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行政-行政機構

2006.02.12

行政減量会議での議論が、進んでいます。9日の日経新聞が、要領よく整理していました。重点削減分野(業務)を選ぶ作業で、すでに決めた8分野(農林統計など)に加え、7業務(官庁営繕など)を追加し、さらに4業務(国税・特許など)を検討対象としました。
これまでの定員削減が、全省庁一律に、人を減らすことに重点が置かれていたのに対し、今回の方法は重点業務を絞って行うことが特徴です。「全省庁一律」に対し「重点分野」、「人減らし」に対し「業務減らし」です。業務を減らさない限り、人は減らすことができないのです。
官僚が行う査定(予算・業務・人員)には、限界があります。財務省主計局も総務省行政管理局も、各省の反対を押し切って厳しい削減を押しつけるだけの権限と権威は持っていません。
各省の官僚は、予算・人員・権限を増やすことが目標の一つ(評価の基準)でした。減らすなんてことは、もってのほか。「わが省のこの業務は不要だから廃止しよう」と思っていても、そんなことは言えません。各省の官房が飲めるのは、「うちだけが削減されたのではない、横並びだから」という案です。
官僚に任せず大臣が査定をしても、同様です。各省大臣は対等であり、閣議で拒否権を持っています。内閣制にあっては、総理のリーダーシップがない限り、大胆な削減は難しいのです。
また、与党の政治主導も働きにくいです。各省・各業務分野に族議員がいるので、個別分野削減には抵抗します。党内での合意形成は難しいです。
いつも言うように、官僚主導・族議員政治ができたのは、右肩上がりだったからです。一律削減・シーリング方式は、その象徴です。よって、今回は、民間有識者による会議を使っています。問題は、これが実行の段階になったときです。当然、対象となった省庁、族議員は強く抵抗するでしょう。権限はそのままで補助金だけをなくすという三位一体改革ですら、ああだったのですから。有識者会議には、削減を実行するだけの権限と権威はありません。もちろん民主主義社会で、審議会がそこまで力を持つのは問題です。ここでも、「改革派」対「官僚・族議員・業界」の戦い、総理のリーダーシップ、各閣僚のセンスが見えるでしょう。
さて、日経新聞も指摘していましたが、業務を廃止縮小しても民間委託・独立行政法人化をしては、人件費が委託費に変わるだけで効果は少ないです。完全に廃止することが無理な業務も多いでしょう。直営から切り出したときに効率になるかどうかは、競争があるかどうかによります(拙著「新地方自治入門p245)。

行政機関スリム化意見募集

「「行政減量・効率化有識者会議」が発足しました」と書いたら、元部下からメールが来ました。「このHPだけでなく、もう一つのHPも紹介せよ」とのことです。以下、元部下からの指示です。
「岡本課長のHPでも、ぜひ機会がありましたらこの意見募集HPの宣伝をしてやってください。とても多くのかた、しかも勉強熱心なかたが多く見られているHPですし、影響力のあるHPですので」
そこまでほめられると、恥ずかしいね。でも、大堀君の指示なら喜んでPRしますよ。「国の機関でここが無駄」と思っている人は多いと思います。ぜひ、その声を届けてください。陰でこそこそ言うのは、良くないですよ。

省庁再編

最近、省庁再編(再々編)の話題が出ています。何人かの記者さんから「省庁再編の専門家としてどう考えるか」との質問があったので、一言書きます(もっとも私は専門家ではなく、体験者ですがね)。
IT関係部門がいくつかの省庁に分かれているので、それを整理統合することは、一つの案だと思います。ただし、これを「省庁再編」というのかどうか。省庁再編と言うには、霞ヶ関全体を見渡してどうすればより合理的かを考え、もう少し多くの省を巻き込んだ組み替えをするべきではないでしょうか。
ある一つの事務をとらえて、その所掌を組み替えるのは「事務の再編」であって、省庁再編とは言わないと思います。例えば、かつて国土庁を作ったとき、あるいは先般、農水省の食糧庁を廃止して内閣府に食品安全委員会を作ったときも、省庁再編とは言わなかったですよね。
私は拙著「省庁改革の現場から」で、「省庁の機能をどのように大括りするかは、識者によってさまざまな説があろう。しかし、所詮は組織をどう括るかの話で、いわば『家の間取り』の問題である。運用してみて不都合であれば、時代の要請に応じて、また再編すればよいのである」と書いています(p192)。なお、2001年の再編でも、国土交通省が巨大官庁になること、総務省の統合理念が不明確であることなどの批判がありました。さらに、あの省庁再編は家の間取りの変更以上に、家の大きさ=国家や行政の果たすべき役割の見直しをしたのでした。
IT行政についても、いろんな考えがあるでしょう。規制と振興を分けるのかどうか。ハードウエア、ソフトウエア、コンテンツをどう分けるのか。例えば、自動車の場合は、道路整備は国土交通省道路局、自動車の型式は国土交通省自動車交通局、交通規制は国家公安委員会、自動車の製造は経済産業省が所管しています。排気ガス規制は環境省、税金は財務省(国税)と総務省(地方税)。それぞれの省に与えられた政策理念に従って、このように分担されています。これを縦割りと見るのか、理念による分担と見るかの違いです。

省庁改革5周年

8日の読売新聞も、省庁再編5年を解説していました。「政治主導、道半ば」「ポスト小泉で逆戻り、統合効果・融和に課題」という見出しです。
「しかし、首相主導のもろさを指摘する声もある。省庁再編に伴う改革では、内閣法を改正し、閣議における首相の発議権を明確化した。次官会議で事前に了承した案件のみ取り上げる閣議の形骸化を改める狙いがあったが、『発議権の定義は明確でないが、首相自ら、閣議で需要案件を発議したケースはほとんどない』(内閣官房幹部)のが実情だ」
「省庁間の調整が難しい場合に、内閣官房か内閣府が調整を果たす政策調整システムも機能していない」
ご指摘点は、その通りでしょう。でも、私に相談してくれれば、もっと幅広い整理をしたのに。先日の整理を見てください。

省庁改革5周年

今日6日で、省庁改革から5年がたちます。日経新聞は「行政効率化、道半ば」「政治主導進む」を書いていました。もう5年もたつのですね。拙著「省庁改革の現場から」では、第2章で「何が変わるか」を、第4章で「残されたこと」を整理しておきました。それに沿って、現段階での進捗状況・効果を簡単に評価しておきましょう。
(仕組みの改革について)
1 省庁再編は、円滑に進んだ(官僚は抵抗しなかった)。
2 内閣機能の強化は、特に、経済財政諮問会議が効果を発揮した。内閣官房・内閣府については、まだ評価は定まらない。
(運用の改革について)
1 政治主導については、小泉総理により、官僚主導から政治主導へ、政治家(のバラバラ)主導や党との二元主導から官邸主導へ、大きく進みつつある。
副大臣・政務官の機能については、まだ評価は定まらない。
2 縦割り行政の弊害除去については、官邸主導で改善されつつあるが、評価は定まらない。
(行政改革について)
1 スリム化については、課の数・定数削減など決められたことは進んだ。さらに、定数削減については、厳しい目標が立てられた。
2 独立行政法人化も決めた以上に進み、予想以上に非公務員化が進んだ。ただし、国費の削減効果、効率化についての評価は、まだである。
3 公務員制度改革については、いったん頓挫した。
4 省庁改革では国営とされた郵政事業が、民営化されることとなった。また、政府系金融機関の整理など、新たな大きな行政改革が進められようとしている。
5 政策評価は着実に運用されているが、これの効果はまだ定まっていない。
新たな行政改革を実行するため、再び各省から職員が、虎ノ門の第10森ビルに「招集」されています。このビルは、省庁改革の時に事務局を入れるために借り上げたのですが、その後の行革、郵政民営化、そして今回の行政改革と次々と事務局が入り、「内閣官房改革別館」になっています。