カテゴリーアーカイブ:行政

公共サービスと料金

2010年12月16日   岡本全勝

全国市長会の機関誌『市政』2010年12月号に、中邨章明治大学教授の「自治体の信頼と危機管理」が載っています。その中で、アメリカでの消防・救急の費用負担が、紹介されています。
救急車を呼んだら、「料金を支払えるか」と聞かれた例や、あらかじめ75ドルの税金を払っておかないと消防車が来てくれない例が、出ています。後者の場合は、火事になったが事前に75ドルを支払っていなかったので、消防車が来てくれない。しかし、隣の家は支払っていたので、消防車が来てくれた。ただし、規則に忠実な消防隊は、現場に到着しても、出火元が全焼しても活動せず、隣家に延焼始めたら消火活動を始めたという話です。以前、中邨先生にこの話を教えてもらった時には、「忠実な消防隊」を笑うとともに(失礼)、なるほどと感心しました。

私は、消防は地域全体への危険を防止するために、無料でよいと考えます。しかし、救急の場合は、特定個人が利益を受けます。そして、緊急度の低い人が、救急車を呼ぶ例も報道されています。だから、有料にして良いと考えます。
その時は急いでいるので、後払い。または、健康保険の対象にするのも、一つの方法です。往診の場合は、往診料を払います。それとよく似た行為だと、位置づけるのです。医者が来てくれるのか、医者のところに運ぶのかの違いです。もちろん、料金設定をいくらにするのか、少々難しい問題もあります。
無料と言っても、その費用は住民が負担しているのです。その点、山岳救助の費用も、遭難者が負担すべきです。通常の生活ではなく、危険を伴うことを承知で出かけているのですから。「高額だから無理だ」とおっしゃる人もおられますが、保険に入ればよいのです。スポーツ少年団なども、保険に入っています。

国民生活白書

2010年12月16日   岡本全勝

今日12月16日の日経新聞に、内閣府が発行していた「国民生活白書」が、ここ2年間発行されていないこと、そして来年度も発行されない見込みであると、報道されていました。
この白書は、結構良いテーマを取り上げていて、私もしばしば勉強させてもらいました。家族、暮らし、ボランティアなど、社会生活を取り上げる数少ない書物でした。
この白書は、内閣府(旧経済企画庁)の国民生活局が、作っていました。ところが、2009年に消費者庁ができた時に、国民生活局が廃止されたのです。しかし、消費者庁の所管範囲は、かつて白書が扱っていた暮らしのすべてをカバーしていません。消費生活以外の暮らしが、宙に浮いてしまったのです。
内閣府には、近いものとして、このホームページでもしばしば取り上げている共生社会政策統括官があります。私は、消費者庁、食品安全委員会、共生社会統括官、男女共同参画局と、厚生労働省の家庭や子どもを担当している部局を統合して、一つの省「暮らし省」あるいは「国民生活省」を作るべきだと考えています。これからの行政は、社会資本整備や産業振興以上に、国民の暮らしを重点にすべきだと思うからです。

政権交代の先進国

2010年12月13日   岡本全勝

今日は、明治大学菊地瑞夫先生のお招きで、東アジアにおける「政策形成過程にける高級公務員の役割に関する調査研究」に出席しました。台湾国立政治大学(National Chengchi UniversityのChung-yuang Jan教授、Evan Berman教授との意見交換です
私にとっても、大変勉強になりました。先生方の関心事項は、この表題の通りなのですが、意見交換していく内に、焦点がわかりました。それは、政権交代後の高級公務員と政治家の関係、日本でいう「政と官のあり方」です。
日本は、1年前に初めて政権交代がおきましたが、台湾と韓国は日本より先に、政権交代を経験しています。特に台湾は、2度の交代を行いました。もちろん、両国とも、権威主義的独裁から民主化を実現した上でです。
台湾でも、最初の政権交代後に、新政権は「官僚は敵だ」と主張したそうです。もっとも台湾では、それまでの高級公務員は、日本と違い政治任用だったようです。また、官僚が国会議員と接触することについても、かなり違いがあります。

勉強になったというのは、次のようなことです。日本では民主主義のお手本は、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランスでした。そして、アジアでは日本だけが、民主主義を実現したと自負していました。ところが、アジアで民主化に成功した国が出てくるとともに、政権交代に限れば、日本より先に経験した国が、お隣にあったのです。お手本は、ご近所にありました。
政権交代をした時に、何をすればよいか、何をしたら良くないか。政策の転換や官僚との関係について、西欧先進国はお手本になりませんが、ご近所にお手本があったのです。なぜ私たちは、それを勉強しなかったのでしょうか。経済と同様、日本だけが成功したという慢心でしょうか。今からでも遅くありません。政治家、マスコミ、研究者が勉強すれば、有意義だと思います。
Jan教授は、公務員評価担当大臣も経験しておられます。台湾でも韓国でも、公務員制度改革に取り組んでいます。もっとも必ずしも順調ではないようです。しかし、これらの経験も、日本にとって大いに参考になると思います。日本では、目標による管理を導入したのが、まだ2年前ですから。

外国人向けの就労対策

2010年12月8日   岡本全勝

独立行政法人の労働政策研究・研修機構が、地方自治体における外国人の定住・就労支援への取組に関する調査結果を取りまとめました。先月公表されていたそうです。
詳しくは報告書を読んでいただくとして、雇い止めや解雇が増え、帰国する外国人や失業者が増えています。生活や就労の支援が、必要となっています。
そのほか、市町村では、外国人にも利用しやすくするために、ホームページの翻訳、通訳の配置、ごみ分別案内、母子手帳の翻訳などを行っています。

行政の失敗の検証・口蹄疫

2010年12月7日   岡本全勝

12月7日の日経新聞夕刊「ニュースのわけ」は、樫原弘志編集委員の「口蹄疫検証委、県・国を批判。感染防止へ備え不十分」でした。この春、宮崎県で口蹄疫が発生し、牛や豚が約29万頭犠牲になりました。それへの対応を調査していた農林水産省の口蹄疫対策検証委員会が、11月に出した報告書についてです。報告書では、お粗末な宮崎県の防疫の実態や、政府の判断ミスを厳しく批判したと、書かれています。詳しくは、記事と報告書を読んでください。
行政の失敗は批判されるべきですが、このような外部委員を入れた検証が行われるようになったことは、進歩だと思います。農林水産省では、かつて、BSE問題に関する調査検討委員会(2002年)
ありました。その報告書では、生産者優先・消費者保護軽視の行政、不透明な政策決定過程、危機意識の欠如と危機管理体制の欠落が、厳しく批判されました。
行政の失敗、それは間違ったことをした場合とともに、やるべきことをしなかった場合があります。しかし、後者は事件が起きないと、明らかになりません。行政の不作為による失敗です。これまでに指弾された大きなものとして、公害裁判(水俣病など)、エイズ薬害訴訟(非加熱血液製剤事件)、ハンセン病訴訟、1990年代の金融行政などがあります(拙稿「行政構造改革」2008年7月号)