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行政-行政機構

国家公務員の削減計画

6月28日の読売新聞が「国家公務員の定員削減率5%に引き下げへ…安保・デジタル化・脱炭素など業務拡大で」を伝えていました。
・・・政府は28日午前の閣議で、国家公務員の定員管理基準などを定めた政府方針を改定した。経済安全保障やサイバー対策、デジタル改革など新たな行政需要が増えていることを踏まえ、2025年度から5年間での定員削減率を10%から5%に引き下げる。
改定したのは、2014年に閣議決定した「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」で、5年ごとの削減率を10%と定めていた。改定に伴い、24年度末の定員を基準とし、この定員から年1%ずつ削減する計画だ。行政の業務は、安保やデジタル化、脱炭素関連などで今後も拡大が見込まれる。削減幅の縮小はこうした実態を反映した措置だ。
ただ、削減率を達成した上で、新規事業対応などでの増員は認めているため、国家公務員の定員は18年度から毎年増え、24年度は30万7379人となっている。改定後も実際の定員は増加する可能性がある・・・

これだけ削減を続けてきて、まだ削減を続けるのですかね。このホームページや連載「公共を創る」でも主張していますが、役所の仕事は減っていません。機械化によって効率化するとの主張がありますが、どこのどの業務が人員削減につながるか具体的に示してほしいです。
現場経験がある人なら、毎年1%の職員削減がいかにきついものか、わかるでしょう。
根拠のない、そして目標のない「行政改革」というスローガンは、戦前の日本、特に軍隊にあったという「精神主義」を彷彿とさせます。

官民ファンドの失敗

6月26日の朝日新聞1面が「官民ファンド、955億円損失 海外インフラ支援 投資失敗続く 民間出資は2%のみ」を伝えていました。
・・・企業の海外インフラへの投資を支援する官民ファンド「海外交通・都市開発事業支援機構」(JOIN)が、巨額の累積赤字を抱えていることがわかった。ミャンマーやブラジルなどの事業が失敗し、2024年3月期決算で799億円の損失を計上。従来分を含めると955億円にのぼる。採算性が疑問視されてきた官民ファンドの是非が問われる。
JOINは14年10月に設立。民間の出資はわずか2%で、実態は国の丸抱えに近い。途上国の街づくりや港湾整備などに投資し、今年3月末までの投融資額は2561億円にのぼる。この4割で回収のめどが立たない異例の事態となっている・・・
・・・JOINの経営計画では、24年3月末の累積赤字は166億円の見通しだった。31年度に累積赤字を解消するもくろみだが、絶望的だ。本来なら国庫に納められる資金が失われ、実質的に国民が負担する恐れがある。
政府は、収益計画と実績が著しく乖離(かいり)した場合、抜本的な見直しを行うとしている。国土交通省は、見直しを検討する有識者会合を設置。年内に結論が出るまで、新規事業を停止する。
官民ファンドは、安倍政権が成長戦略の柱の一つとして新設。だが主要15ファンドのうち九つが昨年3月末時点で累積赤字を抱えていた。JOINの955億円はクールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)の398億円を上回り、主要ファンドで最大とみられる。
JOINが損失を計上した事業の多くは、共同出資の企業が1年以上も前に損失を明らかにしていた。事業の失敗を国民に知らせぬまま公表を先送りしていたことになる・・・

2面の「安倍氏の「肝いり」、巨額損失 官民ファンドの海外投資 都市開発や鉄道、次々頓挫」から。
・・・採算性が疑問視されてきた官民ファンドで、新たに「海外交通・都市開発事業支援機構」(JOIN)の巨額損失が判明した。安倍晋三元首相がトップセールスした米国の新幹線事業などで次々に損失を被った。失敗を隠すかのように、損失の公表を先送りしてきた国土交通省の責任は重い・・・
・・・官民ファンドの設立を強力に推し進めたのは第2次安倍政権だ。13年にまとめた「日本再興戦略」で、インフラ輸出を成長戦略の柱の一つに据え、JOINにも役目を担わせた。新興国の台頭や円高で日本のものづくりが急速に競争力を失うなか、製品単体でなく、運用やメンテナンスを含んだシステムで勝負することで、活路を見いだす算段だった。
ところが、インフラ輸出の目玉だった原発は、米国やトルコなどの新設計画が次々に頓挫。JOINの実態をみれば、鉄道や都市開発でも難航していることがわかる・・・
・・・JOINは今回、ホームページを更新する形で損失を公表した。それらの事業の多くは、共同出資した企業が早々に「損切り」していた。ブラジルの鉄道事業はJR西日本と三井物産が20、22年度に、ミャンマーの事業も鹿島などが21年度に損失処理した。
関係者によると、損失計上を求める財務省に対し、国交省は拒み続けてきたという。明治大の田中秀明教授(財政学)は、「責任が問われないよう、損失を先送りしてきたのではないかと疑わざるをえない」と話す。
内閣官房の資料によると、昨年3月末時点で、主要15ファンドのうち、クールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)など九つが累積赤字を抱える。田中教授は「赤字ファンドを存続させれば、さらに赤字が膨らむ恐れがある。廃止して人材やノウハウがある政府系金融機関などに集約したうえで、政府の監視体制を強化するべきだ」と話す・・・

首相指示の失敗事例?その3」に続く「首相指示の失敗事例?その4」かもしれません。

事故をきっかけに世界に追いつく

正月に起きた、羽田空港での飛行機衝突炎上事故。国土交通省が、再発防止策を決定しました。それに関する、6月23日の読売新聞「羽田事故 対策5分野 国交省 正式決定へ」から。

・・・ 国交省関係者によると、1月以降、検討委で議論してきた新たな対策案は、〈1〉管制交信でのヒューマンエラー防止〈2〉滑走路誤進入の注意喚起システムの強化〈3〉管制業務の実施体制の強化〈4〉滑走路の安全の推進体制の強化〈5〉技術革新の推進――で構成する。

事故からまもなく半年。国土交通省は再発防止策の取りまとめにあたり、滑走路の安全に関わるハードとソフト、すなわち「人、運用、技術」のバランスを念頭に、一体的なリスク低減を図った。新たな取り組みが、別のリスクを生まないことにも配慮したという。
対策の大半は、欧米やアジアの航空当局や国際機関の状況を丹念に調査し、日本の先を行く取り組みを導入した形だ。ただ、裏を返せば「悲惨な事故を機に、諸外国への遅れをやっと取り戻そうとしている」との厳しい見方と反省の声は、国交省内にもある・・・

いなくなった官庁のエコノミスト

日経新聞夕刊連載「人間発見」、小峰隆夫さん「日本経済と歩む人生」、6月7日の記事から。

「小峰さんの後を継ぐような官庁出身のエコノミストは多くない。」
大きな理由が省庁再編です。経済企画庁は内閣府の一部局になりました。男女共同参画や少子化など幅広い分野を担当する官庁になったため、経済を専門に仕事をしたいと思う人がなかなか来なくなりました。エコノミストとしての専門職採用や、外部人材の登用などを進めてほしいと感じます。

現役の官僚も、自分の考えを役所の外に発信するリスクを幾分、気にしているようです。原稿執筆や外部の講演、場合によっては兼業も自由に認める取り組みは大事です。
日本経済について何を書くべきなのか。次に自分は何を論じるか。役人だったときも民間に転じた後も、何十年にわたって毎日考えています。エコノミストは発信することで磨かれます。私は企画庁にいたときから、2年に1冊は本を出し、連載も続けてきました。

エコノミストは本を書くことで成長します。本を書くと必ず行き詰まる。これは苦しい。しかし、抜けると新しい世界が開ける。
当面は、私の代表作である「平成の経済」と「人口負荷社会」の続編を書けないか、構想を練っています。企画庁で働く中で、自分の〝比較優位〟は書くことにあると気付きました。日本経済について、書きたいことはたくさんあります。

高度成長と平成経済

日経新聞夕刊連載「人間発見」、小峰隆夫さん「日本経済と歩む人生」、6月6日の記事から

・・・官庁エコノミストの先輩である香西泰さんは「高度成長の時代」という本を書いています。敗戦から1970年代まで、日本経済がどのように歩んできたかを分析したものです。
香西さんは高度成長について官僚などの一部エリートが主導したわけでないと分析し、市場メカニズムをベースに発展したと説明します。世界平和や自由貿易、海外からの技術移転がその支えになったとも強調しました。

香西さんのエコノミストとしての歩みは高度成長と共にありました。私もそのような本を記したいと思い「平成の経済」をまとめました。
昭和の経済は驚くほどうまく諸問題を切り抜けました。他方、平成の経済は「予想外に厳しかった時代」と言えます。バブル崩壊と不良債権、アジア通貨危機と金融危機、デフレ、人口減少など、経験したことのない課題が次々現れた。その対応も決して満足すべきものでは無かった。
私は悲観派のエコノミストではないですが、高度成長を終えた後の日本経済は、これでもかというほどに解決困難な問題が次々と出てくる。それも、誰かの責任ではなく国全体の課題として生じてくる。先進国に追いつく過程であるキャッチアップを達成した後の経済における宿命なのかもしれません。

急成長を遂げた後の現在の中国経済をみても、日本に似た問題が今起きているように見えます。不動産部門は過剰債務を抱えて苦しんでいます。高齢化や少子化も中国社会に影を落としています・・・