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行政

政治と経済学者

8月6日付け日経新聞、経済教室60周年座談会から。
大竹文雄教授:日本の経済論壇の現状についていえば、まだまだ経済学に基づかない感情論が多いかも知れない。しかし、方向性としては少し前よりは良くなったと思う。やはり経済財政諮問会議の影響は大きかった。経済学者が閣僚になったり、日銀の政策委員会のメンバーに入ったりしている。そうしたところからの発言は経済学に基づいており、それを理解しないと物事が進まなくなってきている。
岩本康志教授:経済学者がトップレベルの意思決定に関与して官僚機構と戦うのは、緊急避難的な改革としてはありうると思うが、持続可能なシステムかどうか。政策担当者が経済学的な考え方をしっかり持ち、草の根で正しい意思決定がなされる形にすることこそ、本筋ではないか・・

政治とは過程

(政治とは過程)
6日の読売新聞「地球を読む」は、佐々木毅教授の「日本外交の課題、対北戦略練り直しを」でした。
「北朝鮮のミサイル発射をめぐる目まぐるしい安保理での外交交渉は、外交についての素晴らしい教材を日本国民に提供してくれた。特に、日本政府の主張がどのような形で取引され、変形され、一定の結果につながるかを如実に実感させられたことに加え、日本だけでなく、どの国の外交力にも可能性と同時に限界があることがはっきりした」
「アメリカにも中国にもできないことがある。その中で各国政府がどのような位置取りを選択するか、目まぐるしい役割交代をどうこなすかに「可能性の術」としての外交の要諦があるが、日本外交はほとんど一つの役割しか果たせなかったこともまた事実である」
「当初の日米案が中国とロシアの反対によって修正を余儀なくされたにせよ、安保理全会一致の北朝鮮非難決議が成立したことの意味は大きい。今や中露も、そして韓国も従来以上に北朝鮮政策の見直しを迫られざるを得なくなった・・・」
(日本の外交デビュー)
「日本の外交論議は長い間憲法解釈論議と混線し、外交は外務官僚を中心とした極めて一部の人間だけが関与してきた(政治家の関心の低い)政策領域であった。ところが小泉政権の下で事態は変わった。「小さな政府」の名の下に利益配分型政治が抵抗勢力と名指しされ、昔日の存在感を失うとともに、外交問題が政治家にとって新たなリソースとして浮上してきたからである・・・」(8月7日)
8日から朝日新聞は、連載「小泉時代とこれから」を始めました。「5年間の小泉政治は日本をどう変え、次の政権にどんな課題を残したのか」。第1回目は、佐々木毅教授の政治と政党です。
「結局、再生したのは民間セクター、今までは民間が困っていたらすぐに手を差し伸べて助けた。それをしないことで、民間セクターの体質改善、強化を促した。これに対し、政府のあり方については規模を小さくする議論はあるが、どう変えるかがない。とりあえず小さくするというだけ。郵政や道路公団の改革には手を付けても、政府本体の構造改革は行われていない」
「言い換えれば、政府の競争力が上がっていない、ということだ。そういう意識が政権にあるのかも疑わしい。ただ小さくするというだけで、競争力に関するアイデアは見あたらない」
「グローバリズム化が進むのに任せるだけでは、国民の支持は得られない。グローバル化を進めるだけでいいのなら、政府は何のために存在するんだ、という問題が出てくる。政府としては『存在する意味があるんだ』ということをいわなきゃいけなくなる」
「5年間で政治家の質は向上したのか、とうことがある。問題は極めて深刻で、政党の責任は重い。新しい人たちが登場することは結構だが、どこでどういうトレーニングを受け、どういう基準で選ばれて議員や閣僚などになるのか、甚だ心もとない状態だ」(8月8日)

 

気になった記事から

7月12日の読売新聞「論壇」、菅野覚明教授の「若者に国を託そう」。
「今日、あらためて国家やナショナリズムが問われているのには、たぶんそれなりのわけがあるのだろう。世間の噂を信ずるならば、戦後日本の体制が根本的につかえなくなってきたからということらしい。だが、もしそうであるとするなら・・国家論の本当の主体は、未だ明確な自己表現を持っていない、20代、30代の人たちであるはずなのだ。明治以来、転換期の国家像に展望を拓いてきたのは、功罪はともかく、幕末の志士にせよ・・いずれも長老たちの理解を絶した若い力であった。たぶん同様に、もし今という時代が本当に転換期であるなら、次の時代を切り拓く力は、今どきの若者のわけのわからなさの内にこそ秘められているであろう」
「次の世代への信頼なしに、国家論など成り立ちようがないのである」
8月6日日経新聞別刷り「あっと、データ」、世界価値観調査2000から。戦争が起きたら国のために戦うかという問に「はい」と答えたのは、ベトナム94.4%、中国89.9%、韓国74.4%、ロシア63.8%、アメリカ63.3%、ドイツ33.3%、日本15.6%。
8月2日の朝日新聞夕刊「文化」、「厳しい若者の対日意識。中国で80年以降生まれ調査」。日本人の一般的なイメージは、勤勉75%、有能69%、強い62%。人間性が良い10%、悪い44%。信頼できるが15%、信頼しがたい53%。日本、米国、韓国、フランスなどの企業に同じ条件で就職が決まった時に、日本企業を選ぶ人は6%、全く思わないが58%、あまり思わないが18%。

政策決定の透明化

日本銀行が31日に、金融政策決定会合の議事録を公表しました。1日の各紙が伝えています。
これは、1998年の日銀法改正で、定められたものです。政策の決定過程を公開し、透明性を確保するのです。今回公表されたのは、10年前の議事録ですが、会合直後に日銀総裁が記者会見し、議事要旨は1か月後には公表されます。読売新聞は、アメリカ・EUと比べ、日本がかなり充実していることを、表にして示していました。
政策決定過程の公開・国民への説明は、近年の政治・行政改革の重要な要素です。もっとも、日銀は経済に大きな責任を持っていますが、狭い意味での「政府」ではありません。議事録公開でも、政府からの独立性確保が、一つの焦点になっています。

災害復旧経費

今日は、衆議院災害対策特別委員会で、答弁の機会がありました。豪雨災害の応急や復旧にかかる自治体の経費を、特別交付税で措置することになっています。「大丈夫か」との質問に対し、「きちんと措置します」という答弁をしました。
自治体による応急や復旧措置が、住民の被害についての「保険」だとすると、特別交付税はその「再保険」です。各自治体では対応しきれないものを、国が引き受けます。もちろん、それぞれの掛け金は、税金です。