省庁再編

最近、省庁再編(再々編)の話題が出ています。何人かの記者さんから「省庁再編の専門家としてどう考えるか」との質問があったので、一言書きます(もっとも私は専門家ではなく、体験者ですがね)。
IT関係部門がいくつかの省庁に分かれているので、それを整理統合することは、一つの案だと思います。ただし、これを「省庁再編」というのかどうか。省庁再編と言うには、霞ヶ関全体を見渡してどうすればより合理的かを考え、もう少し多くの省を巻き込んだ組み替えをするべきではないでしょうか。
ある一つの事務をとらえて、その所掌を組み替えるのは「事務の再編」であって、省庁再編とは言わないと思います。例えば、かつて国土庁を作ったとき、あるいは先般、農水省の食糧庁を廃止して内閣府に食品安全委員会を作ったときも、省庁再編とは言わなかったですよね。
私は拙著「省庁改革の現場から」で、「省庁の機能をどのように大括りするかは、識者によってさまざまな説があろう。しかし、所詮は組織をどう括るかの話で、いわば『家の間取り』の問題である。運用してみて不都合であれば、時代の要請に応じて、また再編すればよいのである」と書いています(p192)。なお、2001年の再編でも、国土交通省が巨大官庁になること、総務省の統合理念が不明確であることなどの批判がありました。さらに、あの省庁再編は家の間取りの変更以上に、家の大きさ=国家や行政の果たすべき役割の見直しをしたのでした。
IT行政についても、いろんな考えがあるでしょう。規制と振興を分けるのかどうか。ハードウエア、ソフトウエア、コンテンツをどう分けるのか。例えば、自動車の場合は、道路整備は国土交通省道路局、自動車の型式は国土交通省自動車交通局、交通規制は国家公安委員会、自動車の製造は経済産業省が所管しています。排気ガス規制は環境省、税金は財務省(国税)と総務省(地方税)。それぞれの省に与えられた政策理念に従って、このように分担されています。これを縦割りと見るのか、理念による分担と見るかの違いです。