生直後はチームの情報が各部局に伝わらなかったため、業務に支障が生じたとした。
これらを通じ、「職員の災害対応意識、組織として全庁体制で対応する意識が希薄で、対応が受け身」だったと厳しく指摘した。

県の受援・応援体制をめぐっては、被災6市町に連絡・調整役として派遣した職員に関し、市町へのアンケートやヒアリングで、「指示がなければ動かず、何をしているのか分からなかった」「相談しても『市町の仕事』との返事が多く、県で何ができるかを検討してほしかった」との回答が寄せられたという。
「派遣の意義があるのか」という厳しい意見もあったといい、「被災市町を支えるという姿勢が不十分」と指摘した・・・

制度や組織は作っただけでは、機能しません。全体の目標設定、下部組織への適確な指示、職員の意識の共有など、運営に左右されます。