「行政」カテゴリーアーカイブ

行政

児童の問題行動

文部科学省が、子どもの暴力行為などの調査結果を発表しました(児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査)。それによると、平成21年度中の、小・中・高等学校での暴力行為の発生件数は約6万1千件です。うち生徒間暴力が3万4千件、対教師暴力が8千件もあります。器物損壊が1万7千件です。
小・中・高・特別支援学校での、いじめの認知件数は約7万3千件です。高等学校での不登校生徒数は約5万2千人、小・中学校の不登校児童生徒数は12万2千人です(8月5日発表)。高等学校での中途退学者数は約5万7千人です。小・中・高等学校で自殺した児童生徒は165人もいます。
これらの問題は、依然として減っていません。困ったことです。

見込み違い

9日の朝日新聞環境欄が、ごみの管路収集を取り上げていました。管路収集とは、地下に張り巡らせたパイプを使い、街中のごみを真空ポンプで集める仕組みです。例えば、東京のお台場では、内径60センチ、延長15キロの管の中を、ごみが時速90キロで飛び交うのだそうです。
こうすることで、朝のゴミ出しが不要になり、収集車も要らなくなる、きれいで便利になると、期待されました。「未来都市」の「夢のごみ収集」と呼ばれたのです。
ところが現在は、お台場では、一日300トンを集める能力がありながら、使われているのは11トンです。その他の地域でも、同じようです。順次、廃止されているようです。
なぜ、こうなったか。資源ごみの分別回収が普及して、捨てられるごみの量が減ったのです。また、この仕組みだと、ごみが目に見えなくなり、分別が進まなかったとの批判もあります。よかれと思って企画したのですが、失敗に終わりました。
人間の知恵とは、この程度のもの。担当者は、悪気があって事業を進めたのではないのでしょう。負の影響や時代の進展を予測するのは、難しいということです。「税金の無駄遣い」と批判されそうですが、新しい技術の導入には、失敗もあります。

政治の限界、国民の支持

7日の朝日新聞「耕論・混迷の政治」、山崎正和さんの発言から。
・・グローバル化が進んで、一国の政治にとってはできることが小さくなっているのに、国民の期待は大きい。
・・冷戦期、日本は国内にも55年体制という対決の構造があった。大枠が決まっているから、逆に政権は政策の独自性を出しやすい。池田勇人内閣の所得倍増も、佐藤栄作内閣の沖縄返還も、政府が自分で行動したり自分で米国に働きかけたりして、結果を出せるテーマだった。
ところが冷戦が終わり、グローバル化が進むと、政府やリーダーができることが著しく小さくなってしまった。時代の大きな枠組みが変化した。金融、特にサブプライム問題は象徴的だ。状況は深刻なのに、どの政府も有効な手が打てないでいる。
「時の政権担当者はどうするのですか」という問に対して。
自分たちの権力を維持し国民の支持をつかむために、いわば「虚」のテーマ、実体の薄い課題を大きく取り上げ、ニセの対決を作る。平たく言えば劇場型政治だ。小泉元首相の発明ではない・・現代は虚の政治テーマを作りうる人物だけが、強いリーダーになれる時代だ・・
「今後の政治に期待できることは」という問に対して。
強力なリーダーシップではなく、調整型を地道にやってもらうことだ。今は矛盾する課題が多く、あれかこれかでは決められない。面白くしようと劇場型になっても困る・・

国際金融危機に学び備える

9月3日の日経新聞経済教室ゼミナールが、金融危機後の規制・監督改革の世界的取り組みを、整理していました。今回の世界金融危機・世界同時不況では、先進各国の協調が求められ、結構うまくいきました。1929年の大恐慌の再発にならなかったのは、そのおかげです。しかし、再発を防止するためには、各国が対応する(金融規制と経済政策)だけでなく、世界規模での対応の制度化が求められたのです。
それが、G20(20か国・地域首脳会議)であり、金融安定理事会(FSB、金融安定化フォーラムを改組)です。FSBは、銀行・証券・保険の各分野の規制・監督のあり方や国際会計基準に関する総合調整を行っているそうです。
国境を越えて動く金融に対して、国家を超えて規制しようとする試みです。世界政府への道のりというのは、評価しすぎかも知れませんが、重要な進展だと思います。危機に遭遇するたびに、人類は進化するという例です。

農業問題は農地問題

28日の日経新聞経済教室は、神門善久教授の「食料自給率向上は的外れ」でした。世界の肥満人口は10億人を超え、飢餓人口を上回るのだそうです。
・・日本が食料自給率を高める理由として、欧州、特に70%まで引き上げた英国の例がよく引き合いに出される。しかしこの裏に、前述の多額の農業助成金があったことを忘れてはならない。助成金はモルヒネのようなものであり、国内農業はますます助成金依存の脆弱体質になり、かえって国内農業は不安定になる。アジア太平洋地域でリーダーシップをとるべき立場にある日本が、自国の食料確保だけを考えることの副作用がどんなに大きいか、思いをはせるべきだろう。
・・すなわち、日本がめざすべきは、食料自給率の向上ではなく、食料の安定確保に向けて、相互に輸入・輸出しあう構造を構築し、農産物貿易の厚みを増すことだ。
・・日本の農業の真の危機は、食料自給率の低下ではなく、農地利用の崩壊にある。農業的にも環境的にも価値が高い平場の優良農地が、耕作放棄や蚕食的転用などで荒廃している。皮肉なことに、優良農地の保護を名目とした財政支援はさまざまに支給されている。
ところが、国土が狭い日本では、平場の優良農地ほど住宅や商業施設の建設候補地として狙われ、こうした農外転用がけた違いの利益を農地所有者にもたらす。農外転用規制をはじめとした農地利用に関する法制度の運用がずさんで、関係者の政治力次第では諸規制が有名無実化されるため、農地本来の利用がなされず、農外転用を当て込んだ農地保有がまん延。農業にたけたものに農地が集積するという通常の市場機能が働かず、農業が沈滞化している・・
私は、かつてこのHPで、「農地宝くじ説」を書きました(2007年6月23日の項)。