カテゴリーアーカイブ:行政

民主主義が機能する社会経済条件

2021年1月17日   岡本全勝

1月8日の日経新聞経済教室、待鳥聡史・京都大学教授の「民主主義再生、政党改革が鍵 危機克服への道筋」から。

・・・最も正統性の高い政治的意思決定の方法として、民主主義が広く受け入れられるようになったのは19世紀半ば以降のことだ。それは代議制、すなわち普通選挙と議会の組み合わせの定着による。代議制民主主義は、有権者である一般市民の意向を議会の構成や大統領の選出に直接反映させながら、個々の政策決定は多くを政治家の判断に委ねることが基本原則である。
代議制民主主義を安定させた要因は、一般市民(マス)と政治家や官僚などの統治エリートのどちらか一方が圧倒的な影響力を持たないこと、マスの間に存在する多様な考え方を政権交代や権力分立により表出すること、統治エリートの専門能力を活用した判断を日常的には尊重し、有権者は選挙を通じて評価することにある。これらの組み合わせにより、迅速な政策決定と特定の勢力の過大な影響力排除を両立させてきた。
ところが今日、代議制民主主義を否定的に評価し、それとは異なる意思決定方法を追求する動きが先進諸国など各地で表れている・・・

・・・代議制民主主義の隆盛の出発点には、19世紀に生じた2つの決定的変化、すなわち国民国家の形成と産業革命があった。
前者は、地理的に区分された国家という領域内で、政治・経済・社会の活動がほぼ重なり合って行われ、そこに住む人々が国民としての意識を共有することを意味していた。普通選挙の広がりもこの文脈の上にある。
後者は、経済活動の中心が農業から商工業に変わり、特に工業部門で資本家・経営者と労働者の区分が生じることを意味していた。

国民国家の形成と産業革命により、政治の争点は一国内での経済的利益配分にほぼ集約された。20世紀に入ると、都市部での資本家・経営者と農村での地主の利益を代表する保守政党と、労働者や小作人の利益を代表する社会民主主義(社民)政党の対立が各国の政党間競争の基本構図となった。第2次世界大戦後には、政権交代を伴いつつ保守政党と社民政党が競争して、安定した経済成長とその果実の配分による生活水準の向上や社会保障の拡充が図られた・・・
この項続く

増える家庭内暴力

2021年1月14日   岡本全勝

1月13日の読売新聞が「増え続ける家庭内DV、19年度が過去最多で20年度は1・5倍で推移」を伝えていました。

・・・内閣府は12日、2019年度に全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられた家庭内暴力(DV)の相談件数が前年度比4795件増で、過去最多の11万9276件だったと発表した。20年度の件数が19年度同期と比べて約1・5倍で推移しているとの途中集計も明らかにした・・・
・・・内閣府は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛の影響で増加したとみている・・・

内閣府の公表資料「配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数等

大震災の検証、原発事故後

2021年1月13日   岡本全勝

朝日新聞が、1月12日から「東電「国有化」の実像 原発事故から10年」の連載を始めました。「(東日本大震災10年)「原発事故、起こるべくして起きた」 東電元エース社員の告白」、13日「東電「国有化」の実像:1 事故免責求めたが「通りませんよ」」。
既にウエッブ上では6回の連載が掲載されています。
・・・10年前、放射能を大量に放出する未曽有の原発事故を起こした東京電力はなぜ破綻を免れ、国に救済されたのか。政府の隠れた意図を浮き彫りにするとともに、実質国有化までの知られざる攻防を明らかにする・・・

重要な検証だと思います。
原発事故については、国会・政府・民間などの事故調査委員会が、事故が起きたことと、直後の対応について詳しい検証を行いました。しかし、その後の検証は十分に行われていません。
原発の冷温停止や廃炉作業ではなく、避難指示と避難行動、避難指示区域の設定とその後の解除、賠償、避難者への償いと支援といった、原発敷地外の対応です。東電と政府の対応が良かったか、足らなかったかです。事故が起きた後、そして敷地外での避難者対応の検証です。

津波被災地での避難者支援と復興については、被災者支援本部と復興庁が、検証に耐えるようにできる限りホームページで情報を載せ、記録してあります。私も後世の教訓になるように、なるべく取材に応じお話ししています。
ところが、原発事故のその後の対応は、きちんとしたホームページもなく、検証も不十分です。事実の評価とともに、関係者の証言が必要かつ重要だと思います。

国際機関で日本人幹部を増やすには

2021年1月13日   岡本全勝

1月8日の日経新聞、「国際機関幹部 増やすには」から。
・・・国際機関の主要ポストをめぐる争いが激しくなっている。米国の国力の衰えに乗じて、中国は影響力を拡大しようと積極的に動いている。世界的な秩序の土台となるルールを定める国際機関で、日本人が活躍していくには、どのような戦略が必要なのか。内外の識者に聞いた・・・

ケント・カルダー氏の発言から。
・・・何をすべきか。豊富な経験を持つ欧州に学び、彼らとの関係を培うのが重要だ。人口規模が小さいスイスや北欧諸国が要職を得ている。国際秩序への関心と貢献への意志の強さがあるからだ。
発展途上国と関係を深めることも大切だ。中国が数多くのポストを得たのは、アフリカ諸国との交流を著しく強化したことが大きい。
国際的な広報活動で、日本はあまりに控えめだ。私は新潟で横田めぐみさんの通った学校や拉致現場を訪れ、拉致問題は非道な人権侵害だと実感したが、世界は日本固有の問題とみている。同様の問題を抱える他国と組み、共通認識を広めるべきだ・・・

・・・教育の問題も大きい。浅川雅嗣アジア開発銀行総裁は米プリンストン大学で教えていた時の例外的な日本人留学生だった。自分の意見を持ち、遠慮なくディベートに臨んでいた。他の日本人は遅れて議論に参加したり、指されるのを待ったりしている。彼らも極めて正しい意見を持ち考察に満ちているが、それでは創造性は十分に発揮できない・・・。

発達障害を受け入れる社会、二つの方法?

2021年1月12日   岡本全勝

1月8日の朝日新聞オピニオン欄「ほどよい距離感って?」、熊代亨さん(精神科医)の発言から。

・・・街の精神科医として感じるのは、いまなら発達障害などと診断されるような人が、昭和の時代にはあちこちで当たり前に暮らしていた、ということです。
そうした人たちが早い段階からサポートを受けられるようになったのは良いことです。一方で、いまの社会はますます清潔で行儀良く、効率的で、コミュニケーション能力が求められる。それについて行けない人に対処する需要が高まったから、発達障害が「病気」として受け入れられたようにも感じます・・・

・・・現代社会は確かに自由です。家や身分や地域によって仕事や人間関係を強制されないし、交通機関やインターネットの発達で、距離による制約も大幅に解消しました。
そうした社会では、私たちは友人や恋人や知人として「選ばれなければ」ならない。同時に、友人や恋人や知人を「選ばなくては」ならなくなりました。SNSに好ましい投稿を続けるのも、自分の「市場価値」を高めるためだと思います・・・