カテゴリー別アーカイブ: 行政

行政

過去の歴史に上書きをする

5日の読売新聞論点に、村井友秀防衛大学校教授が、「日中防衛交流の課題。軍事バランス、均衡必要」を書いておられます。本論もなるほどと思いましたが、次の主張が興味深かったです。
・・自衛隊を積極的に海外に展開すれば、平和国家日本のイメージを世界に広めることができる。冷戦後、ドイツは積極的に軍隊を海外に展開し、過去のナチス軍のイメージを「上書き」した。過去の日本軍による侵略のイメージを一掃する効果的な方法は、自衛隊の国際協力活動によって、過去の日本軍のイメージを「上書き」することである。カンボジアでは自衛隊の活動で、「日本帝国陸軍」の記憶は過去の歴史に退いた・・

公共政策の新地平

日経新聞「やさしい経済学」は、15日から、広井良典教授が「公共政策の新地平」を始められました。
・・従来の公共政策論は一般的・抽象的な政策決定プロセス論か、特定の政策領域のみに関心を向けた個別政策論のいずれかに二極化しがちであった。行政の縦割りがそれを助長してきたが、今後は政策の中身に踏み込むと同時に、異なる政策分野の関係やそれらの統合を主眼とした新しい公共政策論が求められる・・

参院選の評価

3日の日経新聞経済教室「07年参院選、何を残したか」は、飯尾潤教授の「政権選択可能な環境作れ」でした。
・・次の総選挙までに解決すべき問題が、少なくとも二つある。一つは、自民党と民主党の双方が、政権公約(マニフェスト)を改善することである・・もう一つの課題は、参院の役割の見直しである。採決になれば多数党の法案がそのまま成立することを前提に審議日程を窮屈にするとか、審議拒否をめぐる駆け引きを繰り広げる「国会日程」と呼ばれる従来型の国会運営では、物事は何も決まらない。多数決だけでなく、話し合いによる妥協といった要素を加味しなければ、衆参ねじれ時代に立法はできない・・

7月30日の東京新聞夕刊文化面は、山口二郎教授の「参院選を読む。シンボルから生活への回帰」でした。
・・今回の選挙は、自民党が陥っている深い矛盾を浮き彫りにした点でも、印象深い。一方で人々は古い自民党を解体してほしいという欲求を持っている。他方で、農家、地方の中小企業主など長年自民党を支えた人々は、地域社会や人間を顧みる温かい政治を取り戻して欲しいと願っている・・
自民党が危機を乗り越えて政権を持続するのか、それとも民主党が政権交代を実現するのかは、現在の自民党が陥っている矛盾を打開する政策を作り出せるかどうかにかかっている。透明性が高く、公正な政治手法を確立しつつ、政策内容としては地方や弱者に適切に配慮するという課題への答えを先に見いだすのはどの党であろうか。

政治の構想力

27日の日経新聞夕刊「ニュースの理由」は、英国首相、権限移譲を議会に提案」でした。
・・英国のブラウン首相は7月初め、外国との改選決定権などの12の分野で、首相権限を縮小し議会の発言権を高める方針を示した。6月末に就任した新首相による議会初演説での提案で、国家のガバナンス(統治)改革に強い意気込みを示した・・
イギリスは成文憲法がなく、慣習法で憲法を構成しています。それを差し引いても、首相が議会と内閣との関係を再構築しようとするのは、たいしたものです。
「制度は人間がつくるのだ。それは政治家の仕事であり、首相の責任だ」ということです。日本では、制度を守ることが絶対善であるかのような言説もあります。それは公務員の務めであって、政治家の仕事は時代に合うように制度を作りかえることです。私はそう考えています。政治家も官僚も、構想力が勝負です。

参議院選挙の意義

29日の朝日新聞「耕論」は、「参院選、この一票」で、待鳥聡史教授、松原隆一郎教授、宇野重規准教授の三方が意見を述べておられました。本論から外れることもありますが、興味深かった部分を紹介します。
・・参院と内閣の間に、どういう関係が成り立っているかがポイントになるが、私の考えでは、参院は内閣との間で信任関係をつくっていない・・衆院は内閣を不信任できるし、内閣側は衆院の解散権を持っている。だが、参院は内閣を不信任できず・・つまり、参院は議院内閣制の中で例外的な存在なのだ。
・・衆院への小選挙区制の導入やマニフェストの普及によって、衆院選の政権選択選挙としての性格が確立し、衆院と内閣をめぐる新たな制度的枠組みができつつある。参院と内閣、参院と衆院の関係も、それに応じて変わっていくべきではないか・・(待鳥教授)
・・個人と社会の関係から考えよう。戦前は、天皇とわれわれ赤子としての国民、というつながりが社会に秩序を与えた。家族制度も強かった。戦後はいずれも崩れ、かわって個人と社会の間に企業と官庁が入ってきた。長期雇用制度のもと、家族的な関係でもあった。いま、官庁は弱体化し、企業も変化している・・媒介だった企業の求心力が下がった後、個人と社会の関係はどうなるのだろうか・・
年金の問題は、社会の仕組みをどう作るかでもある。高齢者の扶助は、かつて家族が行ってきたが、それができなくなり、社会が行うようになった。若い世代が同時代の高齢者を支えるのが賦課方式だが、これは世代を超えたつながりをイメージしている。この制度が良いか悪いかは別にして、一つの社会モデルだ・・
「どうせ、なるようにしかならない。でもそう悪くはならないだろう」といった信頼があったため、選挙から足が遠のく人が増えていた。しかし信頼は崩れた・・(松原教授)
今回の参院選の特徴は、争点が憲法から格差、さらに年金と、脈絡なく入れ替わっていったことだ。この「脈絡のなさ」には、二つの意味がある。一つは、各党が争点を選ぶ際、これまでの自党の議論や政策をどれだけ踏まえたのか疑わしいという意味だ。もう一つは、自党が主張する争点が他党との間でどのような関係にあるのか、なぜ自党の争点が他党の争点より重要なのか、説得力ある議論がなされていないことである。
・・今の時代、私たちは日々、自らの生活のあらゆる側面で責任を問われている・・そんな中で、どこまでが自分で選択し処理するべき問題で、どこからが自分の力では解決しようがなく、社会や周りの人の力を借りてやっていく問題なのか・・「私」と「公」の線引きと言い換えてもいい。公があって私があるのではなく、私では対応できない問題を公の問題として再定義していくしかない・・(宇野準教授)