カテゴリー別アーカイブ: 行政機構

行政-行政機構

事後監視型行政

18日の日経新聞は、「コムスン不正請求問題。介護保険、自治体チェック不十分」を解説していました。2000年に介護保険制度が導入されてから、2007年3月までに、指定取り消しなどの処分を受けた介護保険事業所は、全国で478件になるとのことです。介護が行政(自治体)による「措置」から、民間事業所と要介護者との「契約」になりました。すると、事業者が不正をしていないかを検査監督する必要が出てきたのです。類似の例として、建築確認があります。耐震性能を偽装したマンションが、昨年大きな問題になりました。これも、建築確認業務を民間に開放したことから、生じました。
もっとも、官が直営していると安心かというと、そうではありません。社会保険庁のずさんな年金記録問題は、官であっても問題を生むことを、しかも民間より大きな問題を生むことを示しました。
課題は、官の直営であっても、民の活用であっても、検査監督が重要だということです。しかし、事前調整型行政から事後監視型行政への転換は、まだ始まったばかりです。事後監視手法に慣れていないのです。また、人員も必要になります。金融行政が、事前調整から事後監視型に転換しましたが、その際には膨大な検査員の増員が必要だったのです。

金融行政・官僚の失敗、対行政暴力

抵当証券会社「大和都市管財」の被害者が国に損害賠償を求めた裁判で、国が負けました。6月7日の各紙が、大きく取り上げていました。消費者の被害について国の賠償責任を認めた、初めての判決だそうです(6月10日付け朝日新聞社説)。
問題は、1995年に大蔵省近畿財務局が、同社の経営状態に問題があるとして業務改善命令を出そうとしました。しかし、呼び出された社長が、あたかも同和団体であるかのような名刺を示し、「組織を挙げて闘う」と抗議すると、財務局は改善命令を撤回してしまったことです。そして3年ごとの登録を更新したことが、合理性を欠いて違法と認定されたのです。判決には、「及び腰」「先送り」「検査を放棄」といった文言が、並んでいるとのことです。
新聞は、次のことも指摘しています。
・・当時は、大蔵省による護送船団方式にほころびが見え始め、金融システム不安が広がりつつあった。金融機関の経営危機に対応する制度も未整備だった。金融庁幹部は「100%の証拠がないと、危ない印象だけで破綻なんかさせられなかった」と振り返る・・(7日付け朝日新聞「官僚の失政浮き彫り」)。

政府から独立した政策機関

9日の日経新聞「世界を語る」は、「重みを増す金融政策」で、前イングランド銀行総裁へのインタビューでした。イギリスでは、不安定な経済とポンド危機から、中央銀行の政府からの独立とインフレ目標政策を採用し、成功しました。日本でも、日銀が大蔵省から独立し、インフレ目標は立てていないものの、政策決定をより透明にしました。
私は、金融政策という国家の重要な政策が、政府とは独立して行われることに、関心を持っています。素朴な民主主義では、内閣か大統領が責任を持つべきです。しかし、これまでの経験から得られた結論は、政治が関与すると良い結果にならないということでした。もちろん、政府は総裁の任命権を持つなど、関与はします。その代わり、中央銀行には説明責任が生じたのです。
これは、NHKにも共通しています。報道は政治から独立すべきだということは、常識になっています。公共放送ということで、受信料や経営には政府と国会が関与します。しかし、放送内容には関与しないようにしているのです。

自己評価と外部評価、甘い評価と厳しい評価

ある日の記者さんとの会話
記:政策評価など、行政での評価が、重要視されてますよね。
全:そうやね。これまでの行政は、いくら予算を増やしましたという「入力」ばかり競っていて、それでどんな「成果」を生んでいるかを評価してこなかったから。「新地方自治入門」p246以下に、詳しく書いておいたよ。
記:ええ、それはいいことなんですが。でも、外から見ていると、まだまだ生ぬるいんですよ。
全:新聞社は、行政に厳しいからね。ただ、あなたの指摘に関していうならば、「自己評価」は甘くなるだろうね。
記:そうなんですよ。自分で評価すると、厳しいことは言えませんよね。内心分かっていても。特に、行政って「自分たちは間違わない」と信じている人たちでしょ。「この事業はムダだからやめよう」とか「この組織は廃止するか、民営化しよう」なんて評価が、出てきませんよね。
全:まあ、そういう点はあるわな。でも、新聞社だって、自己批判はしないだろ。
記:そうですが。だから、社内でなく社外の人に、紙面評価をやってもらってます。外部評価です。
全:それをいうなら、行政だって、審議会や評価委員会に、外部の人を入れてるよ。
記:うーん、外部の人を入れるだけじゃだめ、ということですね。外部の人にも、「身内並み」と「本当の外部」があるんですかね。
全:そういうことやろう。企業での監査法人のように、企業経理の間違いを指摘するのが使命なのに、企業と一緒に不正経理を隠蔽していた例も多いわな。評価対象に雇われていると、どうしても甘くなるのと違うかな。
記:私は、「適切に行われていた」という評価を続けているような評価組織は、うさんくさいと思っているんです。特に「概ね適切」と書いてある場合は、なおさらです。「概ね」としておいて、逃げ道を作ってありますしね。
一度でも、「こういうムダがあった」と書いてあれば、まだ機能していると思いますが。
全:そこも難しいよ。評価される側が「共犯」になって、あまり痛くない小さなミスを差し出して、「お縄をちょうだいする」と、指摘事項はそろうわな。
記:難しいところですね。
全:だからこそ、新聞の使命があるんだろ。第4の権力なんだから。がんばって。

独立行政法人制度

今日9日の経済財政諮問会議で、独立行政法人の見直しが議論されました。その場に総務大臣が提出された資料(参考資料)に、これまでの独立行政法人制度による行政改革効果や、その後の見直し効果がきれいに整理されています。独立行政法人制度が始まって、これで6年になります。この資料は、よくできた中間整理だと思います。ご利用ください。