カテゴリー別アーカイブ: 行政

行政

自治体の商工費・労働費

少し古くなりましたが、月刊『地方財政』(地方財務協会)2007年12月号に、武田公子金沢大学教授の「貧困との闘いと地方財政」が載っていました。先生は、自治体の商工費と労働費の支出割合の低さを、ヨーロッパと比較しておられます。外国との単純比較は避けなければならないと、留保しておられますが。
私も長年、地方財政や予算査定に携わっていて、商工費は中小企業への補助金、労働費は失業対策がなくなってからはほとんど内容がないと、理解していました。自治体の出番はないものだと。
しかし、先生が紹介しておられるように、職業訓練、問題を抱えた人へのカウンセリング支援、雇用機会の創出、失業者を雇用した企業への補助、コミュニティビジネス振興など、自治体が取り組むことができることは多いのです。
これまでは企業が雇用の場をつくってくれたので、自治体はこの分野に力を入れる必要はなかったのです。かつての失業対策事業が自立に結びつかず弊害が多かったこと、労働行政を国が独占して地方団体の出番がなかったことも、原因でしょう。企業が海外に流出して、この分野の政策の重要性が見えてきました。
働く場をつくること、困難を抱えている人の自立を支援することは、自治体の大きな責務です。モノをつくるより、もっと重要なことです。そして、はるかに少ないお金でできます。

途上国の法整備支援と日本法の英語訳

カンボジアの復興に際し、日本がPKOを送った話は、皆さんご存じでしょう。このホームページでも、私の経験を含めて紹介しました。その後、カンボジアの民法と民事訴訟法の起草を、日本が支援したことは、あまり知られていません。これは大変な作業であり、また明治日本の法受容を考えると、とても重要な支援です。
今日、紹介するのは、その際に日本法令の英語訳が必要だという話です。支援に携わられた安田佳子弁護士が、次のようなことを書いておられます。雑誌「ジュリスト」2005年2月15日号。法典の起草は、カンボジア人と日本人が行ったので、クメール語と日本語で行われました。ところが、支援国会議では、その作業が進んでいるのに、知られていないどころか、法案に矛盾することが提案されるのです。「理解できる言語で成果が示されない限り、成果はないに等しい」「日本は何をやっているのかわからない」という雰囲気なのだそうです。英語が事実上の世界共通語になっていて、日本語はマイノリティ言語であることを思い知ったと、安田さんは書いておられます。そして、カンボジア人からも、難解な法律文書は、クメール語で読んでわからない時は英語で読んだ方がわかりやすいことがあると、英語訳を求められるのだそうです。そこで英語に翻訳するのですが、これがまた難事業です。「物件」はreal rightsなのか property rights か。「親族」はfamilyなのかrelativeか。これ以外にも、ご苦労なさったことが書いてあります。詳しくは、原文をお読みください。

途上国の法整備支援と日本法の英語訳

カンボジアの復興に際し、日本がPKOを送った話は、皆さんご存じでしょう。このホームページでも、私の経験を含めて紹介しました。その後、カンボジアの民法と民事訴訟法の起草を、日本が支援したことは、あまり知られていません。これは大変な作業であり、また明治日本の法受容を考えると、とても重要な支援です。
今日、紹介するのは、その際に日本法令の英語訳が必要だという話です。支援に携わられた安田佳子弁護士が、次のようなことを書いておられます。雑誌「ジュリスト」2005年2月15日号。法典の起草は、カンボジア人と日本人が行ったので、クメール語と日本語で行われました。ところが、支援国会議では、その作業が進んでいるのに、知られていないどころか、法案に矛盾することが提案されるのです。「理解できる言語で成果が示されない限り、成果はないに等しい」「日本は何をやっているのかわからない」という雰囲気なのだそうです。英語が事実上の世界共通語になっていて、日本語はマイノリティ言語であることを思い知ったと、安田さんは書いておられます。そして、カンボジア人からも、難解な法律文書は、クメール語で読んでわからない時は英語で読んだ方がわかりやすいことがあると、英語訳を求められるのだそうです。そこで英語に翻訳するのですが、これがまた難事業です。「物件」はreal rightsなのか property rights か。「親族」はfamilyなのかrelativeか。これ以外にも、ご苦労なさったことが書いてあります。詳しくは、原文をお読みください。

日本法の国際化

雑誌「ジュリスト」2010年2月15日号が、日本の法律の英語訳など国際化を特集していました。「日本法の透明」というテーマで、研究が続けられていて、その紹介です。先日、「日本の法令の英語訳」を書いたので、興味を持って読みました。いくつも考えさせられることがありましたが、今日はその一部を紹介します。
・日本の法律の条文の作り方に、構造的問題があるのではないか。例えば著作権法の「公衆通信」を、どのように外国語に翻訳せよというのか。内閣法制局のチェック体制が、海外のユーザーに向いているとは到底言えないし・・
・わが国の立法過程には、外国のユーザーの声が十分に反映しているのか。反映する必要性は、どれほど大きいのか?
・判決の文章が日本語として難解で、翻訳を依頼する前に「和文和訳」が必要な場合がある。
・日本法の在り方として、「他国(特に先進諸国)に合わせていく」という考え方と、「むしろ諸外国を引っ張っていく競争力のある法を作り輸出する」という考え方がある。いずれが適切なのか?
・英語に翻訳するにしても、対応する英単語が法律用語として特定の意味を持っている。単語を翻訳するにしても、どの単語を選ぶか難しく、たとえ1つの単語を当てはめても、正確な翻訳にならない。その条文の書かれた背景、判決のコンテクストなしでは、意味が通じない。
日本の経済活動が国際化し、海外から会社や人が入ってくると、日本の法や判例が、その人たちに理解しやすいものでなければなりません。また、定住外国人が増えると、その人たちにも理解しやすい必要があります。日本法の国際化が、必要となるのです。
国際化というのは、このようなところにも、現れてくるのですね。日本は明治時代に、ヨーロッパ法の受容に成功し、日本語で法律の教育と実務ができるようになりました。それは、ありがたいことです。しかし、それが、「ガラパゴス化」を生みました。日本人の活動が日本国内で日本語だけで完結しておれば、問題はない、なかったのですが。経済社会活動の国際化は、それを許してくれません。「第3の開国」を、実感します。「日本法の国際化」という表現が正しいか問題がありますが、こう表現しておきます。(この項続く)

事実の追求と国民的議論の片付け方・イギリスの独立調査委員会

18日の朝日新聞が、「イラク戦、独立調査委員会。英国式戦争のけじめ。前・現首相も公開喚問」を解説していました。次のような内容です。イギリスで、イラク戦争を検証する、独立調査委員会が開かれています。世論や野党の突き上げで、ブラウン首相が設置しました。歴史学者や元外交官ら5人で、構成されています。イギリス国会は強い調査権を持ちますが、二大政党制の下で、手順などをめぐって対立が起き、うまくいかないことが多かったそうです。そこで、政治的に中立で、一般の人から尊敬される議会外の「賢人」に調査を委ねる方式が生まれたのだそうです。もちろん、調査委員会にかけるということが、政治的意図を持つので、完全な中立はあり得ないのでしょうが、一つの知恵ですね。アメリカではニクソン大統領の時に、ウオーターゲイト事件の究明のために、特別検察官を任命したことを思い出します。政策ではありませんが、行政の検証として、日本でも、年金記録問題の調査のために検証委員会がつくられました。これについては、「行政構造改革 第二章第四節1政治の責任(2)行政組織の管理と業績の評価」で議論しました。