カテゴリーアーカイブ:行政

社会の安心、つながり

2021年1月4日   岡本全勝

読売新聞連載「安心の設計 支え合い あしたへ」1月4日は「住民つなぐ みんなの居場所」でした。

・・・新型コロナウイルスの感染拡大で、人と人の距離をあけることが強く意識されている。しかし、私たちの暮らす社会は、支え、支えられという関係なしには成り立たない。急激な高齢化や単身化でそうした結びつきが弱まっているとされるなか、いかに支え合いを再構築できるかが地域の未来のカギを握っている・・・

団地にできた集会所で、高齢者と子どもが一緒に時間を過ごす様子が紹介されています。
・・・建設から約半世紀が過ぎた茶山台団地(928戸)では、契約者の半数超が現在60歳以上で、独居も多い。急激に高齢化が進み、地域の支え合いの維持が課題となっている。「としょかん」は、団地再生に向け、大阪府住宅供給公社が開設。子育て中の住民らを中心に絵本の読み聞かせ会や健康講座などのイベントを開催し、そこに集う住民同士の「つながり」を増やしてきた。
「としょかん」が住民の新しい居場所として機能するようになると、「一人で夕食を食べるのは寂しい」「買い物に行くのが大変」といったお年寄りの声が聞こえてきた。
そこで約2年前、今度は、団地1階の空き室を「やまわけキッチン」という名の食堂に改装。週4日、小分けにした総菜などを販売し、その場で食事もできるようにした。
「足が弱く、タクシーで駅まで買い物に行かなければならなかった。ここができて本当に助かる」。「キッチン」が入る棟の向かいの棟で一人暮らしをしている女性(85)は笑顔を見せる。昼食と夕食の分の総菜を買いに来て、この食堂を切り盛りしている湯川まゆみさん(41)らとおしゃべりするのが楽しみという。
コロナ下で、住民の居室に弁当を配達するサービスも始めた。常連客が顔を見せなければ様子を見に行ったり、高齢で日常生活に支障が出始めた住民を心配する声が寄せられたりと、「よろず相談所」としても機能しつつある。
湯川さんは「遠くの親戚より近くの他人。きっかけさえあれば困っている人を助けたい、と思っている住民はたくさんいる。住民同士のつなぎ目になり、支え合いの輪を広げていきたい」と話している・・・

詳しくは記事を読んでいただくとして。安心には、人とのつながりが必要であること。つながりが、支え合いと居場所をつくります。
年金や介護保険制度をつくって、高齢者を支えてきました。しかし、それだけでは、安心は提供できません。そして、このようなつながりは、お金と施設だけではできません。
それを、これからの日本は、どうつくっていくのか。連載「公共を創る」での、私の主張です。

大震災から10年

2021年1月2日   岡本全勝

今年の元旦の新聞1面は、あまり明るい記事は見当たりません。各紙とも、新年にふさわしい話題を探したのでしょう。新型コロナウィルス、経済、政治、社会。悲観しているだけでは、良くならないのですが。

日経新聞は特集で、大震災から10年を取り上げてくれました。「生活再建 歩んだ10年 インフラ復旧にメド
・・・2万2000人以上の死者・行方不明者を出した東日本大震災は3月11日、発生から10年となる。今も4万人以上が避難生活を送る一方、津波で壊滅的な被害を受けた岩手、宮城、福島各県の沿岸部は、道路や鉄道など交通インフラがほぼ復旧。基幹産業の水産業の再生などに加え、東京電力福島第1原子力発電所事故が重なった福島ではロボットの開発拠点が全面開所し、関連産業の集積が進む。復興の現状と課題を整理した・・・
写真付きで、インフラや産業の復興を解説しています。

2021年3月から、10年になります。今年は、その振り返りの記事が、多くなるでしょう。私たちの取り組んできた仕事が、評価されるということでもあります。

「暴君ーシェイクスピアの政治学」

2021年1月2日   岡本全勝

「暴君ーシェイクスピアの政治学」(2020年、岩波新書)を読みました。これは勉強になります。お勧めです。

著者は、シェイクスピア研究家です。「ヘンリー六世」「リチャード三世」「マクベス」「リア王」「コリオレイナス」等の作品を基に、暴君がいかにして暴君になるのか、権力簒奪者がどのようにして権力の座に着くのかを描き出します。シェイクスピアをこのように読むのかと、感激しました。

指導者になろうとする人の話が嘘とわかっていながら、大勢の人々が信じます。地位も理性もある人が、その者に従います。そして、誰もがそんなことはないと思っていた「ふさわしくな人物」が、指導者に選ばれます。
このような観点からシェイクスピアの戯曲を読むと、出てくるわ出てくるわ。「同工異曲」とも思えるくらいです。
一つの救いは、そのような成り上がりの指導者が、長く地位を保つことなく、自滅することです。

著者は、本書の執筆のきっかけを、「今回の選挙を見て」といった趣旨としています。明言していませんが、トランプ大統領を念頭に置いて書かれたことは明白です。シェイクスピアと著者の警告は、どの時代にも通用するのでしょうが、現在のアメリカだけでなく、その他の国、日本にも当てはまる問題です。

居場所のない若者、SNSが避難先

2020年12月28日   岡本全勝

12月19日の日経新聞夕刊に「居場所なき若者 SNS「避難先」」という記事が載っていました。
・・・神奈川県座間市で9人を殺害した罪に問われた白石隆浩被告(30)は、東京地裁立川支部の裁判員裁判で死刑判決を受けた。公判では、悩みを抱える被害者がツイッターで弱音を吐いたところに被告がつけ込んでいた経緯が明らかになった。幼少期からインターネットが身近な若者にとってSNS(交流サイト)は日常から逃れられる「避難先」になり、トラブルに巻き込まれやすい実態も浮き彫りになった・・・

詳しくは記事を読んでいただくとして。
家庭でも学校でも落ち着けない、居場所のない若者が、交流サイトに避難先や居場所を求めるのだそうです。交流サイトの多くは匿名なので、弱音や本音を言いやすいのでしょう。しかし、それが犯罪の温床になるのです。

拙稿「公共を創る」第64回では、職場以外に居場所のない中高年男性社員を取り上げましたが、若者もまた居場所を探しているのですね。孤立、孤独の問題です。
本屋で、浅見直輝著『居場所がほしい――不登校生だったボクの今』 (2018年、岩波ジュニア新書)を見つけました。ここにも、居場所の問題があります。

村井宮城県知事「震災10年の復興政策」

2020年12月22日   岡本全勝

12月22日の朝日新聞オピニオン欄は、村井嘉浩・宮城県知事のインタビュー「震災10年の復興政策」でした。

―来年3月で震災から10年になります。復興政策をどう総括しますか。
「阪神・淡路大震災(1995年)と比較したら、びっくりするくらい特別な支援をしてもらいました。ただ、立場によって見方は変わると思います。被災者の立場からは『まだまだやってほしかった』、私の立場からは『非常によくやってくれた』、国の立場からは『税金を使いすぎた』、となると思います」

―税金の使いすぎ、ですか?
「国から見たら、やはり非常にぜいたくに見えるんじゃないですか。三陸縦貫自動車道を、一気に岩手まで引っぱってくれました。私が生きている間に行くなんて思っていませんでした。それが9年、10年で。防潮堤もそうです。国の財務省の目線で見ると、非常にぜいたくに見えるかもしれません。ただ、我々からすると、必要な財源で、必要なものをやりました」

―残された課題は何ですか。
「ソフト面の支援です。心のケアが必要な人には個人差があり、個別の対応が求められます。災害公営住宅でのコミュニティーづくり、人材の確保や販路開拓、子どもの不登校率の高止まりなど、課題が積み残っています。市町村やNPOと一緒に、一つ一つ取り組んでいくしかありません」

原文をお読みください。